訴  状
平成15年10月17日
仙台地方裁判所民事部  御中
原告代理人 弁護士 佐川 房子
弁護士 山田 忠行
弁護士 小野寺 信一
弁護士 松下 明夫
弁護士 十河 弘
当事者の表示  別紙目録記載のとおり
政務調査費返還代位請求事件(住民訴訟)
訴訟物の価格 950,000円
貼用印紙額 8,200円
予納郵券 7,000円
請 求 の 趣 旨
1. 被告は訴外みらい仙台(代表者・柳橋邦彦)に対し、金3,813,363円を請求せよ。
2. 被告は訴外民主フォーラム(代表者・斎藤建雄)に対し、金3,029,376円を請求せよ。
3. 被告は訴外自由民主党(代表者・田村稔)に対し、金1,966,783円を請求せよ。
4. 被告は訴外公明党(代表者・植田耕資)に対し、金1,729,871円を請求せよ。
5. 被告は訴外社会民主党仙台市議団(代表者・小山勇朗)に対し、金935,164円を請求せよ。
6. 被告は訴外グローバルネット仙台(代表者・柿沼敏万)に対し、金2,069,700円を請求せよ。
7. 被告は訴外無所属屋代光一に対し、金183,323円を請求せよ。
8. 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
請求の原因
第1.当事者
1. 原告は、平成5年6月24日、地方行財政の不正を監視・是正すること等を目的として結成された権利能力なき社団である。
2. 被告は仙台市長であり、地方自治法242条の2第1項4号の執行機関として、仙台市が受けた損害について、賠償請求するべき義務を有する者である。
3. 訴外各会派は、仙台市議会内で同一の行動をとるために仙台市議会議員によって構成された権利能力なき社団である。
第2.政務調査費の性格と目的
 地方自治法第100条13項及び14項、及び仙台市政務調査費の交付に関する条例(甲3)に基づき、訴外各会派に対し交付される政務調査費(議員1人あたり月額38万円)は、同法232条の2に定める補助金であり、公益上必要がある場合のみ支出がなされるべきものである。
 政務調査費は、「市議会議員の市政に関する調査研究に資するため」交付されるものである。したがって、調査にあたっては、調査研究項目と仙台市政との関連性が明確にされる必要がある。
 このことについて、条例第5条は「会派は、規則で定める使途基準に従って政務調査費を支出するものとし、必要経費以外に充ててはならない」としており、同条例施行規則(甲4)第2条は政務調査費の使途基準を定めている。さらに仙台市政務調査費の交付に関する要綱(甲5)第2条は、交際費的な経費など市政に関する調査研究の目的に合致しないものに充ててはならないとしている。
 そして要綱は、「会派の代表は、当該会派の所属議員が調査研究等のため出張する場合は、調査出張届出書を議長に提出しなければならない」(第6条4号)等、支出にあたっての手続を定めている。
第3.平成15年4月の政務調査費の交付状況
 平成15年4月は、統一地方選挙が実施された月であり、議員の任期満了日は4月29日であった。
 政務調査費は4月、1ケ月分が改選前議員の属する訴外各会派に交付された。
 仙台市議会議員の場合、選挙投票日は4月13日であったから、現職で立候補した議員は、少なくとも月の半分は、政務調査費の支出が禁止されている選挙活動に専念したはずである。したがって、平成15年4月の政務調査費を使っての市政に関する調査・研究は、各費目とも、原則的には選挙のなかった年の12分の1(8.3%)を大きく下まわって、24分の1(4.2%)程度であってしかるべきである。ところが、平成15年4月の各会派の支出は、以下のように違法・不当な支出が含まれていると考えられる。
第4.訴外各会派の政務調査費の違法支出
1. 訴外各会派の平成15年4月の政務調査費収支状況報告書(甲1の1〜7)、各会派の市議会議長あての出張届を検討したところ、上記の条例等に反する違法な支出があることが判明した。その内容と内訳は以下のとおりである。
2. みらい仙台 金3,813,363円
(1) 調査研究費 金1,728,751円
