2006年10月12日
情報公開市民センター

 情報公開市民センターは、第1回口頭弁論に提出した答弁書を補足し、証拠を示してさらに詳述した準備書面(1)および証拠説明書(甲72〜97号証)を9月26日付で提出した。
 準備書面の、6月以降に外務省から入手した文書で明らかになった事実にもとづく部分の要旨は次のようなものである。

東京高裁控訴審 センター準備書面(控訴審1)の要旨

1.米大使館での国会議員への飲食提供が具体的に明らかになった

 外務省は、米国大使館の4件の国会議員への「便宜供与ファイル」に関する、情報公開審査会の昨年8月の答申に従った文書の開示を遅らせていたが、第1回口頭弁論の直後に文書を開示し、これによって、平成11年度に訪問した木俣佳丈、山中Y子、日下部禧代子、鴨下一郎、根本匠、小野寺五典、河野太郎、浅尾慶一郎、古川元久の各議員に提供した飲食の日時、場所および大使館の出席職員名が具体的に明らかになった。

2.支出決裁文書の開示請求には「存否応答拒否」
 このうち木俣議員の平成12年2月4日の飲食の支出決裁文書の情報公開請求を行っていたところ、外務省が6月に行った決定は「存否応答拒否」であった。
 1)会食の支出決裁文書の存在は明白
 木俣議員に対して在米日本大使館の八木参事官により、平成12年2月4日18時30分からオキシデンタル・グリルで開催された夕食会に、公費が支出されていることが答申書で認定されている。
 2)夕食会開催の情報は既にすべて開示されている
 外務省が文書を開示しても木俣議員との夕食会の日程や場所、参加者開催の事実以外には新しい情報は出てこない。外務省がいうように、「本件開示請求に係る行政文書の存否を答えるだけで、既に公になっている他の情報と相まって、個別具体的な外交活動及び事務に関する情報で、情報公開法5条3号及び第6号に規定する不開示情報を開示することになるため、」という事態は生じ得ない。
 3)「不開示」の理由は既に答申書で排斥されている
 審査会の答申は、大使館側と訪問議員との懇談や食事会等の接待の事実を明らかにしても、外務省の業務には何の支障も生じないと明快に判断している。
 4)外務省の憂慮はデタラメな報償費の使途の公開である
 文書を開示すると、国会議員に対する飲食の伴った便宜供与の費用が報償費から支出されていることが明らかになってしまう。外務省がもっとも恐れているのは、報償費のかなりの部分が外交活動のためとか情報収集のために使われているのではなく、議員接待や霞ヶ関の高級官僚接待その他の目的に使われてきた事実が暴露されることなのである。
 5)進退窮まった外務省の措置
 請求の支出決裁文書が外務省に存在しているのであるから「不存在」とは言えない。これまでのように「不開示」と言いたくとも不開示の理由がない。既に審査会の答申で事実上、排斥されている。
 センターの請求に応ずれば、これまでの報償費の支出について述べてきた嘘が白日の下に明らかになってしまう。そして、本件訴訟の確定的な敗訴にもつながる。こうして、窮余の策が「存否応答拒否」ということになったのである。
 この回答は、嘘だらけの外務省の報償費の使用慣行を覆い隠すための、保身だけを考えた法をねじ曲げた有りうべからざる違法行為である。
(鈴木祥宣 記)