包括外部監査の「通信簿」
全国市民オンブズマン連絡会議代表幹事:大川 隆司

包括外部監査評価班事務局:井上 善雄
大阪中央区北浜1−2−2 北浜プロボノビル
   市民オンブズマン(大阪):06−6202−5051
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第1章 はじめに
 昨年度(11年度)より全国の47都道府県、12政令都市、25中核市において包括外部監査制度による外部監査と報告書の提示がスタートした。全国市民オンブズマン連絡会議では、これらが全国の自治体の財政をはじめとする行政の刷新と改善にどれだけ役立つのかを注目しており、全国各地のオンブズ団体の協力を経てその評価を行なうことにした。外部監査人は市民のための自治体の「お目付役」となれるのか、それとも従前の監査委員の「屋上屋」や「税の無駄使い」になってしまうのか、それは外部監査人の姿勢・努力によることはいうまでもないが、それを視る市民自身の「監視」の力にもよるのである。本書は、いわば包括外部監査の市民オンブズマンによる”通信簿”である。

第2章 制度の概要
1. 外部監査の意義

  • 内部監査は、地方自治体がルールに基づいた運営や事務が行なわれたかどうかを確かめる目的で行なわれる。建前は監査を組織の内部事情に精通した担当者が行なうことで、不正や誤謬の早期かつ容易な発見をするというものである。

     地方公共団体の監査委員監査は、地方公共団体に身分を属する監査委員と、補助として監査作業を行なう監査事務局等の職員によって行なわれ、監査委員には議員や地方公共団体OB、地元有識者(弁護士、会社経営者、公認会計士、税理士)などが就任している。しかしながら、これまでの市民オンブズ活動で私達はこれら監査委員の監査が行政を是正する能力を失い、時には監査委員・事務局が不正をおこなっていることも知った。このため、私達はこれら現行監査制度運用、監査委員の人選等について抜本的な改革を求めてきた。

  • 外部監査(今回の新設制度)は、住民・市民の立場に立って、外部の経済的、精神的に独立した監査人が行なうものである。前記のとおり、官官接待・裏金・カラ出張・第三セクターの破綻など世論の批判と財政状況の厳しくなった今日、内部監査の限界が指摘され、地方自治体の行政により厳正な適法性審査やその効率性、経済性のチェックをすることが求められるようになったため設けられたといえる。

2. 包括外部監査

  • 包括外部監査とは、地方公共団体が、地方自治法第2条14項と15項の趣旨を達成するため、外部監査人の監査を受けるとともに監査の結果に関する報告の提出を受けることを内容とするものである(自治法第252条の27第2項)。今回の「通信簿」はこの包括外部監査について調査したものである。

    第2条14項
    地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。

    第2条15項
    地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。

     この外部監査は合規性監査のみと考える意見もあるが、地方自治法の目的に添い、全法令的見地からの合法性の監査と、英国で採用されるVFM監査(Value For Money)、あるいは米国の3E監査〔有効性(Effectiveness)、効率性(Efficiency)、経済性(Economy)〕を含むものとして位置づけられるべきである。

     監査対象となる事件の選定は監査人が主体的に選定し、監査契約は毎年度更新される。

     これに対し、個別外部監査と呼ばれるものがある。これは長、議会、住民からの請求に基づくものである。
第3章 今回の包括外部監査の
     「契約者」(監査人)「報酬」「監査対象事項」等
 外部監査人としての契約者は、公認会計士が43都道府県、11政令指定都市、21中核市で合計75人、弁護士は4都道府県(山梨,大阪,島根,徳島)、3中核市(堺,岡山,福山)で7人であった。税理士は1政令都市(京都)1人、会計検査院OBは1中核市(秋田)1人である。

 その監査の内容が今回の評価対象であるが、報告書の質と量は監査人により著しい差がある。もっとも同様の監査対象を取り上げていても、調査した行政部局の範囲や深さなどかなり異なるものがあり、これらを今回の評価において考慮していることはいうまでもない。

