秘密保護法運用基準案、施行令案に対するパブリックコメントを提出

秘密保護法運用基準案、施行令案に対するパブリックコメントを提出 

NPO法人 情報公開市民センター(理事長 新海聡弁護士)は、14/8/19づけで秘密保護法運用基準案、施行令案に対するパブリックコメントを提出しました。
締め切りは14/8/24(日)です。ぜひ参考にしてください。
・運用基準案 PDF http://www.jkcc.gr.jp/data/140819-1.pdf
 word版 http://www.jkcc.gr.jp/data/140819-1.doc
・施行令案 PDF http://www.jkcc.gr.jp/data/140819-2.pdf
word版 http://www.jkcc.gr.jp/data/140819-2.doc

参考:内閣官房 秘密保護法パブコメ募集ページ
http://www.cas.go.jp/jp/tokuteihimitsu/ikenboshu.html



「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」に対する意見

平成26年8月19日

内閣官房特定秘密保護法施行準備室「意見募集」係 御中
(FAX03−3592−2307)

 氏名    特定非営利活動法人 情報公開市民センター
代表者理事長    新海 聡
住所 〒460-0002 名古屋市中区丸の内三丁目7番9号 
チサンマンション丸の内第2 303号
連絡先(電話番号,メールアドレス等) 052-253-7860
info@jkcc.gr.jp

運用基準に対する意見は以下の通りである。

1 「I基本的な考え方」について
【意見】
(1)各規定の拡張解釈の禁止等が掲げられているが、対象とする秘密の性質についての論及がない。しかし、そもそも、特定秘密保護法は安全保障に関する法として立法されたはずである。そうである以上、特定秘密の対象も、単に秘匿する必要のある情報というだけでなく、特定秘密として指定されるべき情報は我が国安全保障に直接関係する情報に限定されるべきであり、これは基本的な考え方の箇所に明示されるべきである。
(2)同様の観点から、「策定の趣旨」に特定秘密の指定は安全保障に直接関係する情報を対象として、極力限定されるべきこと、指定の恣意性を廃除すること、適性評価制度においてプライバシーを保護することを盛り込むべきである。
(3)公文書管理法と情報公開法の適正な運用について
 公文書の破棄を広範に認めている公文書管理法を改正すべきこと、特定秘密と指定された文書については、もれなく国立公文書館に移管されることとを述べるべきである。
 また、情報公開法の運用に当たっても、情報公開法上の不開示情報に該当するか否かについて厳格に判断する必要がある、というだけでなく、行政機関において秘匿したいと考える情報が、実際に防衛、外交、治安に関連しない場合であっても、安易に法5条3号、4号に該当する、として不開示とする濫用的運用がなされていることを直視し、特定秘密以外の情報を不開示にする場合であっても、実際に防衛、外交、治安に関する情報か否かを厳格に判断すべきことまで指摘すべきである。
 なお、かかる濫用的運用を根本的に防ぐためには、3号、4号について現行の「・・のおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある」場合に不開示処分を許容している条文を、将来的には「おそれ」を要件とするものとするなどの法改正が必要であるが、運用基準のなかでも、将来的に情報がより開示されるようになるよう、法改正も予定することまで言及すべきである。
 これとは別に、情報公開請求に対する不開決定の場合に、実際に行政文書が存在するにもかかわらず、文書不存在を理由とする不開示処分がなされる例が多々存在する。行政文書が存在するにも関わらず、5条該当性を理由とすることなく、文書不存在を理由とする不開示処分がなされないよう、安易な文書不存在を理由とする不開示処分をしてはならないこと、不存在を理由とする不開示の場合には、公文書管理法が存在する以上、行政機関が不存在の証明責任を置くべきことも明示すべきである。 