 この科目の使途基準(規則第2条1号)は、「市の事務事業及び地方行政に関する調査研究及び調査委託に要する経費」とされ、支出は調査研究に要する旅費及び委託に要した経費である。みらい仙台は、調査研究に要した経費として、1ケ月で金1,843,751円を支出したとしているが、この月出張届(甲6)がなされたのは佐藤正昭議員の釧路市出張(4月23日、24日)のみであり、その旅費及び経費(旅費の1割)は多くみても金115,000円である。したがって、金1,728,751円が目的外支出であると考えられる。
(2) 会議費 金672,282円
 平成14年度支出額(6,404,452円)の14.7%にあたる金941,269円が支出されている。半月間の支出としては異常に高額であり、平成14年度会議費の42%(金268,987円)を超える672,282円が目的外支出である。
(3) 人件費 金405,650円
 平成14年度の平均月額の倍近くを占めている。所属議員5人以上の会派には、政務調査費とは別に、議員控室業務のため会派職員雇用費が支給されており、それからしても高額にすぎる。少なくとも、臨時調査研究補助者分金405,650円(平成14年平均月額の3.58倍)は目的外支出である。
(4) 事務所費 金286,783円
 金590,000円が支出され、平成14年の支出額の8.2%でほぼ12分の1を占めている。
 しかし、月の半分は選挙活動のために利用された可能性が高く、平成14年支出額(7,219,446円)の4.2%(金303,217円)を上まわる分(286,783円)は目的外支出である。
(5) その他の経費 金719,897円
 平成14年度支出額の24.1%を占め、異常に高額である。特に通信費(512,163円、平成14年度の31.6%)、雑費(207,734円、平成14年度の19.0%)は際立っており、いずれも選挙活動など目的外の経費に充てられたと考えられる。
3. 民主フォーラム 金3,029,376円
 4月分の総出額の74.3%にあたる金3,029,376円が広報公聴費に充てられており、平成14年度のそれの47.6%を占める。
 候補者又はその所属政党等が負担すべき選挙活動用の広報費等に政務調査費を流用したとしか考えられず、その全額が目的外支出である。
4. 自由民主党・市民会議 金1,966,783円
(1) 会議費 金170,360円
 平成14年度支出額の11.3%を占める金270,750円が支出されている。
 半月分の支出額としては高額にすぎ、平成14年度の4.2%(金100,390円)を超える金170,360円が目的外支出である。
(2) 事務所費 金133,600円
 金310,000円が支出され、平成14年度の7.4%を占める。
 月の半分は選挙活動のために利用された可能性が高く、平成14年度支出額(金4,200,000円)の4.2%(金176,400円)を上まわる分(金133,600円)は目的外支出である。
(3) その他の経費 金1,662,823円
 平成14年度支出額の25.2%を占め、異常に高額である。選挙活動等目的外の支出に充てられた可能性が強く、全額(金1,662,823円)が目的外支出である。
5. 公明党 金1,729,871円
(1) 調査研究費 金769,841円
 調査研究に要した経費として金797,941円を支出したとしているが、この月、出張届(甲7)が出されたのは植田耕資議員の遠野出張(4月22日、23日)のみであり、その旅費及び経費(旅費の1割)は多くみても金28,100円である。
 したがって、金769,941円が目的外支出と考えられる。
(2) 会議費 金99,873円
 平成14年度支出額(金1,344,038円)の11.6%にあたる金156,323円が支出されている。
 半月分の支出額としては高額にすぎ、平成14年度会議費の4.2%(金56,450円)を超える金99,873円が目的外支出である。
(3) 人件費 金110,000円
 平成14年度支出額(金2,638,200円)の10.8%を占めており高額にすぎる。
 少なくとも、臨時調査研究補助者分金110,000円は目的外支出と考えられる。
(4) その他の経費 金750,157円
 平成14年度支出額(金7,656,773円)の11.5%を占め、選挙のあった月の支出としては高額にすぎる。