 また、表のとおり監査人の報酬は633万円〜3000万円である。

 なお、今回の監査対象事項を種別に分類すると、およそ下記のとおりである。
病院事業
北海道,山形県,埼玉県,千葉県,東京都、神奈川県,新潟県,石川県,愛知県,京都府,奈良県,鳥取県,香川県,佐賀県,千葉市,横浜市,川崎市,名古屋市,京都市,新潟市,富山市,神戸市,豊橋市,金沢市

公社と出資団体
北海道,福島県,群馬県,茨城県,東京都、山梨県,大阪府,(第三セクター企業局を含む)和歌山県,広島県,香川県,福岡県,大分県,鹿児島県,札幌市,福岡市,神戸市,宇都宮市,富山市,金沢市,長野市,姫路市,和歌山市,堺市,浜松市,岐阜市,浜松市

財政援助団体
埼玉県,神奈川県,山梨県,石川県,三重県,山口県,(第三セクターを含む)鹿児島県,沖縄県,仙台市,熊本市,いわき市

公有財産・物品管理
福島県,茨城県,東京都,神奈川県,富山県,石川県,岐阜県,鳥取県,岡山県,愛媛県,福岡県,長崎県,熊本県,鹿児島県,札幌市,金沢市,和歌山市,長崎市,鹿児島市

契約(入札を含む)
青森県,栃木県,新潟県,山梨県,長野県,兵庫県,奈良県,島根県,広島市,豊橋市

旅費等公金支出
福井県,鳥取県,宮崎県,鹿児島県,三重県,宇都宮市

基金・起債
宮城県,富山県,京都市,宮崎市

公の施設・運営
岩手県、秋田県,埼玉県,東京都,三重県,兵庫県,和歌山県,大分市

債権(債権管理)
青森県,宮城県,長野県,富山県,岐阜県,静岡県,愛知県,愛媛県,高知県,熊本県,宮崎県,沖縄県,大阪市,広島市,北九州市,長崎市

税・未収金
徳島県,静岡県,高知県,山口県,熊本県,鹿児島県,新潟市,福山市,静岡市,高知市,熊本市,鹿児島市

情報電算システム
新潟県,長野県,川崎市,長野市,高松市

県(市)営住宅
岩手県,福井県,長野県,高知県,静岡市

地方公営企業
青森県,秋田県,広島県,仙台市,大阪市,福岡市,富山市,岐阜市,豊田市,姫路市

特別会計
秋田県,滋賀県,長崎県,宮崎県,浜松市,北九州市

補助金
栃木県,千葉県,広島市,秋田市,いわき市

その他
  1. 土地改良事業 :千葉県
  2. 公共料金:高知県
  3. 退職金:滋賀県
  4. 学校給食・用務員:郡山市
  5. ゴミ収集及び処分:岡山市
  6. 交通災害共済事業:大分市
第4章 今回包括外部監査の評価と評価方法
1. 今回の評価は、公表・提供された監査結果・報告書・意見書」自体をもとに評価した。

 従って、監査人の主観的な努力や監査対象機関の協力度などの差異はあっても、それが結果報告書・意見書から伺える場合でのみ判断するものである。仮りに監査委員が外部監査人の意志と別の理由からの意見書の非公開のためであっても、その内容は知り得ないので公表されている範囲で判断した。

 もちろん監査結果に意見を多く書き込んだタイプのもの、監査結果は簡単で意見書分析を含め記載されているタイプなど様々で、公表されている限りは書式の如何を問うものではなく評価し た。



2. 評価にあたって基準を定めて、担当者が評価表に記入した。担当者はA〜Dの評価については評価班全体に報告をし、評価班はそれを元にしつつも他の監査結果との相対比較、対象の難易度を含め、批判的に評価し、かつ各報告書自体を複数人が読み、評価の客観化に努めた。

