訴   状



平成18年12月14日
東京地方裁判所 御中
原告訴訟代理人 弁護士 高橋 利明
同    弁護士 谷合 周三
ほか別紙代理人目録記載のとおり

〒160−0008 東京都新宿区三栄町10番地1 橋爪ビル2階
     原  告 特定非営利活動法人 情報公開市民センター
           代表者理事長   高 橋 利 明

〒100−8919 東京都千代田区霞が関2−2−1 外務省
     被  告  外務大臣     麻 生 太 郎

公文書非公開処分取消請求事件
 訴訟物の価額   950,000円
 貼用印紙額     10,000円


第1 請求の趣旨
1 被告が原告に対して平成18年6月20日付でなした、別紙請求文書目録記載の行政文書に関する不開示決定を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。

第2 請求の原因
1 原告による行政文書の開示請求
(1) 原告は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下、「情報公開法」という)第3条に基づき、平成18年4月13日、被告に対して、「平成12年2月に木俣佳丈国会議員が訪米した際に、在米日本大使館が行ったすべての会食および供応に関する、支出証拠、計算証明に関する計算書等一切、および会食の目的趣旨を記載した文書」について、開示請求を行った(甲第1号証の1「行政文書開示請求書」)。
(2) この原告の請求に対して、被告から、請求を2件に分けるようにとの要請があったので、原告は、本件請求関係については、同年5月16日付けをもって請求する行政文書を「平成12年2月に木俣佳丈国会議員が訪米した際に、在米日本大使館が行ったすべての会食および供応に関する、支出証拠、計算証明に関する計算書等一切の文書」と補正した(甲第1号証の2「行政文書開示請求書(補正)」)。これが別紙請求文書目録記載の行政文書に相当する文書である。

2 原告の開示請求に対する被告の応答
(1) 原告の前記請求に対し、被告は、平成18年6月20日付けで情報公開法第8条に基づき、本件行政文書の存否を明らかにしないで、開示請求を拒否する旨の決定(以下「本件不開示処分」という)をなした(甲第2号証「行政文書の開示請求に係る決定について」)。
(2) 本件不開示処分の理由として被告が決定通知書(甲第2号証)に表示したところは、「本件開示請求に係る行政文書の存否を答えるだけで、既に公になっている他の情報と相まって、個別具体的な外交活動及び事務に関する情報で、情報公開法第5条3号及び第6号に規定する不開示情報を開示することになるため、情報公開法第8条を適用し、本件開示請求に係る行政文書の存否を明らかにしないで、本件開示請求を拒否することとします。」というものである。
 この決定通知書(甲第2号証)によれば、本件行政文書の存否を明らかにすること自体が、情報公開法第5条3号にいう「国の安全が害されるおそれ……があると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」にあたり、また、外交活動等に関する事務の支障を来す情報に当たる、というのが処分理由になっている。

3 本件行政文書の存在と内容の概要
 本件行政文書は、「平成12年2月に木俣佳丈国会議員が訪米した際に、在米日本大使館が行ったすべての会食および供応に関する、支出証拠、計算証明に関する計算書等一切の文書」であるが、同行政文書が存在すること、そして、平成12年2月に木俣議員が訪米した際に、在米日本大使館が同議員に対して供応、接待をなした事実は、別件の行政文書の開示請求案件においての情報公開審査会の答申書(甲第3号証)、並びに平成18年6月13日付で外務省が開示してきた便宜供与ファイル文書等(甲第5号証「木俣佳丈議員ワシントン訪問御日程」)によって明らかにされているところである。
 以下に、これについて詳述する。

