外務省の報償費公開請求訴訟に勝訴して 高橋理事長
 外務省報償費訴訟の東京地裁判決言渡しが2月28日に行われ、ほぼ全面的な勝訴となりました。1069件の支出文書のうち1017件については全面開示が命じられました。これらは外務省の分類によれば情報提供の対価と会合の経費です。
 第3の分類である定例的な物品購入・役務経費の52件は会計検査院が是正改善の処置を求めた5類型(大規模レセプション・酒類の購入・日本画の購入・要人外遊時の車の借上げなど)に該当するもので、情報公開審査会の答申に従って、途中で外務省が部分開示したものですが、開示の範囲を増やすように命じられました。

外務省の報償費公開請求訴訟に勝訴して

NPO法人・情報公開市民センター
理事長 高橋利明   

 外務省は、外交交渉や情報収集活動に一定の保秘性が認められていることを良いことにして、会計検査院や情報公開審査会が指摘するまで、在外公館のワイン購入代金や在外公館の壁を飾る日本画、要人の車の借上げ代までも、公にすると国の安全が損なわれ、他国や国際機関との交渉上不利益になる情報だとして、不開示にしてきました。
 この訴訟で開示を求めた情報は、上記のような情報の外、そのほとんどは、在外の外交官らの懇談費や接待等の会食費の支出情報です。これらを明らかにしても、外務省の主張のように、業務の支障が生ずるとは考えられないものです。外務省は、「保秘のベール」を適用して、機密費を自由、かつ不適切に使用してきた事実を覆い隠そうとしてきたのです。
 この訴訟において、当センターと弁護団は、この不当性を指摘してきたのですが、今日、裁判所からも同様の指摘があり、不開示処分の違法の指摘があり、ほぼ全面勝訴の判決が出たことは、喜ばしい限りです。外務省は、この判決を受け止めて、基本に立ち返って透明化に取り組むべきです。
 また、情報公開請求訴訟の判例としては、「行政機関の長の判断の裁量権の逸脱ないし濫用の挙証責任については、一般論として従来の判例にそって、原告側にあるとした。
 しかし、その前提として法5条3号の事由があると、行政機関の長が判断をし得る情報が記録されていることについては、処分庁に主張・立証責任があるとした。
 さらに、原判決は、開示すべき情報と不開示情報とが混在しているときは、その区分をすべきであるが、被告はこの点の主張責任も果たしてないと指摘した。
 加えて、外務省は報償費は「公にしないことを前提とした外交活動」に専ら使用してきたと主張したが、裁判所はそうした推認は働かないとの判断を示している。
 判決の主旨を一言で言えば、外務省は不開示情報であることについての基本的な主張を尽くしていないと判断し、かつ、外務省の報償費の使途についても強い疑念を示し、この度の判決となったものと思われます。