 一都道府県の複数の個別テーマの監査結果については、個別報告ごとにA〜Dの評価をして、最終的にはそのうち優れた報告書を尊重しつつ総合して評価した。

 関係自治体の地元オンブズマンからも評価の意見をもらった。しかし、今回の評価はあくまでも評価班の基準と判断で行なった。従って、地元の評価とは必ずしも一致しない。



3. 評価の視点ないし基準は次のとおりである。

対象の選定は適切で監査結果は活用度があるか
  • 具体的な目的根拠があって対象が選定されているか。
  • 監査テーマと結果が首長(自治体)が採用する有効性を持っているか。
  • 行政の改善の方向が具体化されているか。
監査が充実し、評価が適切であるか
  • 新しい問題意識・発見があるか。
  • 適法性の監査について充実・適切か。
  • 3E監査について具体的な対象への適用とチェックがあるか。
  • テーマの数だけでなく質の高さがあるか。
  • 行政結果の追認に終わっていないか。
報告書・意見書は判りやすいか
  • 市民が読んで判る記述になっているか。
  • 問題点や意見要点が明確に指摘されているか。
  • 専門用語などは解説・註があるか。
  • 表やデータが判りやすいものか。
4. A〜Dの評価は次のとおりである。

A: 良い監査として評価に値いする。
B: 改善を希望し、今後に期待する。
C: 不十分な点が多く、監査方法や内容を改める必要がある。
D: 不可。自治体・市民にとって有益なものと評価できない。

 このうち、BとCについては視方によっては微妙なものもあり、かつAに近いBとDに近いC、そしてBとCの中間的なものがある。

 しかし、今回の調査ではBとCの峻別より、A、Dの明確化について注目した。

 なお、今回のAは初回の外部監査ということもあり、問題はあっても、あえてAとしたものもある。もちろん、Aと評価したものでも問題点がないという意味ではない。


第5章 総評
1. 監査対象について

  • 病院運営が最も多いが、監査人となった公認会計士が、民間病院等での経験を公営病院に置いて検討することが有効と考えられたためであろう。ここには後記のとおり監査法人本部の影響も強い。

  • 公社、財政援助団体、公金支出は、社会問題化している「塩漬け土地」「第三セクター」その他ムダな公金支出先の世論を反映している。

  • 公有財産・物品、基金、債権は、自治体の広い部局にわたる財産管理や取得を監査初年度のテーマとして、適当として選んだものであろう。

  • 公営企業、特別会計も財政危機下にあって、病院事業と共に民間との対比が可能として選ばれたと思われる。また、都道府県より政令市・中核市の方が市民生活に密接するテーマを対象として選んでいる傾向にあった。
2. 監査報告書・意見書について

 外部監査には、定型の様式というものが定められていない。初めてのことでもあり、外部監査人が手探りで報告書を書いた結果、実にバリエーションに富んだ報告書が各地で公表された。そのこと自体は悪いことではない。定型的な様式が固まってしまうと、形式さえ整えれば良いという悪弊が容易に想像されるからである。

 しかし、最低限押さえなければいけない要点というのはあるはずである。外部監査人の資格、氏名、補助者の人数、資格、氏名、テーマを選定した理由、監査の視点または要点、監査範囲、監査手続き、監査日数、監査結果、監査人の意見等は少なくとも書くべきである。監査法人が関与した場合はほとんど補助者の人数、氏名等が省略されていたが、本来公表されるものでもあり、報告書に書かれるべきである。

 以上のうち、すべての報告書に記述があったのは監査結果だけである。テーマ選定の理由が述べられていない報告書もあった。それは論外としても、監査の視点や監査手続きが書いてないものもいくつかあった。結論として、「適法」、「合規」とあっても、監査視点や手法と手続きがわからないのでは、読者としては判断に迷う。