 特に、備品購入費等(金432,020円、平成14年度の16.2%)、雑費等(金318,137円、平成14年度の10.0%)は際立っており、いずれも選挙活動等目的外の経費に充てられたと考えられる。
6. 社会民主党仙台市議団 金935,164円
(1) 人件費 金316,320円
 平成14年度支出額(金4,356,738円)の8.4%を占めており、高額にすぎる。  少なくとも、臨時調査研究補助者分金316,320円は目的外支出と考えられる。
(2) 事務所費 金109,935円
 金220,000円が支出され、平成14年度支出額の8.4%で、ほぼ12分の1を占める。
 しかし、月の半分は選挙活動のために利用された可能性が高く、平成14年度支出額(金2,620,586円)の4.2%(金110,065円)を上回る分(金109,935円)は目的外支出である。
(3) その他の経費 金508,909円
 平成14年度支出額(金3,373,852円)の15.1%と異常に高額となっている。
 いずれも選挙活動等目的外の経費に充てられたと考えられる。
7. グローバルネット仙台 金2,069,700円
(1) 調査研究費 金1,555,000円
 平成14年度支出額(金17,075,000円)の9.1%を占め、高額にすぎるし、出張届は1件も出されていない。
 したがって、その全額(金1,555,000円)が目的外支出である。
(2) 事務所費 金105,069円
 金220,000円が支出され、平成14年度の支出額の8.0%を占める。
 しかし、月の半分は選挙活動のために利用された可能性が高く、平成14年度支出額(金2,736,459円)の4.2%(金114,931円)を上まわる分(金105,069円)は目的外支出である。
(3) その他の経費 金409,631円
 金409,631円が支出されているが、平成14年度支出額(金4,894,390円)の8.4%を占め、高額にすぎる。
 いずれも選挙活動等目的外の経費に充てられたと考えられる。
8. 無所属(屋代光一) 金183,323円
(1) 人件費 金75,000円
 常勤調査研究補助者の人件費(金150,000円)は、平成14年度支出額(金1,800,000円)の8.3%を占め、丁度1ケ月分に相当する。支給対象者は、半月は選挙活動に従事した可能性が高く、平成14年度支出額の4.2%を上まわる分(金75,000円)は、違法・不当な支出というべきである。
(2) その他の経費 金108,323円
 備品購入・リース経費(金108,323円)は、平成14年度支出総額(金387,577円)の27.9%を占め、異常な高額である。選挙活動用の経費等目的外経費に充てられたと考えられる。
第5.監査請求
 原告は、平成15年8月25日、仙台市監査委員に対し、平成15年4月分について、地方自治法242条第1項に基づき監査請求したところ(甲8)、監査委員は、同年9月19日をもって上記監査請求を却下した(甲9)。
第6.結論
 よって、原告らは被告に対し、地方自治法242条の2、4項に基づき、請求の趣旨記載の判決を求め提訴した。
証 拠 方 法
1. 甲第1号証の1ないし7 平成15年4月政務調査費収支状況報告書(市議会各会派)
2. 甲第2号証の1ないし7 平成14年度政務調査費収支状況報告書(市議会各会派)
3. 甲第3号証 仙台市政務調査費の交付に関する条例
4. 甲第4号証 仙台市政務調査費の交付に関する条例施行規則
5. 甲第5号証 仙台市政務調査費の交付に関する要綱
6. 甲第6号証 調査研究のための出張届(みらい仙台)
7. 甲第7号証 同上(公明党)
8. 甲第8号証 仙台市長措置請求書(原告)
9. 甲第9号証 住民監査請求について(通知)(仙台市監査委員)
添 付 書 類
1. 甲第1号証ないし同第9号証(写) 各1通
2. 資格証明書 1通
3. 訴訟委任状 1通
当 事 者 目 録
〒980-0021 仙台市青葉区中央4丁目3−28 朝市ビル3階
原 告  仙台市民オンブズマン
代表者 小 野 寺 信 一
(代理人弁護士略)
〒980-8671 仙台市青葉区国分町3丁目7番1号 仙台市役所
被  告     仙 台 市 長
藤    井     黎