外務省報償費の審査会答申は会計検査院レベルのみ
議員への「便宜供与」などにメスを入れず
 2月10日に外務省報償費不開示の異議申立に対する情報公開審査会の答申が出された。これは2001年の情報公開法施行の直後の時期に、各方面から出された報償費の情報公開請求に外務省が不開示の決定をしたことに対して、当センターを含めて63件の異議申立が出され、外務省が約2年経過した昨年の7月に大幅遅れで審査会に諮問をし、審査会が約半年にわたって審議をした上、25件(異議申立人は3人)について答申を出したものである。
1.審査会のインカメラ見分
 審査会は、インカメラ見分をした結果を次のように述べている。
対象文書は案件ごとに個々具体的に作成されるものと、それに基づき個別具体的な件名を列記して取りまとめられるものから成ると認められる。使途に関し個別具体的かつ詳細な記載がなされており、これらが容易に区分しがたい状態で随所に記載されていることが認められる。
これらの記載は秘密を保持して行われる情報収集活動等の情報である。公にすることにより国の安全が損なわれ・他国等との信頼関係が損なわれるおそれ、他国等との交渉上不利益をこうむるおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると認められる。(情報公開法5条3号および6号該当)
しかし対象文書には、公にしても報償費の秘密を保持した機動的な運用を損なうおそれがあるとは考えがたい部分も存在する。
2.開示を求めた支出証拠書類の種類
 審査会が開示(部分開示)を求めたのは、会計検査院が平成12年度決算検査報告で指摘をした次の5類型である。
@  大規模レセプション経費
A  酒類購入経費
B  在外公館長赴任の際などの贈呈品購入経費
C  文化啓発用の日本画等購入経費
D  本邦関係者が外国訪問した際の車両の借り上げ等の事務経費
3.外務省の全面不開示理論は崩壊
 審査会の答申は、これまで外務省が建前論を押し通して、報償費を一切不開示としてきた理論構成を打ち崩し、報償費の中に本来の使途に反した支出があることを認めさせ、それを開示せざるを得なくさせた。当センターの開示請求に対しても外務省は「5類型に該当する文書については答申の趣旨に沿った対応を行う所存」との書面を提出した。この点で答申は大きな意義のあるものである。
4.便宜供与への言及なし
 審査会は前記の5つの類型以外については、個別具体的かつ詳細な記載が随所に認められ、不開示に該当するとしている。
 しかし、5つの類型以外にも、公開して国の安全などを損なう情報収集・外交工作活動ではない支出があるはずで、一番はっきりしている例が、国会議員などが外国訪問した際にへの在外公館が行う「便宜供与」であり、「便宜供与」が報償費を用いて行われていることは周知であって外務省も認めている。
 審査会が開示を求めた第5の類型は、報償費を用いた便宜供与の一部分である。しかし便宜供与の本体は、飲食饗応のもてなしである。
 審査会が「5つの類型の支出を記載した文書以外の文書は、不開示情報を容易に区分することができない」とするのには納得がいかない。5つの類型の文書が区分でき、特に第5類型も区分できるのであれば、飲食饗応をした便宜供与の文書も同じように区分ができ、開示ができるはずである。政治家の金に絡む闇部に踏み込むのは避けたのであろうか。
 審査会が開示を求めた範囲が、会計検査院がすでに指摘した先例の踏襲に過ぎなかったのは適切といえない。当センターはこの判断が今後の基準にならないようにするため、努力していきたい。