2 「II特定秘密の指定 1」について
【意見】
(1)別表該当性について
 別表の文言が曖昧であって、安全保障に関係しない情報も広く特定秘密の指定がなされるおそれがある。特に別表3号、別表4号については、運用基準をもってしても、情報を限定することは不可能と言わざるを得ない。これはそもそも、特定秘密該当性の要件の一つであるところの別表の内容が抽象的かつ曖昧である点に起因する。加えて、運用基準である程度具体化したとしても、基準自体、閣議決定でいかようにでも変更できるのであるから、法の別表の記載を限定する法改正なくして、特定秘密の指定の不当な拡大に対する解決にはならない。
 したがって、運用基準のこの部分については法の根本的な欠陥の解消にはなるものではないと言わざるを得ない。そこで、ここでは運用基準の見直しだけでなく、法改正の資料となることを期待し、我々の活動に関連するものに限定して意見を述べることとしたい。
「【別表第1号(防衛に関する事項)】」について
i) 情報入手活動が市民生活の監視にならないよう、また、一般市民の情報を入手した場合には、これを告発することを容易にするため、イa(b)の「自衛隊の情報収集・警戒監視活動」に含まれる自衛隊情報保全隊による国民監視活動やロaの「電波情報,画像情報その他情報収集手段を用いて収集した情報」は情報収集手段について、除外規定を設けるべきである。現に、情報保全隊による一般国民の情報収集については、仙台地裁平成24年3月26日判決(判時2149号99頁)が国民の「人格権を侵害」し違法であると判断している。そもそも自衛隊が市民の政治活動や労働組合活動、宗教活動、表現行動などの情報を入手することは違法なのである。そして、自衛隊の情報収集の事実やその手段が市民に秘匿されている現状においては、自衛隊の情報収集活動の結果、取得された個人の情報が取得することあるいは情報取得の手段が違法であるか否かについて市民が検証することは不可能である。
 したがって、これら情報入手活動に関する事項については「違法な情報収集活動によって取得された情報または一般市民の政治活動や労働組合活動、思想、信条、信教に関する情報、表現行動などの市民の内面の自由に関する情報ならびに情報入手の課程に関する情報は特定秘密に指定しない旨、明示すべきである。
ii) ホ、に「武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物」「の種類又は数量」との記載があるが、こう規定してしまった場合には自衛官の糧食や制服までも含むことになり、広範に過ぎる。これまで防衛の用に供する物の納入について談合事が過去に発生しているが、この規定によって、糧食や制服の納品についての談合などが発生した場合でも、その端緒を知ることができない点は問題だ。
 本定めは武器弾薬についての情報の秘匿を目的としたものと考えられるが、そうであるなら、「その他防衛の用に供する物」という表現を「その他防衛の用に供する武器」と改めるべきである。
iii) ヌに「防衛の用に供する施設の構造その他の設計上の情報」という定めがあるが、これでは防衛省や防衛施設庁発注の構造物の情報までも広く含む結果となり、広範に過ぎる。建築確認申請などは自治体の事務事業であるが、自治体職員は法10条の特定秘密を提供される相手方に含まれていないから、建築確認の作業に支障が生じるのみならず、自治体職員に特定秘密漏えいの危険を負わせる結果となり、不当である。対象とする施設及び情報を限定すべきである。
「【別表第2号(外交に関する事項)】」について
i) イに「国民の生命及び身体の保護」と、a(a)にも「国民の生命及び身体の保護」を対象とした情報が特定秘密に指定され得る旨の記載がある。しかし、この「国民」を将来の国民とみるか、現に存在する国民と見るかによって,情報を秘匿した場合の結果は全く異なる。将来の国民を保護する、と考えた場合には、現存する国民の生命身体の安全のために公表すべき情報も特定秘密に指定する結果となることは十分に起こり得る。しかし、戦争は皆、将来の国民を保護するために今の国民が犠牲になる、という論理で遂行されるのであるから、「国民の生命及び身体の保護」に関する情報を特定秘密とすることを許すべきではない。
ii) ハaの「電波情報,画像情報その他情報収集手段を用いて収集した情報」は情報収集手段が無限定となっており,違法な情報収集活動によって得られた情報も特定秘密とすることを許容する。したがって,違法な情報収集活動を用いて収集した情報は特定秘密の範囲に含まれない旨を明記すべきである。
「【別表第3号(特定有害活動の防止に関する事項)】」について
i) ロaの「電波情報,画像情報その他情報収集手段を用いて収集した情報」は情報収集手段が無限定となっており,違法な情報収集活動によって得られた情報も特定秘密とすることを許容するものである。したがって,違法な情報収集活動を用いて収集した情報は特定秘密の範囲に含まれない旨を明記すべきである。
「【別表第4号(テロリズムの防止に関する事項)】」について
i) イa(b)の「重要施設,要人等に対する警戒警備」及び同(c)の「サイバー攻撃の防止」は,具体的とは言えず,限定機能を果たしていない。加えて、これが入ることによって市民のパソコン通信やスマートフォンを用いた通信に対する不当なアクセスによる情報入手によって得られた情報を特定秘密と指定することを許容する。
 したがって,限定を図ることとともに、違法な手段によって入手された情報を除く、という限定が必要である。
ii) ロaの「電波情報,画像情報その他情報収集手段を用いて収集した情報」についてもイa(b)に対して述べたところと同様である。違法な情報収集活動を用いて収集した情報は特定秘密の範囲に含まれない旨を明記すべきである。
 
