会計検査院に検査を求める決議

 私たちは、これまで住民訴訟制度を活用して、自治体が発注する公共事業契約における入札談合問題を追及し、談合によって自治体が受けた多額の損害を回復してきた。
 そして、今回の大会でも明らかにされたように、一部の自治体であるが、入札制度改革に取り組み、その成果をあげつつあり、自治体による談合業者に対する損害賠償請求の向けた取り組みが始められている。
 国においても、談合問題、そして、裏金、補助金などあらゆる公費支出をめぐって様々な不正が明らかにされている。ところが、国における、国すなわち国民の損害を回復し、防止するための取り組みはまったくなされていないか、あるいは著しく不十分である。
 たとえば、昨年11月に行われた情報公開法による調査によっても、国、特殊法人を発注機関とする公共事業入札について、公正取引委員会が談合と認定した事案についても、国、特殊法人はまったく損害賠償請求を行っていない事実が確認されている。
 平成13年、公正取引委員会は、東京、神奈川、千葉、埼玉、石川、富山、大阪、兵庫における公立病院(国及び自治体が設置する病院)における寝具等の契約について、違法に談合行為が行われていた事実を調査、認定して摘発を行った。
 各地の市民オンブズマンは、関係する自治体に対して、談合による自治体の損害を賠償するよう監査請求を行った。そして、監査委員は、相次いで、監査請求を認め、遅まきながらも、ようやく自治体は賠償請求に向けた準備を行っている。
 これまで、自治体の公金支出などをチェックすべき監査委員はその責任を果たしてこなかったが、その監査委員ですら、自治体の損害を認め、自治体による対応を求めているのである。
 しかし、国は、この病院契約談合によって国が受けた損害についても、国民の損害を回復するための措置を取っていない。
 国の収入支出すべてを検査すべき憲法上の機関である会計検査院は、国民に対して、その責任を果たしてきたのであろうか。談合問題などに対して、国の無作為を放置してきた会計検査院がその役割を果たしていないことは明らかである。
 我々は、主権者である国民の利益を守るため、国レベルでの住民訴訟制度の創設を求めているが、国レベルでの住民訴訟制度においても、会計検査院がまず、国の損害を回復し、防止するための権限を果たすことが必要である。
 本件の公立病院談合は、国立病院においても、自治体が設置した病院においても、違法行為である談合、そして契約はまったく同じ業者、時期、方法によって行われているのであり、自治体が受けた被害とまったく同じ被害を国が受けていることは明らかである。
 にもかかわらず、その損害を意図的に放置することは、違法行為にとどまらず、国民に対する背任行為と言わねばならない。
 そこで、我々は、公立病院談合によって国が受けた損害を回復するため、会計検査院に対し、事実関係を確認したうえで、各行政機関がただちに損害を回復するために必要な措置を取ることを求めるよう、公金検査請求を行う。
 会計検査院が国民に対し、その役割を果たすことを強く求めるものである。
2003年8月31日
第10回全国市民オンブズマン大会in仙台
     参加者一同