4 本件行政文書の存在とその内容が明らかになった経緯
(1) 情報公開市民センターが請求した別件の情報公開事案について
情報公開市民センター(本件原告)は、平成14年3月12日、平成11年度の在米日本大使館における国会議員に対する便宜供与に係る文書(以下「便宜供与ファイル」という)の情報公開を請求した。国会議員は公務に関連して行う海外旅行において、在外公館から種々のサービス(空港の出迎え、飲食供応の接待等。外務省ではこれらを「便宜供与」と呼んでいる。)を受けているところ、これら便宜供与に関する情報の開示を求めたものである。
(2) 外務省の処分と対応
この便宜供与ファイルの開示請求に対して、外務大臣は開示決定の期限を大幅に延長の上、同14年12月12日付で部分開示を行った(甲第4号証「行政文書開示決定等通知書」)。しかし、同処分は、同行政文書には法第5条1号から6号の各号に該当する不開示情報が存在するとしてこれらを不開示とし、開示した文書には、国会議員の氏名さえ墨塗りするなど開示度が極めて低いものであった。
(3) 異議申立と情報公開審査会の審査
前記外務大臣の処分に対して、情報公開市民センター(本件原告)は、平成15年2月13日に異議申立を行った。外務大臣は情報公開審査会への諮問を大幅に遅らせていたが、平成16年3月30日に情報公開市民センターに対して、決定の変更を行ったとして、国会議員の氏名の墨塗りを解いた開示文書を送付してくると共に、審査会への諮問は行うとして、同年4月8日、同市民センターに諮問通知を送付してきた。
同市民センターは、同年5月25日、審査会に対して意見書を提出した。審査会は外務大臣に対して理由説明書の収受、対象文書の見分、職員への聴取などを行った後、平成17年8月25日に答申(答申238号)(甲第3号証「答申書」)を行った。
(4) 前記請求の行政文書の記載事項の概要
 外務省が審査会に説明した「便宜供与」
 情報公開市民センター(本件原告)が開示請求した行政文書は、国会議員への「便宜供与ファイル」に係るものであったので、外務省は審査会に対して、「便宜供与」を次のように説明した、とされている。
「外務省が行う便宜供与について諮問庁に確認したところ、外務省は、公的用務を目的とした外国訪問に対して便宜供与を行うものであり、私的用務を目的とした外国訪問に対しては便宜供与を行わないという原則で対応していると説明する。
 用務の公的性格の有無については、訪問団等の性格、その目的、日程、視察の対象や任国側の受入れ体制等を総合的に勘案して判断し、具体的な便宜供与の内容については、それぞれの公的用務の性質に応じて行うが、依頼内容を踏まえて、その用務の遂行上必要な範囲で、かつ大使館等の館務に支障の生じない範囲で行うとしている。
 さらに、本件の便宜供与の内容について、大使館員にとって職務遂行情報に該当するものの、本件国会議員の職務遂行情報かどうかという点では、公用旅券を用いればすべて公務ということにはならず、また、渡航先での日程に挙げられているものすべてが公務ということにもならないとしている。」(甲第3号証「答申書」5頁)。
 前記請求の文書の内容について
 審査会は、情報公開市民センター(本件原告)が開示請求した文書の内容について、次のように認定している。
「当審査会において本件対象文書を見分したところ、本件対象文書には  i)国会議員の渡米に伴う米国内での日程行動予定等のうち公式日程のほか、本件国会議員の公式の渡米目的とは関係のない個人的な行動等に関するもの宿泊先などの個人的な嗜好や趣味が判断できるもの  ii)米国政府関係者等との会談日程の取付け等の調整に係る情報であって本件国会議員の個人的な人間関係に基づくもの及びこれらの者の住所及び連絡先等の個人に関する情報  iii)特定の法人や宿泊先などの法人等の名称及び連絡先並びに宿泊先における料金等の法人に関する情報  iv)本件国会議員が懇談等を希望している米国議会又は政府関係者等の私的又は公的日程等に関する情報 D)米国政府機関等の連絡先等に関する情報であって在米日本国大使館が便宜供与関係の日程の取付けに係る事務処理の過程で入手した情報などが記載されている。
 また便宜供与を行う外務省側の情報として vi)外務省本省担当者への直通の連絡先及び大使館職員等の緊急連絡先に係る情報、F)便宜供与に使用する予定の館用車に関する情報等のほか G)これらの内容を電信により連絡している部分については同省の電信システム上の管理に係る情報が記載されている。
このように本件対象文書には本件国会議員の渡米に伴う公式日程を中心に米国内における様々な行動(私的会合への参加等を含む。)に関する情報がそれらに対する調整段階のものも含めた在米日本国大使館の対応内容とともに記載されていると認められる。」(甲第3号証「答申書」5〜6頁)。