(2)非公知性について
【意見】
 現に不特定多数の人に知られていないか否かにより行うものとする、とあるが、不特定多数の人に知られていないとしても、非公知性がなくなる、と見るべきである。
 これについては、法3章に定める以外の不特定人が当該特定秘密を認識しうる状況にあれば、現に不特定または多数人が認識したという確証がなくても、非公知性を欠くものとして、秘密指定が無効となる、と見るべきである。

(3)特段の秘匿の必要性について
【意見】
i)「外国との信頼関係が失われ協力が滞る」ことを要件とすべきではない
 漏えいにより、「外国の政府その他の者との信頼関係や我が国の秘密保護に関する信用が著しく損なわれ、今後の情報収集活動、当該外国の政府等との安全保障協力等が滞る」とする点は削除すべきである。
 情報公開市民センターが原告となっている秘密保護法の立法過程の文書の開示請求訴訟においては、外国から取得した秘密保護法の運用に関する情報について「国際社会において外国から得た情報は不開示にする、という暗黙の了承があるから、これを公開した場合には外国との信頼関係が失われ、協力が得られなくなる。」ことを不開示の理由とする主張が内閣調査室側からなされている。
 しかし、外国に情報を提供する場合には、原則として当該提供先の国民に不開示とすべし、というルールが国際的に存在するはずはない。因みに米国の政治学者でニクソン政権における国家安全保障会(NSC)のメンバーであったモートン・ハルペリン氏に情報公開市民センターの代表者が2014年5月11日に直接面会し、米、英、独、仏では秘密保護に関する諸外国の制度の調査結果を国民に公開してはならない、ということについて暗黙の了解があるか、質問したところ、大いに驚くと共に「全く無い。ナンセンスだ。」と即座に回答した。
 国際社会に存在もしない『暗黙の了解』の存在を強弁し、外国から得た情報のほとんどすべてを不開示とする我が国政府の運用を前提としたばあい、検証不能の「外国との信頼関係が失われ協力が滞ること」を特定秘密の指定要件としてしまうことにより、ほとんどすべての外国から得られた情報が特定秘密に該当する解釈を許すこととなるのは明らかである。
 よって、この要件は不要であり、削除されるべきである。
ii)「我が国の安全保障に著しい支障を与える事態が生じるおそれ」というだけでは特定秘密の指定を限定することにはならない。単に「おそれ」というだけでなく、「高度の蓋然性」が必要とすべきである。
(3)(4)特に遵守すべき事項について
【意見】
 公益通報の通報対象事実その他の行政機関による法令違反の隠蔽を目的として秘密指定しない、という点(イ)は極めて重要である。これを運用基準に設けることは当然であるが、運用基準は閣議決定でいかようにも変わりうる。
法に定めるべきであって、法改正が行われるまで法の施行は延期されるべきである。
3 「II特定秘密の指定 3 指定手続き」について
【意見】
 (4)で「災害時の住民の避難等国民の生命及び身体を保護する観点からの公表する必要性のある情報」について、指定の理由中で一定の事情のもとで解除することが記されていたとしても、解除の判断や解除の手続きが迅速に行われなければ、住民の避難等には役立たない。しかし、我が国はいつ何時大地震や噴火が発生するかわからない状況にある。にもかかわらず、緊急時の特定秘密の解除についての手続きが定められていないのでは実効性がない。また、秘密の指定権権限者である行政機関の長と住民の避難を担当する行政機関の長が異なる場合に、特定秘密の解除についての見解が相違する場合にはどちらの判断が尊重されるかも不明である。
 そもそも、「災害時の住民の避難等国民の生命及び身体を保護する観点からの公表する必要性のある情報」が特定秘密の指定対象となることを前提として制度設計をすること自体、誤りである。そもそも災害時の住民の避難等に公表する必要が予想されるものについては、特定秘密に指定すべきではない。

