平成13年(行ウ)第150号 行政文書不開示処分取消請求事件

原 告 特定非営利活動法人 情報公開市民センター
被 告 外 務 大 臣

求 釈 明 書

2001年9月28日
東京地方裁判所民事第2部 御中

原告訴訟代理人弁護士













大 川 隆 司

高 橋 利 明

清 水 勉

土 橋 実

佃 克 彦

児 玉 晃 一

関 口 正 人

谷 合 周 三

第1 求釈明を行うについての前提事実の整理
 被告は、準備書面(1)において、「報償費」の定義につき、「報償費は、国が、国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため、当面の任務と状況に応じその都度の判断で最も適当と認められる方法により機動的に使用する経費であ」るとした上、「外務省においては、情報収集及び諸外国との外交交渉ないしは外交関係を有利に展開するため使用する経費に当てている」(41頁)としている(以下、これを「情報収集等のために使用する経費」と呼ぶ)。こうした被告の主張からすれば、「報償費」の支出関係書類を不開示とする理由は、「報償費」であるが故ではなく、それらが「情報収集等のために使用する経費」であることに基づくものと理解されるところである(被告が、「法5条3号該当性」並びに「法5条6号該当性」の項で、不開示処分の正当性を展開している趣旨も同様の趣旨であろう)。

 ところで、在外公館において「便宜供与」が一つの大きな業務であるとされている。「便宜供与」とは、わが国の国会議員や霞ヶ関に勤務する公務員らを中心にした在外公館への訪問者に対して提供される「便宜」であると理解しているが、これらの「便宜」の中には、「食事の提供」も含まれている。外務省大臣官房総務課がまとめた「平成11年便宜供与件数統計表」によれば、平成11年(暦年)に在外公館で提供された「便宜供与」の総件数は、33,229件であり、うち食事の供与回数は14,303回であったとされている。このように、「便宜供与」には一定額の出費がなされているのである。

 原告が「報償費」の支出関係書類の開示を求めている在米大使館ほかの4つの在外公館においても、平成11年度中、食事の提供等の便宜供与が行われており、これらの費用は、報償費から出費されていると各紙に報じられている(例えば、別紙本年6月27日付け神奈川新聞記事。なお、記事中では「報償費」を「外交機密費」と表現している)。

 そして、外務省の平成14年度予算の概算要求からも、過去の便宜供与費が報償費から支出されていた事実が認められる。すなわち、本年9月2日の日本経済新聞朝刊の報道によれば、次のとおりである。

 外務省の平成14年度の概算要求によれば、同省の報償費の予算要求額は、平成13年度比で40%減となっているとされ、うち25%にあたる約14億円が「報償費」から他の費目への移し替えにより、15%相当額が「節約で」とされている。そして費目の移し替えを行う14億円というのは、「国会議員の外国訪問の際の便宜供与に使っていた約8億円と、各種レセプション経費約6億円」であるとされている(同日経新聞記事添付)。このように、在外公館における便宜供与費が報償費から支出されている事実が存在することは疑う余地がない。

 以上の事実が認められるとすれば、在外公館における報償費の使途のうち、わが国の国会議員や霞ヶ関官僚らの接待費として使用された経費は、前記の「情報収集等のために使用される経費」には当たらないこと明白であろうから、これを含めて在外公館の報償費を全面不開示とする被告の処分には、大きな疑問が湧いてくることになる。

第2 求釈明事項
 以上の事実を前提として、原告は、被告準備書面(1)への反論を行うについて、以下の事柄について、無用な争点を除去しておく必要があるので、求釈明を行う。早急な回答を求めたい。
 平成11年度を含む過去の在外公館における会食費等を中心とした便宜供与の経費は、いずれの費目から支出されていたのか。複数の費目から支出されていたとすれば、主な費目を挙げられたい。

 平成11年度において、在外公館における会食費を中心とした便宜供与費を、報償費から支出していたか(本件、4つの在外公館に限っての釈明として考えても良い)。

 平成11年度において、報償費から前記の会食費等の「便宜供与費」が支出されている場合、その支出関係文書を不開示とする理由について、被告準備書面(1)による主張に追加する主張があるか。

 歳出科目としての報償費の定義については、予算決算会計令第14条に基づき、各省庁の長と財務大臣(大蔵大臣)との協議の結果作成されている、各年度毎の「一般会計、特別会計歳出予算目の区分表」が存在するが、外務省における報償費の定義に関し、この「区分表」とは別の固有の規範が存在するのか。

 もし、存在する場合には、当該規範を記載した文書を書証として提出されたい。


以上