5 「便宜供与」情報について開示を勧告した情報公開審査会の平成17年8月25日付答申
(1) 答申の概要
 情報公開市民センター(本件原告)が請求した「便宜供与ファイル」には、平成11年10月と平成12年2月に渡米を予定し、また渡米した木俣佳丈議員の米国内における日程や在米日本大使館が提供を予定していた同議員への便宜供与日程等に関する文書が綴られていた。
 審査会は、これらの文書について、記載事項を細分して分類し、開示すべきものと、不開示の区分をなした。そして、大使館側が大使館に立ち寄る国会議員に対して懇談会や昼食会、夕食会等のもてなしを行うことを予定した日程で、公式日程以外の大使、公使、大使館等が主催する懇談会、昼食会、夕食会の日程、場所、国会議員の氏名、公表慣行のある大使館職員の氏名等を開示すべきであると答申した。
(2) 答申で明らかになった木俣議員に対する公費接待の事実
 議員に対する飲食の伴った便宜供与
 前述の通り、情報公開市民センター(本件原告)は、在米日本大使館が、平成11年度に訪米した国会議員に供与した便宜供与に係る情報の開示請求を行ったのであるが、当初の開示文書では、訪米した国会議員の氏名すら開示しない、墨塗りだらけの部分開示であったが、平成16年3月30日に至り、訪米議員の氏名を追加開示してきた。
 しかし、前記審査会の答申が出るまで、氏名を明らかにした議員の公式活動予定(参加会議の名称や日程、会場等)は開示されていたが、その他の予定行動や日程などについては、多くのマスキングがなされていた。在外の日本大使館は、通例大使館を訪れる国会議員に対しては、相応の飲食の提供などを行い、公費の支出を行っているはずであったが、そうした事実についてはまったく情報を閉ざしていた。
 この度の平成17年8月25日の答申と、その後情報公開市民センター(本件原告)からの再三の催促によって平成18年6月13日に至ってようやく開示してきた文書によって、木俣佳丈議員に対して行う予定であった、また、行った一連の便宜供与の概要が明らかになった。飲食の伴う接待は次のとおりである(甲第5号証「木俣佳丈議員ワシントン訪問御日程」)。以下に述べる平成12年2月4日の予定分は、実際、実行された(この点、後述する)。
木俣佳丈議員への提供を予定していた便宜供与
 平成11年10月1日  大使館主催夕食会(訪米の取り止めで中止)
        10月5日  奥田総務公使主催昼食会 (前同)
 平成12年 2月4日  家重公使及び安藤公使との懇談
 会 場         ホテル
       同日   大使館主催夕食会 
 時 刻         18.30〜
 会 場         Occidental Grill
  大使館側出席者    八木参事官
(3) 外務省が主張した不開示事由
 前述のとおり、「答申書」(甲第3号証)によって、国会議員に対する便宜供与の一端が明らかになったのであるが、それまで外務省は、在外公館での議員接待の予定や事実などについては、一切開示を拒んできた。外務省のいうところによれば、これらの情報を開示することは、@議員個人の権利利益を害するおそれがある(5条1号)、A在外公館の業務遂行に著しい支障を生ずるおそれがある(同条6号)、などとして不開示を主張してきたものであった。外務省が情報公開審査会において主張した不開示の理由の詳細は次のとおりである。
 「諮問庁は、これらについて、公式日程以外の日程等に係るものであり、いずれも個人に関する情報であって、公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがあるとして、法5条1号に該当すると説明するほか、上記のうち臨時代理大使又は公使主催の夕食懇談会については、当該部分が公となれば、議員の訪問国での活動に一定の制約が生じ、ひいては、訪問国との関係増進を図るという外務省の外交目的の達成に資するべく国会議員の外国訪問の機会を充分に活用する手段が奪われることとなり、在外公館の業務遂行に著しい支障が生じるおそれがあるとし、法5条6号にも該当すると説明している。」という(甲第3号証13頁)。
(4) 開示を勧告した審査会の判断
 答申書は、訪問議員の公式日程はもとより公式日程以外の日程についても、公務性のあるものを区分し、その行動日程等は開示すべきであるとした。特に大使館側の懇談昼食会や夕食会は、大使館側にとっても、また訪問議員側にとっても公務に当たるとして、これらの情報の開示を相当と答申した。主要な判断事項は以下のとおりである。             