 4 「II特定秘密の指定等 4 指定の有効期間の設定」について
【意見】
通信技術の動向について特定秘密の指定期間を3年を前提とすることは、技術の進歩の速度からみて、長すぎる。2年とすべきである。
5「II特定秘密の指定等 6 保護規程 」について
【意見】
 施行令12条1項10号に掲げる緊急の事態に際する特定秘密文書等の破棄については、濫用に至らないよう、破棄した特定秘密およびその漏えいのおそれの具体的内容ならびに破棄の方法を記録した文書を作成すること、さらには、当該文書の保存年限が終了した後は、国立公文書館にて保管することを行政機関の長に義務付ける旨、運用基準に定めるとともに、公文書管理法を改正し、公文書管理法によって義務づけるである。

6 「III 特定秘密の指定の有効期間の満了、延長、解除等」について
(1)「1指定の有効期間の満了および延長(1)について」
【意見】
 有効期間を延長する場合であっても、従前特定秘密に指定されていた全情報について機械的に延長するべきではなく、情報公開法の部分開示の定めのように、延長指定する情報の範囲を絞り、可能な限り限定的に行うことを義務付けるべきである。
(2)「3 指定が解除され、又は有効期間が満了した当該指定にかかる情報を記録する公文書で保存期間が満了したものの扱い」について
【意見】
 秘密の指定期間が30年以下の特定秘密については、公文書管理法によれば、内閣総理大臣の同意を得て廃棄できるが、そもそも秘密の指定期間は30年以下が原則であるから、多くの特定秘密を記した公文書が人知れず廃棄される可能性が残る。
 しかしながら、そもそも特定秘密に指定される情報は我が国の安全保障に重要な影響をもたらす情報であるから、我が国の安全保障政策を後に検証するための資料として必要不可欠の筈である。
 したがって、特定機密の指定をした公文書については、すべて保存期間満了後、公文書館に移管すべきである。

7 「IV適性評価の実施」について
(1)「1 適性評価の実施に当たっての基本的な考え方」について
【意見】
(ア)「(1)プライバシー保護」について
 評価対象者のみならず、評価対象者の家族のプライバシーにも関わる者であるから、評価対象者の家族もプライバシー保護の対象とすべきである。
(イ)「(2)調査事項以外の調査の禁止」について
 被調査者のプライバシーを不当に侵害する以下の点について改訂すべきである。
i)信教の自由の侵害を防止するために評価対象者の信じる宗教の調査を禁止すべきである。
ii)調査者の主観的価値判断によって市民運動をはじめとする様々な市民活動、労働組合活動が監視の対象となることを防ぐため、「適法な」を削除し、政治活動及び労働組合活動について調査すること一般を禁止するべきである。
(2)「4 適性評価の実施についての告知と同意」について
【意見】
(ア)評価対象者に対する告知について
 告知書記載の特定有害活動やテロリズムに関する事項についての(注1)の「不当な手段」の定義が概括的過ぎる。また、(注2)の説明も抽象的であってわかりにくい。具体的に説明すべきである。
(イ)「同意の手続き」について
(a)同意が包括的にすぎる。以下の点について、個別に同意できるようにすべきである。
i)照会をすべき場合については、照会事項毎に、また、公務所又は公私の団体に対する照会毎に同意を設けるべきである。少なくとも医療機関への照会については、改めて同意を求めるべきである。
ii)同意書の2項(1)ないし(3)毎に同意、不同意の意思表明が可能なようにすること。
(b)家族についても同意を必要とすべきである。
(ウ)不同意書面の提出について
 同意書を提出しなければ良いのであって、わざわざ不同意書面を提出させる必要はない。また、仮に提出させる場合であっても、不同意書面2項の記載は削除すべきである。これらの記載があることにより、配置転換をはじめとする不利益処分を予想させることになり、真摯な同意をすることが困難となる。
(3)「5 調査の実施」について
【意見】
(ア)従前自衛隊で行われていた身上明細書とこれに基づく身上調査のような、省庁内で行われていた調査は廃止することを明示すべきである。
(イ)公務所又は公私の団体に対する照会を行う場合については、調査対象者のプライバシーが必要以上に侵害されないよう、以下の事項を徹底すべきである。
i)照会事項以外については回答してはならないこと。
ii)対象者の思想心情や宗教に関する事項を回答してはならないこと
iii)公安警察等が調査者の調査代行を脱法的に行うことを防ぐため、照会先が照会時に保有している情報のみを回答し、照会事項に回答するために新たな調査をしてはならないこと。
iv)これらを周知徹底させる方法を設けること。

