情報公開市民センター
米大使館の「存否応答拒否」訴訟 概要と第3回口頭弁論(07.7.27)
1.訴訟の経緯
情報公開市民センターは、発足当初からの情報公開請求活動のなかで、米大使館の便宜供与ファイルの部分開示に対する異議申立をしており、外務省の引延ばしのため05年8月に出された情報公開審査会の答申にもとづいて06年6月に開示が拡大された便宜供与ファイル文書で、いくつかの議員との会食の日時・会食場所・参加者が具体的に明らかになった。
センターは06年4月に、米大使館が国会議員に行った会食および供応に関する文書について開示請求を行った。外務省は6月に支出決裁文書を「存否応答拒否」とするなど、不開示処分をした。
センターは12月14日に、これらの処分のうち、センターの主活動である東京高裁での報償費控訴審の対象期間に該当する「2000年2月木俣議員訪米時の会食の存否応答拒否」処分に絞って東京地裁に提訴した。
今年2月の第1回口頭弁論で、原告のセンターは地裁に早期結審を求め、大門裁判長は争点がシンプルであるとして、被告の外務省に早く反論を出すことを求めた。5月と7月の口頭弁論で結審となり、判決が9月20日に言い渡される。

2.センターが行った主張立証
(1) 審査会答申にもとづいて外務省が開示した日程表で、2月4日の会食の時間・場所・参加者が明らかになっている。
(2) 外務省の主張の大半は、外務省には公にしないことを前提とした外交活動が必要不可欠であり、公開できない情報を多く保有しているという一般論を展開するものに過ぎない。
(3) 存否応答拒否の処分のためには、文書が開示できない性質のものであることが必要であるが、この種の支出決裁文書の保秘性については何ら説明がない。
(4) 外務省が秘密にしたいのは、会食が報償費から支出されているという、支出費目なのである。
(5) 審査会の答申は外務省の主張を排斥し、次のように明確に判断した。「国会議員の外国訪問に当たってブリーフィング等は必要性が高い状況であることにかんがみれば、夕食懇談会の日程、場所について、これを公にしても、国会議員の訪問国での活動に一定の制約が生じ、ひいては、訪問国との関係増進を図るという外務省の外交目的の達成に資するべく同議員の外国訪問の機会を充分に活用する手段が奪われるとは認められず、よって、在外公館の事務の適正な遂行に支障を及ぼすとは認められない。したがって夕食懇談会の日程、場所については、法5条6号に該当せず。」
(6) 国会議員の海外渡航について国会で、河野外務大臣(01.3.9)および外務省飯村官房長(01.4.9)が次のように答弁している。「国会議員の渡航の目的は一般に要人との面談、施設・制度の勉強である。在外公館は時間があれば食事をして頂くのは重要である」「議員の本来の渡航目的いかんにかかわらず、必要に応じて便宜供与のサービスを行う」 また便宜供与に報償費が使われていることを事実上認めている。

3.第3回口頭弁論(07.7.27)の概要
(1) 外務省は7月13日付の準備書面(2)を提出陳述した。要旨は、@ 個人情報以外も存否応答拒否の対象となる、A 国会議員と在外公館職員との会合には公けにしないことを前提として行われるものがある、B 特定の会合に関する文書については存否を答えることができない、などである。
(2) センターは7月27日付の準備書面(2)と証拠を提出陳述した。要旨は上記2.(6)にもとづいて、@ 在外公館は国会議員に便宜供与の会食を提供するのが通常であること、A 議員の渡航中の活動はほとんど外務省の外交工作や情報収集活動と無関係であること、B会食は公知であり秘匿性はないこと、C議員との会食は報償費で行われていることを答弁で事実上認めていること、の主張立証である。
(3) 裁判所はセンターの準備書面について、もっと早く提出してほしかったとしたが、内容は新しいものでなく国会議事録の解説であるとして、これ以上双方の主張がないことを確認し、弁論を終結した。判決の言渡しは9月20日(木)1時15分、606法廷となった。


(鈴木祥宣 記)