情報公開市民センター
外務省「存否応答拒否」控訴審
第1回口頭弁論(07.12.11)の概要
 米大使館と国会議員との会食支出決裁文書の「存否応答拒否」処分を取り消す東京地裁の判決に対して、外務省は控訴した。第1回口頭弁論が行われ、控訴理由書に対する情報公開市民センターの答弁書に、控訴人の外務省が反論を準備するとして、審理が続行されることになった。裁判所は外務省に対して、本件議員のプロフィルと訪米に関する関連情報を明らかにするための求釈明を行った。
1.訴訟の経緯
 情報公開市民センターが行った、米大使館の便宜供与ファイルの部分開示に対する異議申立に対して、05年8月に情報公開審査会の答申が出され、答申に従って06年6月に開示が拡大された便宜供与ファイル文書で、いくつかの議員との会食の日時・会食場所・参加者が具体的に明らかになった。
 市民センターは06年4月に、米大使館が国会議員に行った会食および供応に関する文書について開示請求を行った。外務省は6月に支出決裁文書を「存否応答拒否」とするなど、不開示処分をした。
 市民センターは同年12月に、これらの処分のうち、市民センターが行っている東京高裁での報償費控訴審の対象期間に該当する「2000年2月木俣議員訪米時の会食の存否応答拒否」処分に絞って東京地裁に提訴し、判決が07年9月20日に言い渡され、市民センターが勝訴した。
 外務省は判決に対して控訴した。控訴審は報償費控訴審と同じく、民事第10部に係属することになった。
2.外務省の控訴理由書の要旨
 外務省は11月21日付で控訴理由書を提出した。要旨は次のようなものである。
1)国会議員と在外公館職員との間の会合には、公にしないことを前提として行われる場合がある。
2)不開示情報を前提とする存否応答拒否の判断には、行政機関の長に広い裁量が認められている。
3)本件開示請求は、特定の会合を名指ししたものであり、存否を答えるだけで不開示情報を開示することになる。
4)原審判決は存否応答拒否ができる場合を根拠もなく限定する誤りを犯している。
5)特定の会合についての開示請求がされた場合には存否応答拒否をすることが許される。
3.市民センターの答弁書の要旨
 被控訴人の市民センターは12月11日付で答弁書を提出した。要旨は次のようなものである。
1)大使館の本件議員との会食は、「公にしないことを前提」としていない。
2)本件会合の秘匿性について外務省はなんらの具体的な主張をしていない。
3)本件会食は明白に「便宜供与」である。
4)訪問国会議員との会食情報は平成14(2006)年度からはすべて開示されている。
5)本件会合や本件文書には秘匿性も保秘性もない。
4.第1回口頭弁論(07.12.11)の概要
(1)進行について
 裁判所が双方に進行についての意見を求め、外務省から市民センターの答弁書による主張に対する反論を検討したいと申し出があり、審理を続行することになった。
(2)裁判所からの求釈明
 裁判所は外務省に対して次の釈明を求めた。
1)平成12年2月当時の本件議員の所属会派(政党)
2)当時の本件議員の所属する国会委員会
3)当時の本件議員の訪米の日程、期間、用務
4)訪米の際の米国関係者との面談の予定の有無。有の場合、面談の対象者
 これらについて、明らかにするか否か。否の場合はそれで進行する。明らかにする場合は説明を行うこと。
 裁判所は、求釈明の趣旨について、@ 外務省の主張が抽象的で本件との具体的関係が分からないこと、A 外務省が他の関連情報との組み合わせの結果、秘匿情報が公開されるおそれがあると主張しているため、関連情報を明らかにすることを求めると説明した。
(3)次回期日
 次回期日は2008年2月12日(火)午前11時と決まった。

(鈴木祥宣 記)