(4)「7 結果等への通知」について
【意見】
 特定秘密を漏らすおそれがないと判断された根拠ならびに具体的事情も本人に通知するべきである。

(5)「8 苦情申出とその処理」について
【意見】
(ア)苦情処理の手続きについて
i)苦情申出者に意見陳述、資料提出の機会を保障すべきである。
ii)また、苦情申出者が適確な意見陳述がなしうるよう、適性評価実施者から聴取した判断の根拠等に関する項目を苦情申出者に開示すべきである。
iii)苦情申立に際に同意の撤回も明示すべきである。
(イ)苦情処理結果の通知について
 苦情処理結果の評価の根拠となった苦情申立の主張を裏付ける事実、当該事実についての評価を根拠付ける事実を記載すべきである。
(6)「12 適性評価の実施に関する関係行政機関の協力」について
【意見】
 照会事項を広範にすることによって、事実上調査の代行に当たることを防ぐため、照会しうる事項を具体的に定めること、照会先が現に保有する情報のみを提供し、新たな調査を行わないことなどをここでも明示すること。

8 「V 特定秘密の指定およびその解除ならびに適性評価の実施の適性を確保するための措置等」について
(1)「1 内閣官房及び内閣府の任務ならびにその他の行政機関の協力」について
【意見】
 内閣保全監視委員会はいずれの行政機関にも偏ることなく判断する、とされているが、具体的にどのような形でかかる判断が可能か一切示されていない。少なくとも省庁の出向者による場合には到底公正な判断は期待できない。省庁に戻ることのない制度設計をすべきである。
(2)「3 特定秘密の指定及びその解除ならびに特定行政文書ファイル等の管理の検証・監察・是正」について
【意見】
(ア)内閣府独立公文書管理監について
i)誰が任命されるのか,明白ではない。外部委員によるのでなければ、公正な判断はできない。また、具体的にどのような手続きで外部委員を任命するかについて定めるべきである。
ii)内閣府の訓令で内閣府に情報保全監察室を設置し、これを母体として各省庁の審議官レベルを公文書管理監として選任することが検討されているようである。しかし、これらの職員が各省庁からの出向者からなるとすれば、特定秘密の指定の解除等の職務について中立公正な作業は期待できない。
 また、内部告発の受け手となることが前提となる以上、内部告発者保護のために、元の省庁に戻ることがない制度設計を目的とする立法を行うべきである。
iii)行政機関の長が特定秘密指定管理簿等の写しを提出することとされているが、これに従わなかった場合には直接独立公文書管理監が必要な事項を調査できる権限を持つことが必要である。
(イ)また、市民の申し出を受けて公文書管理監が特定秘密の指定解除を行う手続きを立法すべきである。
(3)「4 特定秘密の指定及びその解除ならびに特定行政文書ファイル等の管理の適正に関する通報」について
【意見】
(ア)行政機関に対する通報
 これを第一次的な窓口とすることは、かえって内部通報を抑止する結果となる。第一次的な窓口として行政機関に対する通報を前提とするべきではない。
(イ)独立公文書管理監に対する通報
i)内部通報は独立公文書管理監に対して行うことを原則とすべきである。
ii)通報の方法として「特定秘密である情報を特定秘密として取り扱うことを要しないよう要約して通報するなどし」と記載がある。しかし、これでは通報に際して特定秘密の漏えいのリスクを常に負うことになる。特定秘密である情報を特定秘密として扱うことができるよう、法を整備すべきである。
(ウ)通報者の保護について
i)匿名の通報も認めるべきである。
ii)独立公文書管理監が第一次的な窓口となるべきである。また、匿名の通報ではない場合には、独立公文書管理監は通報者の氏名を行政機関の長に伝えてはならないことを明示すべきである。
(エ)衆参両議院に設置される情報監視審査会への通報について
 衆参両議院に設置される情報監視審査会への通報も独立公文書管理監に対する通報と同様に認めるとともに、同様に通報者の保護が図られるべきである。
(4)「5 特定秘密保護法18条第2項に規定する者及び国会への報告」について
【意見】
(ア)特定秘密の指定、延長、解除件数について
 件数の数え方について明確な定義を設けるべきである。
(イ)件数だけでなく、どのような情報について特定秘密の指定、延長、解除を行ったのか、概要の説明もすべきである。
以上


