5大使館の飲食供応・便宜供与の開示に異議申立
遊興施設での接待は? 議員への便宜供与は?
 情報公開市民センターは2月10日に外務省に対して、次の2件の異議申立をした。
報償費支出の不開示に対する異議申立
交際費支出の一部開示もれに対する異議申立
1、これまでの経緯
 これは当センターが2001年10月に情報公開請求をした「アメリカ・イギリス・フランス・中国・フィリピン5カ国の日本国大使館が平成10年度第4四半期および平成11年度に支出した、飲食その他の供応および便宜供与に関する支出証拠(公邸での宴会を除く)」についてのものである。
(1) 請求から2年経ってやっと開示決定
 外務省は決定を2年間延長し、昨年11月に最終の開示決定等を行い、12月に開示の実施をした。文書は交際費、交流諸費、報償費などに分かれ、報償費については不開示、その他の支払証拠書類(4千4百枚)については部分開示であった。交際費と交流諸費で開示されたのは、会食日時・場所・飲食の内容と金額明細・大使館側の出席者・起案者・本省等からの出張者(一等書記官以上)が全面開示で、相手側の機関名・目的も一部墨塗りであるがかなり開示されている。
(2) 交際費は仲間内の飲み食いが多い
 交際費支出の相手は、他の在外公館からの出張者・日本の官公庁からの出張者が多く、任地または日本から出張の日本企業関係者もあるが、仲間内での飲み食いの色彩が強い。
(3) 交流諸費も報償費も相手・目的は同じ
 交流諸費支出の相手は任地国の政府機関・研究機関等の職員が多く、目的は任地国事情・日本と任地国間関係の種々の課題についての情報収集・意見交換・懇談・打合せであることが記載されている。これは報償費不開示訴訟での外務省が不開示の理由「情報収集・外交工作の活動」と同様のものだが、部分的に墨塗りながらかなり詳細に開示されている。当センターは訴訟での外務省主張の不当さを、この交流諸費の開示状況と対比させて、1月に提出した第7準備書面で詳しく論じた。(別ページ「外務省報償費訴訟は今、全記録」を参照)
2、報償費支出の不開示に対する異議申立
(1) 報償費の支出文書のすべてが法第5条第3号および第6号の「おそれ」のあるものではないはずである。報償費の中に「定型化・定例化」した支出など、「おそれ」に該当しないものが相当な額あることは、会計検査院によって指摘され、また外務省自身が「外務省改革要領」で認めたところであり、この点からだけでも、本件の報償費決裁書を全面不開示としたことは違法である。個別の支出ごとに「おそれ」の該当性を評価認定のうえ最大限の開示をすべきである。
(2) 報償費支出のうち飲食その他の供応に関するものについては、他の報償費支出に比べて次の理由で「おそれ」のある文書は少ないはずである。
1) 飲食等の設宴場所は、それが行われていることが一般利用客や従業員に知れるレストラン等が大半であり、秘密度は低い。
2) 外務省作成の「便宜供与件数統計表」には、便宜供与取扱の総件数・総人数および国会議員の件数・人数、および食事回数が、在外公館別に明細に記載されている。これによれば便宜供与として食事の提供が数多く行われている。便宜供与の定義からすると、供与の相手は本邦からの渡航者である。したがって機密情報の提供者や外交工作の相手方であることは稀のはずである。
3) 本件請求によって部分開示された会食支払証拠書類(平成10年度第4四半期分)には「交流諸費」分にも「交際費」分にも便宜供与にかかわる会食事例は見当たらない。特に、国会議員との会食の事例は存在しない。これは便宜供与の会食が報償費決裁書で支出されていることを意味する。
(3) 「交流諸費」(平成10年度第4四半期分)を詳細に点検したところ、その使用目的は外務省が報償費の使用目的であるとする「情報収集」や「外交工作」と同様であるものが多数存在していた。「交流諸費」の支払証拠書類は、相手先および目的の部分に一部墨塗りがあるものの、設宴の日時、金額、場所、大使館側の出席者・起案者(一等書記官以上)はすべて開示された。これとの対比においても、本件の報償費決裁書は同程度には開示をすべきであった。
3、交際費支出の一部開示もれに対する異議申立
 アメリカ・フランス両大使館の会食支払証拠書類として開示された支出は、出納簿に記載された支出の一部分に過ぎないので、すべての飲食供応の支出の開示を求めて異議申し立てをした。
(1) 2001年に開示された交際費出納簿に記載された飲食供応の支出と、今回開示された交際費による会食支出との照合を、期間が重複する3ヵ月分について行った。
(2) 今回開示された会食支払証拠書類には、目的欄に「‥‥との懇談」「‥‥についての打合せ」「‥‥につき意見交換」「‥‥の情報収集」などと記載されている。2001年に開示された出納簿の摘要欄に同様の記載がなされている支出は、アメリカ大使館分で13件あり、そのうち3件が開示されなかった。フランス大使館分は15件のうちの3件が開示されなかった。
(3) 交際費による支出の平成11年度第4四半期分について秘匿が明らかになった以上、交際費のそれ以外の期間でも、また交流諸費による支出の全期間でも、同じように秘匿が行われていることに疑いはない。交際費出納簿および交流諸費の出納簿に記載された飲食供応の全件の開示を求める。
(4) 全件の開示に当たっては、次の方法によることを求める。
1) 交際費出納簿および交流諸費の出納簿を提示すること。
2) これらの出納簿に記載された支出のうち、本件処分の対象にされなかったすべての支出について、飲食供応の支出であるか否かを支払証拠書類を示して証すること。