「当審査会において、上記の臨時代理大使等主催の夕食懇談会への本件国会議員の出席の公務性について諮問庁に確認したところ、諮問庁は、国会議員が公用旅券を持って出張している場合でも日程に含まれている行事がすべて国会議員の公務に当たるとは考えておらず、国会議員の公務に当たる部分は、便宜供与に係る当該議員の渡航目的に該当する会談等の行事に限られ、文書1についてみれば、超党派国会議員団の渡航目的は、同文書23頁に記載されている日米議員対話プログラム参加、フォーラムの出席及び大学での講演であるとしている。
 また、諮問庁は、法5条1号ただし書ハとの関係について、国会議員の職務遂行情報とは、便宜供与に関する公電に明記された渡航目的に関する行動の部分であり、したがって、本件国会議員と大使館員との懇談等については、当該渡航目的に該当するものではなく、滞在期間の限られている国会議員に対して、大使館側の都合によって同議員に時間を割いてもらい、ブリーフィングあるいは意見交換等を行っているものであって、同議員の側からみたとき職務遂行に当たるものとは言い難いとしている。
なお.当審査会において、諮問庁に確認したところ、上記の臨時代理大使等主催の夕食懇談会には、公費が支出されている。
 上記の諮問庁の説明からみて、臨時代理大使等主催の夕食懇談会においては、渡航目的に関する行動を含む様々な日程等に関する当該国会議員へのブリーフィング等が行われているものと認められる。
 したがって、上記の臨時代理大使等主催の夕食懇談会について、当該議員の渡航目的との関連性は否定できず、同議員の公務の一部とも言えるものであり、また、公費が支出されていることからみても、同議員の私的なものと解することはできず、当該懇談会に係る情報は、法5条1号ただし書イの法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されているものと認められる。
 また、国会議員の外国訪問に当たって上記のブリーフィング等は必要性が高い状況であることにかんがみれば、上記の臨時代理大使等主催の夕食懇談会の日程、場所について、これを公にしても、国会議員の訪問国での活動に一定の制約が生じ、ひいては、訪問国との関係増進を図るという外務省の外交目的の達成に資するべく同議員の外国訪問の機会を充分に活用する手段が奪われることになるとは認められず、よって、在外公館の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
 したがって、上記の臨時代理大使又は公使主催の夕食懇談会の日程、場所については、法5条6号に該当せず、同条1号ただし書きイに該当するものとして、開示すべきである。」(甲第3号証「答申書」13〜14頁)。
(5) 公費による議員接待の事実の確認
 外務省は、前述のとおり、審査会に対して、国会議員に対する「便宜供与」については、「公的用務を目的とした外国訪問に対して便宜供与を行うものであり、私的用務を目的とした外国訪問に対しては便宜供与を行わないという原則で対応していると説明した。」(同5頁)という。その上で、「本件国会議員と大使館員との懇談等については、当該渡航目的に該当するものではなく、滞在期間の限られている国会議員に対して、大使館側の都合によって同議員に時間を割いてもらい、ブリーフィングあるいは意見交換等を行っているものであって、同議員の側からみたとき職務遂行に当たるものとは言い難い」と主張した。このことは、外務省としては、訪問議員の活動の公務性を極力狭めることにより、国会議員と大使館側の懇談や食事会を私的な活動と位置づけることをねらったものである。しかし、当然のことながら、審査会はこの主張を排斥した。
 この審査会の答申によれば、大使、公使ら大使館側が主催する議員をもてなす昼食会や夕食会の費用は、外務省が支出する公費で賄われていることが明らかになった。即ち、同答申は、「当審査会において、諮問庁に確認したところ、上記の臨時代理大使等主催の夕食懇談会には、公費が支出されている」と認定しているところである(同13頁)。
 在外公館へ立ち寄った国会議員が飲食の伴った便宜供与を受けていることは、外務省が作成し、公表していた毎年の「便宜供与件数統計表」に相当数の食事供与回数が計上されていることや、公刊されている書籍等によって、よく知られていた事実であるが、具体的な接待事例が公的な機関によって確認されたのは、おそらく、今回が初めてと思われる。