 また、上記の項目をすべて書いてあっても、具体的な検討の項目、内容が書かれていなければその報告書は説得力に欠ける。特に、旅費や食糧費の執行手続きや債権管理をテーマにしたケースに記述の不足が目立った。これまで市民オンブズマンが告発したカラ出張やカラ飲食でも、形式的には合規性を備えた書類は作成されていたのである。形式ではなく、実質的に必要な用務で出張や飲食を行なったものかどうかが問題である。今回の監査報告書の中には、そこまで検証したと納得できる報告書はなかった。

 少なくとも重要な監査結果、監査意見については、判断の根拠となった具体的事実や監査手続きを記述すべきである。今回の評価で一見同じような監査結果や意見でもAからCまで評価が分かれたのは、その手続きや記述がどれだけ信頼性があり具体的事実に基づいているかによる。評価班では報告書のボリュウムを評価の要素にはしなかったが、以上の点を満足するにはあまりにも少ない紙数では不可能である。そのため結果的に全文で10ページ程度の監査報告書は低い評価となった。

 もちろん監査報告の価値は字数・紙幅で決まるものではない。しかし、1000〜1500万円以上も の報酬をもらった報告書として、かくも簡単なものでよいのか理解しかねるものがあった。


3. 対象テーマの難易について

 対象選定によって今回の外部監査そのものの内容や水準が大きく左右されたと思われる。すなわち、比較的やさしい初歩問題は点検もし易く、判り易く評価して報告にまとめられる。しかし、前例のないテーマや複雑困難な問題は、調査も困難であり、処方を示すことも難しいと思われる。

 被監査側の行政当局の資料提供”協力度”(抵抗度?)も監査結果に大きな影響をもたらした可能性もあると思われる。

 行政担当者にとって”痛くもない対象”の事項については、調査も容易であったと思われものもあり、これで紙幅を増加しているものもあった。

 また、対照的に現状の報酬では不足したと思われるものがある。


4. 監査意見の非公開について

 今回の評価は市民に公表されたもので評価した。例えば鳥取県は意見書は別にあるとしながら公開しない。しかし、その理由はどうであれ理解できないものである。これでは外部監査人自身の職務のアカウンタビリティが問われる。

 法制度が一応監査結果と意見を分け、前者を告示する制度になっており、後者は明文上義務化されていないとはいえ監査結果が粗略で全て意見に廻し、それを非公開にするというようなやり方は監査委員(事務局)と外部監査人との事実上の「合意」がないとあり得ない。このような外部監査の適格性が問われてよいからである。

 監査結果の報告書や意見書は、それ自体に対して高価な報酬を取得してなした外部監査人の市民への「納品物」と評せるから、監査委員としても外部監査人としても公開すべきである。


5. 監査人が公認会計士の場合

 今回の外部監査は、84自治体中75自治体で公認会計士が監査人に選任された。これは監査の専門家としての公認会計士に大きな期待が寄せられた結果であろう。公認会計士はよくその期待に応えたといえるであろうか。多くの公認会計士は狭い意味での合規性に関しては、経験を生かして手堅く監査を実施したと見られるが、書類上で形式的な合規性を満たしていればよしとする傾向がある。広い意味での適法性まで踏み込んでいないケースが多かった。弁護士が監査人に選任された場合は補助者に公認会計士を起用するが、その逆のケースではほとんど弁護士を補助者に起用していないのも問題かも知れない。

 また、3E監査に関しては一部には無視されたものもあったが、言及されているものが多かった。ただし、その内容は一般論に終始しているものが多く、具体性に欠けていた。

 ごく一部に経済性、効率性の面では、自治体が活用しうる見識と具体的意見を備えた報告書があった。有効性についてはほとんど見るべき意見はなかった。

 今後の課題として、監査法人所属の公認会計士が外部監査人に選任された場合の監査法人の関わり方の問題がある。今回は、特に大都市圏で大手監査法人所属の公認会計士を選任するケース(政令指定都市では12市中11市)が目立った。大手監査法人は本部に外部監査チームを設け組織的に対応している。その功罪については、慎重に検討する必要がある。