「秘密保護法施行令(案)」に対する意見
平成26年8月19日

内閣官房特定秘密保護法施行準備室「意見募集」係 御中
(FAX03−3592−2307)

 氏名    特定非営利活動法人 情報公開市民センター
代表者理事長    新海 聡
住所 〒460-0002 名古屋市中区丸の内三丁目7番9号 
チサンマンション丸の内第2 303号
連絡先(電話番号,メールアドレス等)  052-253-7860
info@jkcc.gr.jp
 秘密保護法施行令に対する意見は次の通りである。

第1 総論
【意見】
 秘密保護法は一旦廃止し、あらためて制定過程も開示しながら、立法化を検討すべきであること。

1 当団体は秘密保護法の立法過程の省庁間の協議文書を対象として、情報公開法にもとづく開示請求を内閣情報官宛に2012年3月に行った。ところがこれに対しては開示によって不当な混乱が生じる、あるいは諸外国から取得した情報については不開示にすべき暗黙の了承があり、不開示によって信頼関係を害する、などの理由で、対象文書の7割にあたる1382枚の文書が不開示となった。
 これに対して当団体は不開示処分取消訴訟を提起したが、その訴訟が地方裁判所に係属中の昨年(2013年)12月、秘密保護法は国会で成立した。成立後、内閣情報官は1313枚の文書について不開示処分を見直す処分を行い、現時点において、「不当な混乱」や「外国との信頼関係を害すること」を理由とする不開示文書数は69枚のみとなった。
 不開示処分の見直しによって開示された1313枚の資料には、罰則規定の有効性に対する疑義や、適性評価に対する憲法上の疑義、あるいは秘密指定についての省庁間の疑義が具体的に指摘されていたことが判明した。そして、これらが開示されたとしても、不当な混乱が生じた筈はなく、むしろ国民の間での議論の過程においても、国会での審理にあたっても、有効かつ適確な議論の材料を提供したであろうことが容易に見て取れた。
2 ところで、政府の説明によれば、秘密保護法は、我が国の安全保障に関わる情報を秘密にすることを目的とした法律である。そして、安全保障に関する情報はその国の未来に大きな影響を及ぼす情報でもある。したがって、安全保障上の情報については、外交上の駆け引きの観点から国民に秘匿したうえで政策決定し,その評価は将来の国民の判断に委ねるものとするか、それとは反対に、できるだけ公開して国の将来に対する判断の一翼を市民に委ねるか、おおよそ民主主義を国の基本に据える国家であれば、いずれをとるかは極めて悩ましい選択と言える。だからこそ、安全保障にかかわる情報の取扱についてどういう姿勢をとるべきか、という政策の決定については、十分に時間をかけて、情報を公開したうえで、市民の声に耳を傾けて行うべきことについては、民主主義国家においては当然に守られるべき手続きといえる。