6 本件不開示処分の違法性
(1) 原告の開示請求と被告の「存否応答拒否」
 本件は、原告が情報公開審査会の前記答申を受けて、前述のとおり平成18年4月13日、外務大臣に対して、「平成12年2月に木俣佳丈国会議員が訪米した際に、在米日本大使館が行ったすべての会食および供応に関する、支出証拠、計算証明に関する計算書等一切」の文書について公開請求を行ったが(甲第1号証の1、2)、被告は、同年6月20日付で、存否応答を拒否するとの不開示処分をなしてきたものである(甲第2号証「行政文書の開示請求に係る決定について」)。しかし、この処分の違法性は明らかである。
(2) 審査会の答申の趣旨も踏みにじる外務省の違法な処分
 支出決裁文書の存在は明白
 在米日本大使館が、平成12年2月4日に大使館側で木俣議員に対して飲食の伴う便宜供与を行ったことは、前述のとおり答申書(甲第3号証)で認定されている。そして、同答申で開示が拡大された「木俣佳丈議員御日程」(甲第5号証)の文書によって、八木参事官により、上記の2月4日、「Occidental Grill」で夕食会が開催されたことが明らかになった。公費が支出されていることも、同じく答申書で認定されている。したがって、これについての支出決裁文書やレストランの領収書等の文書が同大使館には保管されていないはずがない。
 夕食会開催の情報は既にすべて開示されている
 上述したように、大使館側と木俣議員との夕食会の日程や場所、参加者は既にすべて明らかになっている。そこで、外務省が、原告請求の文書を開示しても、大使館側の行動と議員側の行動日程等については、夕食会開催の事実以外には新しい情報は出てこない。また、会合の懇談等の内容の情報が記載されているわけでもない。したがって、外務省がいうように、「本件開示請求に係る行政文書の存否を答えるだけで、既に公になっている他の情報と相まって、個別具体的な外交活動及び事務に関する情報で、情報公開法第5条3号及び第6号に規定する不開示情報を開示することになるため、」という事態は生じ得ない。国会議員に対する接待の支出決裁文書の開示が、「国の安全が害されるおそれ……があると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」にあたり、また、外交活動等に関する事務の支障を来す情報に当たるなどということは、およそ考え難いことである。被告がいう、新たな「個別具体的な外交活動及び事務に関する情報で、情報公開法第5条3号及び第6号に規定する不開示情報」など存在する余地はない。
 「不開示」の理由は、既に答申書で排斥されている
 さきの情報公開審査会の答申は、大使館側と訪問議員との懇談や食事会等の接待の事実を明らかにしても、外務省の業務には何の支障も生じないとしていることは、前に見たとおりである。即ち、審査会は、「上記の臨時代理大使等主催の夕食懇談会の日程、場所について、これを公にしても、国会議員の訪問国での活動に一定の制約が生じ、ひいては、訪問国との関係増進を図るという外務省の外交目的の達成に資するべく同議員の外国訪問の機会を充分に活用する手段が奪われることになるとは認められず、よって、在外公館の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。」(甲第3号証「答申書」14頁。同旨の認定20頁)と明快に判断している。これに加えて、夕食会の費用額が公表されても、被告がいうような支障が生ずるはずはない。
(3) 外務省の憂慮はデタラメな報償費の使途の公開である
 外務省の憂慮は、これ以外のところにあるのである。原告が開示請求した文書には、支出した経費の費目が記載されているのである。「報償費」であれば、「報償費」との記載がある。このことは、過去に開示された同種の文書から明らかである。そこで、原告が請求した文書を開示すると、国会議員に対する飲食の伴った便宜供与の費用が報償費から支出されていることが明らかになってしまう。そうすると、「報償費は、外交工作や情報収集活動のためだけに使用している」旨の、今までの外務省の公式説明の嘘がばれてしまう。外務省の前記理不尽な措置は、このことを恐れてのことであると考える以外に説明が付かない。
(4) 進退窮まった外務省の措置
 原告の請求に応ずれば、これまでの報償費の支出について述べてきた嘘が白日の下になる。そこで、不開示にするとしても、本件行政文書が外務省に存在することは、如上の事情から明白であるから「不存在」とは言えず、また、これまでのように「不開示」と言いたくとも、既に、審査会の答申で事実上、排斥されているのであるから、不開示とも言えない。窮余の策が「存否応答拒否」ということになったのである。
 外務省のこの苦し紛れの対応は、これまでの長い間、国会議員ほかの諸氏に対して飲食の伴う便宜供与を行い、その費用を報償費で支弁してきたことを雄弁に語っているであろう。
 外務省のこの回答(不開示処分)は、嘘だらけの外務省の報償費の使用慣行を覆い隠すための法をねじ曲げた有りうべからざる違法行為であると断ずる外はない。
 よって、請求の趣旨記載の判決を求めるものである。

