部分公開はお役所のお情け!?
全面非公開をしている自治体がさっそく2001年3月27日の最高裁第三小法廷判決を引用するようになって来た。部分公開判決をしてもらうためにどういう主張をすればよいか。
最高裁判決は、大阪府情報公開条例10条(部分公開)の規定に関して、この規定は実施機関に「独立した一体的な情報をなすもの」についてはさらに細分化して公開・非公開の判断をすることまで義務付けていない。部分公開は実施機関の「裁量判断」だ、とした。
1 最高裁判決の考え方の誤りを指摘する。
・最高裁の解釈は10条の規定だけの文言解釈として導かれている。
 しかし、情報公開条例が各地方自治体の創設的な制度であることからすれば、条例の立法趣旨や目的など制度全体との関係から10条の規定を解釈すべきだ。そうすると、条例が極力情報公開しようという考え方に立って解釈運用されなければならないから、「独立した一体的な情報をなすもの」であるとしても、明示的に部分公開義務を否定していない以上、部分公開を義務づけていると考えるのが、制度全体の考え方に合致する。
・最高裁判決補足意見(元原利文)は、情報公開法6条(部分公開)の規定との対比を問題にし、法6条2項でわざわざ個人識別情報を除いた部分は法5条1号の情報に含まれないものと「みなして」法6条1項の規定を適用すると明記しているのに対して、大阪府条例にはそのような規定がないから、部分公開を義務づけているという解釈はできない、としている。
 しかし、このような解釈からすると、情報公開法の解釈としても部分公開は個人識別情報が非公開部分として含まれている場合に限られるということになってしまう。そのような限定解釈をすべきだという議論は立法経過において行われていない。法6条2項は当初、非公開事由の一つである個人識別情報の例外規定として設けられることが検討されていたものを、「部分開示の一形態として」位置づけたものである(宇賀克也著『情報公開法の逐条解説』有斐閣68頁参照)。
 また、6条1項の規定は全国各地の情報公開条例の部分公開に関する解釈運用を否定するものとして設けられたのではなく、むしろ部分公開が権利として認められるべきことを情報公開条例の規定よりもはっきりさせて争いにならないようにしたものである。
どこの自治体の情報公開条例もほとんど同じような規定の仕方をしていて、どこの自治体も「独立した一体的な情報をなすもの」について部分公開を義務として行って来たし、地裁・高裁の判決も同様の解釈をして来た。判決はこのような社会の現実を全く無視している。
2 最高裁判決の考え方に従ったとしても…
・「独立した一体的な情報をなすもの」でなければ一部公開があり得る。
「独立した一体的な情報をなすもの」の定義がはっきりしない。判決は歳出額現金出納簿、支出証明書、領収書、請求書兼領収書がこれに当たるとしているから、これらに類するものに限られるという考え方は十分に可能。独立した幾つかの情報が1つの書面に記載されているという解釈が可能な場合には部分公開が義務になり得る。
2001・5・12 情報公開市民センター・清水 勉(弁護士)