 大手監査法人が組織的に対応した場合のメリットは、監査実務の一定の水準確保、他の自治体との比較の容易性、特定分野の専門家の補助者起用等が考えられるが、そのメリットを十分に生かしたと思われる報告書は意外に少なかった。

 一方、デメリットとしては、各地で同じテーマを取り上げて効率化を図った結果、各自治体固有の問題に目が届かず、似たような報告書が量産されるという現象が発生した。その典型が病院事業を取り上げたケースである。

 もちろん中には横浜市のように相当の水準に達しているものもないわけではないが、その横浜市の場合も含めて、監査がコンサルティングになってしまい、住民の福祉に対する有効性の視点や、行政に対する批判機能が軽視される傾向が見られる。あくまで自治体の監査であって、民営病院のコンサルティングとは違うということを、もっと認識してほしい。


6. 弁護士・税理士・会計検査院OBについて

 弁護士が外部監査人となっているのは7自治体にすぎず、全体的傾向を言うには数が少ない。ただ監査人の独自性が監査対象、監査結果、意見に比較的強く出ていると思われる。なお、補助者として公認会計士の補助員スタッフを抱えるなどしており、専門の適法性監査と共に有効性・効率性・経済性に踏み込んだ評価が期待されたが、その点は今回多くの公認会計士の場合と同様十分でなく、達成されていない。

 税理士・会計検査院OBは各1名であり、相対比較もできない。


7. 報酬の妥当性について

 今回の評価は報酬の高低を直接問題にしていない。大方の1500〜2000万円という水準は、監査内容・実務により安いとも言え高いとも言えるからである。ただ、今回のA、Bとされたものでは報酬に伴う仕事はしていると思われる。従って、報酬によってA・B・Cの評価を変えることなどしていない。しかし、Dについては、実報酬に対しこれが市民に説明できる成果物とはいえないと考える。


第6章 総合評価
1. A評価について

 今回のA評価について、我々は手放しで評価するものでない。班内で評価についても批判の対象となったものもある。しかしながら、
  • 外部監査人として誠実な職務遂行ははっきり認められるもの、
  • 行政現状の追従や一般的な改善意見だけでなく、独自の見識の認められるもの、
  • 今後の外部監査例として他の参考になり得るもの、
  • 自治体にとっての活用性
などを考慮し、A評価とした。

 今回のA評価したものの中でも、筆頭は、都道府県では宮城県、政令指定都市の中では福岡市である。

 宮城県についての報告書は、基金運用と債権管理に関するものであるが、財政危機に対して市民感覚による検証がなされ、深い分析による問題点の抽出がなされている。 200頁に及ぶ大報告書であり、監査結果の記載や監査人の意見も具体的で判りやすい。

 政令指定都市の中では福岡市がA評価であった。福岡市のものは二つのテーマとも、問題点を良く拾い上げ、それをていねいに追及している。読者にとって、全体像がよく理解できる。住宅供給公社に関する誤った会計処理の指摘は、他の報告書にも多く見られるところだが、福岡市の場合は正しい処理との比較が金額で示されている。下水道事業に関しては、料金改定を前提としたケースと据え置いたケースで将来の財政負担がいくらぐらいになるかという試算や、機器の更新計画の経済性について具体的な計算モデルを示して例示している点など、説得力があった。

 ただ、宮城県の報告書と比較すると結論が甘く、特に住宅供給公社の存在意義に疑問をほのめかしながら有効性に踏み込みが足りなかった。

 横浜市のものは、宮城県、福岡市に比べると少し甘い評価であるが、病院を監査対象としたものの中で第1位であり、病院経営の改善提案などには見るべきものがあった。


2. D評価について

 Dは不可であり、これでは市民として納得できないと思われるものである。なお、監査の中には対象が適正といえど、現実監査内容は的を絞りすぎたり、的を得ないものがあり、大きな不満の残るものもあった。また視点と監査作業の大きなズレのあるものがあった。しかし、これは今後の課題とし、それだけでDとはしなかった。