 ところが秘密保護法はこれと全く正反対のプロセスを経て、時の政権の一方的な思い入れと数にものを言わせた強引な国会運営で成立してしまったのである。しかも、将来の市民が国の政策を評価する手だてともいうべき、将来の情報開示の義務づけ規定をも設けていない。市民の軽視を超えて、市民を敵視した立法と言わざるを得ない。
3 こうしてみると、秘密保護法の存在の可否は、もはや安全保障にかかる情報を秘密指定にすることの是非の問題ではない。私たちは、より根本的な問題、すなわち、市民が意見を述べるための資料すら提供しないまま、拙速な国会での議決で安全保障に関する情報の取扱のルールを決めてしまったという、民主主義国家の立法過程における致命的問題を棚上げにすることはできない。
4 これだけ問題が深刻である以上、私たちは、秘密保護法を民主主義国家の法として存続させるわけにはいかない。秘密保護法をただちに廃止したうえで、民主主義と安全保障の問題について、はじめに必要ありき、ではなく、立法の必要性から市民の間で十分な議論を行うことこそが民主主義国家のとるべき道のはずだ。
 かかる観点から、まず第1に、当会としては秘密保護法の廃止を求めるものである。
第2 施行令に対する意見
1 施行令3条?特定秘密の指定を行わない行政機関の長について
【意見】
(1)本来特定秘密の内容は、安全保障に関する情報に限定されるべきである。仮に行政機関の長によって、秘匿すべきと判断された情報であっても、安全保障と直接関連しない情報が秘密指定されることのないよう、制度設計がなされなければならない。かかる観点からみて、秘密指定をなし得る行政機関の長は多すぎる。
(2)秘密指定をしうる行政機関の長は本案では19行政機関の長になっている。しかし、これだけ多くの行政機関の長に特定秘密の指定権限を与えたとすれば、特定秘密の指定の基準はどうしても緩くなる。つまり、指定基準の運用の適正さよりも、情報秘匿の確実性を各省庁が競うようになり、もっとも緩い運用(もっとも多くの情報を特定秘密として指定することが可能な運用)をしている行政機関にあわせる結果となることが容易に想定される。
(3)したがって、安全保障に直接関連し、かつ、その漏えいに対して刑罰で臨むだけの秘匿性の高いものだけが特定秘密の対象となるためには、安全保障と直接関連しない情報を扱う金融庁、法務省、総務省、消防庁、財務省、厚生労働省、経済産業省、資源エネルギー庁(2号)、原子力規制委員会(2号)は指定から外すべきである。とりわけ、平成24年12月末の段階での特別管理秘密の件数が49の金融庁、0の法務省および、原子力発電所の安全性に関する情報が特定秘密にされることを防ぐ必要性がある原子力規制委員会(3条2号)が含まれていることは問題であって、これらの長が特定秘密の指定権限を持つことに断固反対する。