第3 立証方法
甲第1号証の1 「行政文書開示請求書」(平成18年4月13日付)
同 1号証の2 「行政文書開示請求書(補正)」(平成18年5月16日付)
同 2号証   「行政文書開示決定通知書」(平成18年6月20日付)
同 3号証   情報公開審査会答申書(平成17年8月25日付)
同 4号証   「行政文書の開示請求に係る決定について」(平成14年12月12日付)
同 5号証   「木俣佳丈議員ワシントン訪問御日程」

 添付書類
  訴状副本       1通
  甲号証写し     各1通
  訴訟委任状      1通
  資格証明書      1通

以 上


請求文書目録


平成12年2月に木俣佳丈国会議員が訪米した際に、在米日本大使館が行ったすべての会食および供応に関する、支出証拠、計算証明に関する計算書等一切の文書。


代 理 人 目 録


〒160−0003 東京都新宿区本塩町9 光丘四谷ビル6階
四谷見附法律事務所
TEL03−3356−0434 FAX03−3356−0414
弁  護  士    高  橋  利  明

〒101−0054 東京都千代田区神田錦町3丁目13番1号 矢浪ビル3階
堀 敏明法律事務所
TEL03−5282−7875 FAX03−5282−7874
弁  護  士   堀   敏 明

〒160−0003 東京都新宿区本塩町12 四谷ニューマンション309
さくら通り法律事務所
 TEL03−5363−9421 FAX03−5363−9856
 弁  護  士    清  水     勉

〒144−8570 東京都大田区蒲田5丁目15番8号 蒲田月村ビル4階
東京南部法律事務所
 TEL03−3736−1141 FAX03−3734−1584
弁  護   士 塚 原 英 治

〒190−0022 東京都立川市錦町1丁目17番5号 三多摩法律事務所
TEL042−524−4321 FAX042−524−4093
弁  護  士    土  橋     実

〒194−0022 東京都町田市森野1丁目8番17号
まちだ・さがみ総合法律事務所
TEL042−720−2626 FAX042−723−8943
弁  護  士    中  野  直  樹

〒104−0061 東京都中央区銀座4丁目9番6号 三原橋ビル7階
第一法律事務所
TEL03−3543−6851 FAX03−3543−6660
弁  護  士    羽  倉  佐 知 子

〒170−0013 東京都豊島区東池袋1丁目35番3号池袋センタービル2階
弁護士法人東京パブリック法律事務所
TEL03−5979−2900 FAX03−5979−2898
弁  護  士    児  玉  晃  一

〒105−0003 東京都港区西新橋1丁目20番3号
虎ノ門法曹ビル403号室
恵古・佃法律事務所
TEL03−3500−4162 FAX03−3500−4164
弁  護  士    佃     克  彦

〒105−0021 東京都港区東新橋1丁目2番7号 丸進ビル
脇田法律事務所
TEL03−3574−1379 FAX03−3289−1349
弁  護  士 脇 田 康 司

〒100−0006 東京都千代田区有楽町1丁目7番1号
 有楽町電気ビルヂング南館13階1356区
湊総合法律事務所
TEL03−3216−8021 FAX03−3216−8022
弁  護   士 湊 信 明

〒160−0004 東京都新宿区四谷2丁目9番 NK第7ビル6階
樫の木総合法律事務所
TEL03−5367−6780 FAX03−5367−6781
弁  護  士    関  口  正  人

〒102−0083 東京都千代田区麹町6丁目4番地 麹町ハイツ502
谷合周三法律事務所(送達場所)
TEL03−3512−3443 FAX03−3512−3444
弁  護  士   谷  合  周  三