 今回Dと総合評価したものは、都道府県では青森県、福井県、鳥取県、愛媛県、宮崎県、政令都市では京都市の各報告書である。

  • 青森県のものは三対象を選んでいるが、いづれも表面的な浅い監査に止まり、包括外部監査の期待水準に程遠い。意見も一般的なもので活用度という点で厳しい評価をせざるを得ないものであった。

  • 福井県のものは、旅費等の適正・効率的な執行や県営住宅を対象としているが、限られた部局を行政側の資料で適正と判断し、どこまで調査したのか報告書からはわからない。改善も書類上の不注意をいうにとどまる。この点は県営住宅でも同じで、報告書の粗略さが全国屈指である。

  • 鳥取県のものは、意見書があれば別途の評価が可能かも知れないが、公表されている限りでは全国一簡単な監査報告であり、公表されている内容においても空虚であり、これでは監査した意義が全く判らない。

  • 愛媛県のものは、第1点の債権管理であるが、広い範囲の債権の現況を紹介し、概して適切な改善をいう一般的な意見を述べるものとなっている。第2点の県有土地建物についても、現況を述べ、財産台帳について整備を求めるだけで外部監査になっていない。

  • 宮崎県のものは、中小企業近代化資金と旅費及び食糧費の二つがテーマである。前者については制度及び運用手続きの解説、金額の推移の説明に終始し、監査手続き、問題の指摘などはほとんど記述されていない。旅費及び食糧費については、事務手続きの改善を一点指摘しているだけである。書類間の整合性と金額の正確性を見ただけで問題はなかったと言われても、得るところは何もない。前述のとおり、問題が潜んでいる場合でも書類のつじつまは合わせてあるのが普通である。監査の名に値しない。

  • 京都市のものは、行政からと思われるデータを簡単に羅列し、一般的な効率化を要望するというものである。基金と病院二つの対象の監査ともに粗略で外部監査の意欲が伺えない。
3. B、C評価について

 今回B、C評価を受けたものが圧倒的である。しかし、Bの中には評価されるものもある。例えば、栃木県の報告の入札の改善提言、千葉県の報告の圃場整備の事業評価、長崎県の報告の物品購入の不適切例の具体的指摘などである。名古屋は横浜に次ぐものであった。


4. 中核市の報告書は、今回すべてを詳細に評価するに至らなかったため、本報告書には含めていないが、特筆するべきものをいくつか挙げると次の通りである。

 岡山市のものは、監査人はゴミ収集車に同乗するほどの熱意でゴミ収集事業の問題点をえぐり出し、適法性監査に正面から取り組み、改善提案を行なっている。高松市の情報システムや補助金の機動性や委託金の効率性についての報告は秀逸である。情報システムをテーマに選んだところは都道府県、政令市、中核市にもいくつかあるが、高松市の報告書が群を抜いている。情報システムをテーマに選定する監査人はまず高松市の報告書は参考にできよう。

 中核市にもD評価はある。その筆頭が秋田市のものである。監査対象の選定理由視点・手法は全く書かれておらず、監査結果も簡単な現状説明とわずかに手当・人件費など再検討を述べるだけで、外部監査人としての監査についての説明責任が果たされていない。

 監査報告書とはとても思えないという意味でユニークなのは宮崎市のものである。図表やグラフを駆使した100ページを越える「市債」に関するレポートは、起債制度の詳細と宮崎市の実態を知る上ではまたとない教科書ではある。しかし、外部監査としては厳しい評価をせざるを得ない。