2 施行令第2章第1節(特定秘密の指定)全般について
【意見】
 秘密の指定や有効期間の設定については運用基準案で定めるだけであって、施行令で定めていない。しかし、本来、これらの事項は市民の知る権利に影響を及ぼすだけでなく、漏えい罪等の構成要件該当性または違法性阻却事由にかかわる重要な事実であり、法律に定めるべきである。指定の要件等について法律で定めるまで、法の施行は延期すべきである。
 また、これを法律ないしは施行令で定める場合には、以下の点を明示すべきである。
(ア)違法秘密や疑似秘密を特定秘密に指定することを禁止すること、公益通報の対象事実を隠蔽することを目的とする指定の禁止を明示すべきである。
(イ)ちなみに、運用基準案は特定秘密の指定要件について「(3)特段の秘匿の必要性」として「漏えいにより、我が国に対する攻撃が容易になったり、外国との信頼関係が失われ協力が滞るなど、我が国の安全保障に著しい支障を与える事態が生じるおそれ」と定めている。しかし、情報公開市民センターが原告となっている上記情報公開訴訟においては、外国から取得した秘密保護法の運用に関する情報について「国際社会において外国から得た情報は不開示にする、という暗黙の了承があるから、これを公開した場合には外国との信頼関係が失われ、協力が得られなくなる。」との理由で不開示が正当化される、との主張が内閣情報調査室側からなされている。
 しかし、外国に情報を提供する場合に、原則として提供先の国民には当該情報を不開示とすべし、というルールが国際的に存在するはずはない。現に、米国の政治学者でニクソン政権における国家安全保障会(NSC)のメンバーであったモートン・ハルペリン氏に情報公開市民センターの代表者が2014年5月11日に直接面会し、米、英、独、仏では秘密保護に関する諸外国の制度の調査結果を国民に公開してはならない、ということについて暗黙の了解があるか、質問したところ、大いに驚くと共に「全く無い。ナンセンスだ。」と即座に回答した。
 国際社会に存在もしない『暗黙の了解』の存在を強弁し、外国から得た情報のほとんどすべてを不開示とする我が国政府の運用を前提としたばあい、「外国との信頼関係が失われ協力が滞ること」を特定秘密の指定要件としてしまうことにより、ほとんどすべての外国から得られた情報が特定秘密に該当する解釈を許すこととなるのは明らかである。この要件は削除するべきである。
3 施行令第2章第2節(特定秘密の有効期間および解除)全般について
【意見】
 特定秘密の指定解除要件を明確に法律で定めるべきである。特に一旦指定した特定秘密が非公知性の要件を欠くに至った場合については、指定が無効となること、および、非公知性の要件に関しては、法三章で本来予定された範囲以外の不特定の者が特定秘密を知ったような場合には非公知性を欠くことを法で明示すべきであり、法でこれが明示されるまで、法執行は延期されるべきである。
 また、仮に法律で解除の要件について具体的に定めない場合であっても、施行令で、法3章で定める者以外の不特定の者が特定秘密について知りうる状態になった場合には、指定が無効になることおよびその場合の指定解除の手続きを明示すべきである。
4 施行令第2章第3節12条10号について
【意見】 特定秘密文書等の奪取その他特定秘密の漏えいのおそれがある緊急の事態における廃棄を定めているが、不当廃棄の口実として用いられるおそれがある。
 不当破棄の口実とならないよう、破棄した場合についての破棄した特定秘密およびその漏えいのおそれの具体的内容ならびに破棄の方法を記録した文書を作成すること、ならびに、当該文書の保存年限が終了した後は、国立公文書館にて保管することを行政機関の長に義務付ける旨、公文書管理法に定めるべきであり、かかる改正がなされるまでは本法の施行は延期されるべきである。
5 運用基準に設けられた適性評価の実施に関する事項について
【意見】
法律で定めるべきである。仮にそうでないとしても、以下の事項を施行令で定めるべきである。
(ア)「7結果等の通知(1)評価対象者への通知」について
 施行令に定めるとともに、漏らすおそれがないと認めた具体的事実を通知すべきことも定めるべき。
(イ)「8苦情の申出とその措置(1)苦情の処理のための体制」について
 施行令で定めるとともに、情報提供をした職員も苦情処理担当者に指定すべきでないことを定めるべき。
(ウ)「8苦情の申出とその措置(3)苦情の処理の手続き」について
i)苦情申出者に意見陳述、資料提出の機会を保障すべきである。
ii)また、苦情申出者が適確な意見陳述がなしうるよう、適性評価実施者から聴取した判断の根拠等に関する項目を苦情申出者に開示すべきである。
(エ)「8苦情の申出とその措置(4)苦情の処理結果の通知」について
 苦情処理結果の評価の根拠となった苦情申立の主張を裏付ける事実、当該事実についての評価を根拠付ける事実を記載すべきである。
(オ)「12 適性評価の実施に関する関係行政機関の協力」について
行政機関の長は、他の行政機関の職員および他の行政機関が契約する適合事業者の従業者について適性評価の調査を代行してはならない」とあるが、評価対象者について広範な照会を行うことにより、調査の代行をすることのないよう、照会すべき事項を明白に定めるべきである。
以上



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