情報公開市民センター
報償費東京高裁控訴審 第5回口頭弁論(07.10.4)の概要
10月4日の第5回口頭弁論で、情報公開市民センターと外務省はそれぞれ最終準備書面を陳述し、結審した。判決言渡しは08年1月31日に行われる。

1.証人尋問(8月2日)の後の進展

 外務省齋木尚子会計課長の証人尋問が8月2日に行われ、次回会期に外務省と市民センターの双方が最終準備書面を提出することとされたので、市民センターは、これまでの外務省の論点と、入手した開示文書の総点検を行った。その間に、9月20日にはこの報償費訴訟に関連して提訴した、「訪米国会議員に米大使館が提供した会食に係る存否応答拒否処分取消訴訟」の判決があり、市民センター側が勝訴した。
 入手していた開示文書のなかに、諸国大使館の平成14年度の庁費「要人外国訪問関連」の現金出納簿と支出決裁文書(領収書など)があった。これは外務省改革の一環として、前年度までは報償費から支出していた、国会議員など要人への便宜供与にかかわる会食費や車両借上げ費の支出科目が、庁費に変更され開示されたものである。

2.市民センターの最終準備書面の要旨

 市民センターはこれらの進展を踏まえ、最終準備書面を作成した。120枚の書面で、訴訟開始以来の外務省の主張とその変遷を、改めて詳しく批判するとともに、次のような新論点を盛り込んだものである。
 ・在外公館の国会議員への便宜供与は議員サービスであること
 ・在外公館交流諸費の会合のテーマは、当時の日米関係下の外交課題であること
 ・齊木証言の詳細点検による矛盾問題点
 ・報償費から支出科目が変更になって開示された「要人外国訪問関係」の会計文書
 ・別件「存否応答拒否処分取消訴訟」の地裁判決
 最終準備書面は4部構成で、要旨は各部の末尾にそれぞれまとめてあるので、その部分をご覧いただきたい。さらにあえて要約すると、次のような主張立証をしている。
1)外務省の「報償費」の定義が変遷しており、一審途中から「公にする」外交活動、「公にしない」外交活動の区分を主張し、控訴審になって初めて「直接接触」「間接接触」の区分を持ち出している。報償費を包括的に隠す意図での主張の変転である。
2)報償費から支出していた公式レセプションは、明らかに「公にすることを前提にした」ものであり、「公にしない」では説明がつかない。
3)「在外公館交流諸費」(任国の要人との会食の費用)の開示された文書を見ると、それらの会食は外務省の説明による「公にしない」外交活動に合致し、「公にする」外交活動の要件は一つも存在していない。
4)別件の「存否応答拒否処分」取消訴訟の対象である会食支出は、本事件の対象文書の中のものであり、地裁では秘匿性がないとして、9月に処分取消の判決が出た。
5)市民センターが過去に行った情報公開請求と開示内容を総点検したところ、平成13年度以前分で開示された会食・便宜供与の支出文書には、国会議員に対しての会食支出文書が一つもない。したがって報償費から支出されていたと考えるほかない。
6)国会議員への便宜供与の会食支出を、外務省は「間接接触」であって秘匿性があり開示できないとするが、便宜供与の対象の国会議員の外国訪問の目的は、大半は施設・制度の視察であって外務省が行っている秘匿性のある外交活動でない。これらは平成14年度からは報償費から庁費に支出科目を替えて開示されている。また「直接接触」である相手国要人との会食についても開示されている。
7)国会議員など要人への便宜供与支出を平成14年度から報償費から庁費に変更したことについて説明を怠り、この事実を秘匿してきた。
8)「間接接触」58件にはもともと秘匿性が存在しない。
9)「直接接触」の外務省の58件分の説明のうち、本省官房の支出分は在外公館分の説明と明らかな違いがあり、会合のテーマと相手人物の立場・国籍をあいまいにしており、相手の大半は「直接接触」でなく日本人であると推測できる。
10)齊木証人の体験事例の4件は、「国会議員を外交目的に道具として使う」事例は外務省のこれまでの説明にはない、他省職員との会食の事例は官官接待に過ぎないなど、いずれも異質・特異なものである。
11)原判決が指摘した疑念は一層拡大し、外務省は主張立証を果たしていない。
3.外務省の最終準備書面の要旨
1)国会議員等のわが国関係者との会合には、外交を目的とした公にしないことを前提とした会合がある。
2)報償費を用いた会合と在外公館交流諸費を用いた会合とは、公にしないことを前提にしているか公にすることを前提にしているかで、性格を異にしている。
3)報償費の使途に関する主張は変遷していない。公にする、しないについての説明は、外交事務の特質の側面から論じる場合の説明を途中から行ったものである。
4)「五類型」の秘匿性の主張撤回は、秘匿性の低下が地域に応じて徐々に変化したものを、時々に応じ真摯に適切に対応を行ったものである。
5)「直接接触」と「間接接触」の説明は、もっぱら会合の秘匿性につきより分かりやすく説明するために分類を行ったものである。
6)原判決は対象文書に五類型に係る文書が含まれていたことをほとんど唯一の根拠として、各文書について「相当の理由」があるかどうかをまったく審理せず、「公にしない」以外の文書が「相当数ある」と推認している。
7)情報公開審査会の答申は、五類型以外の文書について不開示が相当とされたのであるから、その判断は尊重されなければならない。
4.10月4日の口頭弁論と結審

 外務省と市民センターはそれぞれ準備書面を陳述した。市民センター側は「不開示該当性の主張立証は外務省が1件ずつ行うべきであるのにそれを果たしていない。秘匿性についての疑問は控訴審を通じて大きくなった。」と述べた。裁判長は双方にこれ以上の主張がないことを確認して、弁論を終結することを宣した。
 判決言渡しは2008年1月31日(木)午後1時15分に行われることに決まった。

(鈴木祥宣 記)