第7章 外部監査の今後の課題
 今回調査したほとんどの外部監査報告において、十分な適法性監査が行なわれていなかった。

 まず、監査にあたって、実質的な「適法性」ではなく、「合規性」を確認することを監査の視点として監査を行い、「適正に執行されていると認められる」と結論づけている監査報告が多い。しかし、手続規程に準拠して手続書類が作成され、手続が進められているかどうかという外形的、書面確認的な監査は、外部監査の基本作業として当然に必要なものであるが、それだけにとどまらず、契約、支出、補助金交付などの執行行為、手続の目的、金額、内容、必要性、相当性等の内容について調査し、検証することが外部監査には求められる(例えば、違法な食糧費の支出、補助金の交付、土地取得契約の締結とされてきた事例も形式的な書類は合規に整えられている事例である)。

 また、実質的な監査を行なう調査の過程で、適法性に疑問のある事実が確認しているにもかかわらず、あえて適法であるのかどうかという判断を避けている監査報告が極めて多い。

 「土地を民間会社に無償で貸し付けている事例が確認された」、「入札手続を行なわず、随意契約としている根拠が乏しい事例がある」、「根拠の乏しい補償金の支払いが行なわれている」、「補助金執行事業の目的とは違う用途に土地が利用されている事例が身受けられた」などと問題事実を確認しながら、外部監査人としての意見、判断を示さない監査報告や、「改善を検討されたい」「見直しを要望する」という改善、要望意見だけをつける報告である。

 しかし、公有財産の貸付、随意契約、補償金の支払等には厳格な法的要件、根拠が必要であり、指摘されている事例は、違法と判断すべきものも少なくないはずである。

 外部監査は、職員の非違行為を摘発したり、職員の責任追及を基本目的とするものではないが、行政内部の長年の悪しき慣行として定着している不適法な手続について、改善を要望するだけで、真剣に改善が検討され、実施されていくと期待することは甘すぎる。外部監査人が、違法な事例を指摘することの結果として担当者の責任が問われることを配慮したり、さらには自治体との緊張関係を生じることを心配して指摘を控えるようなことでは、従来の監査委員と同様に身内に甘い監査として、批判される事態となってしまう。

 調査の過程で明らかになった事実が違法である可能性が少なくない場合には、外部監査人としては、その適法性の有無について、事実関係を詳細に調査し、関係法令の精査、関係判例等の調査をふまえ、厳正な判断を行なう職務があることを忘れてはならない。

 さらに今回の調査では、行政提供データを追随し、充分な調査・検討のない、浅く広くの監査が多数認められた。このような監査は過去の行政に対する「お墨みつき」の効果を与えるだけで問題点が多く、反省を要すると考える。


第8章 外部監査を活かす
 外部監査は、監査の結果が提出され、公表されることによって終わるものではない。

 監査において、いかに鋭い監査が行われ、監査報告に、いかに住民にとって有益で、有効な意見が提示されても、監査を受けた自治体の長、議会が、監査の結果を真摯に受け止め、指摘された点について原因を解明し、監査意見に示された是正、改善提言を実際の行政に活かして行かなければ、外部監査制度はまったく役に立たない。

 初年度の今回の外部監査は、これを実施する監査人にとっても未経験のことであり、的確な問題提起や改善意見が示されたものは多くなく、全体的に適法性あるいは有効性、法律性、経済性の監査としては成功していない。

 しかし、今回の外部監査によって、自治体内部に潜んでいた問題、欠陥、損失、負債、リスクなどが、市民に初めて明らかになったものも少なくない。

 監査報告を受けた自治体は、真摯に監査結果を受け止め、迅速かつ確実に、改革を実行していくことを強く求めるものである。そして、外部監査人には今後の研鑽を求めるとともに、監査結果の実現について市民と共に監視していくよう要請する。

 私達市民は、これらの外部監査によって、行政の諸問題を学ぶとともに、自らの自治体がより一層正常化するよう見守っていかなければならない。
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