平成19年(行コ)第345号 公文書非公開処分取消請求控訴事件

控訴人  国(処分行政庁 外務大臣)

被控訴人 特定非営利活動法人情報公開市民センター


準 備 書 面(1)

平成20年3月25日

東京高等裁判所民事第10部 御中


被控訴人代理人

弁護士  高  橋  利  明

 同   羽  倉  佐 知子

 同   土  橋     実

 同   谷  合  周  三


はじめに

 本準備書面は、控訴人の第2準備書面に対する反論書面である。控訴人のいうところは、在外公館員と訪問国会議員との会合・会食には秘匿性があり、また、同会合・会食は、外務省においては、「公にしない活動」と区分されてきたものであるから、支出決裁文書等には不開示該当性があるというものであるが、こうした判断は、情報公開審査会からも、また別件訴訟の東京高等裁判所からも排斥されたものであり、既に無効が明らかとなっているものである。


第1 被控訴人の主張と控訴人の反論

 被控訴人の答弁書の「第2の5」における主張と、この度(控訴人第2準備書面)の反論の概要は次のとおりである。

1 被控訴人の主張要旨

  被控訴人は、情報公開審査会の本件答申(甲第3号証)を踏まえ、また、河野外務大臣や飯村官房長らの国会答弁(甲第6,7号証)からすれば、平成13年度分までに行われた在外公館員と訪問国会議員との会食の実態は便宜供与にほかならないとした上、「在外公館と訪問国会議員との会食に係る経費の支出関係証拠書類等について、平成13年度分までは不開示であったが、同14年度分からは開示されるようになった。それは、以前は「報償費」から支出されていたのが、同14年度分からは「庁費」から支出されるように改められたからにほかならない。扱いが変わったのは、同種文書の秘匿性の性質やその有無によるのではなく、経費の支出科目が変わったからなのである。」(答弁書9頁)と主張した。


2 控訴人の反論

これに対して、控訴人は、「国会議員と我が国在外公館の職員との間の会合には、公にしても構わないものもあるが、外交工作・外交交渉の相手方に知られないように公にしないことを前提として行われる場合があることは厳然たる事実である。」(第2準備書面1〜2頁)などとし、「被控訴人の主張は、国会議員と我が国在外公館職員との間における会合のうち、公にしても構わないものと秘密裏に行われるものとを殊更に混同するものであって反論として意味をなさないと言わざるを得ない。……被控訴人答弁書第2の5の主張は、要は、一切の国会議員との会食には秘匿性がないから控訴人の主張は前提を欠くというものであると思われる。」としたのである(同2頁)。

そして、被控訴人の主張、即ち、「それまで「報償費」で賄ってきた国会議員に対する便宜供与の経費を「庁費」に移し、その支出決裁文書等は全面開示することとなった。そうした改善の結果、平成14年度からは、国会議員への便宜供与の支出決裁文書等は開示されるようになった」(被控訴人答弁書9頁)との指摘に対しては、国会議員との会食の経費を報償費で賄ってきたか否か、平成14年度以降「庁費」への移し替えの事実があったのか否かについては認否を避けながら、別件訴訟における齊木尚子証言を根拠として、「公にすることを前提とする便宜供与の活動であった場合にまで報償費から支出したことは、平成13年度以前も、平成14年度以降もない。」としたところである(同3頁)。

なお、「別件訴訟」とは、当事者は本件訴訟と同じで、原告が開示請求した在外公館等における報償費の支出決裁文書の不開示処分の取消請求控訴事件(平成18年(行コ)第99号事件)である。


第2 控訴人の主張の若干の整理

1 控訴人の主張は、今なお「公にする・公にしない」の2分法に基づいている

(1)こうした控訴人の答弁を整理すると次のようになるであろう。

  控訴人が「国会議員と我が国在外公館の職員との間の会合には、公にしても構わないものもあるが、外交工作・外交交渉の相手方に知られないように公にしないことを前提として行われる場合があることは厳然たる事実である。」(同1〜2頁)としているところからすれば、国会議員と我が国在外公館の職員との間の会合には、「公にすることを前提とした会合」と「公にしないことを前提とした会合」があるということを前提として、公にすることを前提とした便宜供与の活動であった場合には、過去、現在、報償費から支出したことはない、ということになろう。

(2)控訴人は、今回の準備書面(第2)では、「外交工作・外交交渉の相手方に知られないように公にしないことを前提として行われる」会合の秘匿性については改めての主張は存在しないが、控訴理由書では、「国会議員を介して行う外交工作、外交交渉が存在し、その準備のために在外公館職員との間で秘密裏に行われる会合がある」(同4頁〜)との項で主張がなされている。要するに、こうした会合が交渉の相手方に知られると、我が国国会議員の活動が、「所詮我が国外務当局の差し金で述べたにすぎないとの心証を有することとなる」とか(5頁)、相手方に「どのような外交工作活動を行っているかを知る手掛かりを与えることになる」とか、「我が国の情報収集活動に対する他国による妨害又は対抗措置が講じられるおそれもある。」と言い(以上同5頁)、また、「さらに言えば、信頼を損なうおそれがある」(同6頁)などとも主張しているところである。

  以上のところからしても、控訴人の主張の根底には、今なお、「公にする公にしない」の2分法が置かれているものと理解できる。


2 控訴人の秘匿性の主張も、2分法も既に無効である

  そこで問題は、本件木俣議員との会合を含む平成13年以前の在外公館員と国会議員との間の会合・会食が、果たして控訴人の主張するような秘匿性、密行性が必要とされる会合であったのか否か、そして、控訴人が今なお固執している「公にする公にしない」の2分法が不開示該当性の存否の判断基準として有効なのか、ということである。これらの点についての控訴人の主張が否定されるのであれば、本件木俣議員との会合・会食に係る支出決裁文書等の秘匿性が否定され、控訴人の処分の違法性も明らかになるということになる。

  控訴人の主張は、単なる言い抜けであったり、別件訴訟で排斥されているものであり、無効な主張であることは明白である。以下、項を改めて順次反論を行う。


第3 在外公館員と国会議員との会合・会食の実態

1 本件木俣議員との会合の秘匿性は存在しない

  原告・被控訴人が、本件文書の開示請求を行う契機となった情報公開審査会の答申は、在外公館員と国会議員との会合・会食の情報について、不開示該当性が存在しないことを明確に認めている。既に訴状で主張したところであるから、詳述は避けるが、主たる判断を示せば次の通りである。

    「国会議員の外国訪問に当たって上記のブリーフィング等は必要性が高い状況であることにかんがみれば、上記の臨時代理大使等主催の夕食懇談会の日程、場所について、これを公にしても、国会議員の訪問国での活動に一定の制約が生じ、ひいては、訪問国との関係増進を図るという外務省の外交目的の達成に資するべく同議員の外国訪問の機会を充分に活用する手段が奪われることになるとは認められず、よって、在外公館の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。」(甲第3号証14頁)


2 国会答弁等でも報償費による便宜供与を認める

(1)控訴人は、別件訴訟における齊木証言(乙第6号証)を根拠として、「公にすることを前提とする便宜供与の活動であった場合にまで報償費から支出したことは、平成13年度以前も、平成14年度以降もない。」とするのであるが、在外公館員と国会議員との会合・会食の実態は、まさに便宜供与そのものであった。以下に、この点について点検を行う。

  控訴人は、在外公館員と国会議員との会合・会食は、まさに便宜供与そのものであると主張してきた(被控訴人答弁書8〜10頁)。即ち、同会合・会食は、「お時間があれば食事をしていただく」(甲6号証 河野大臣)とか、「渡航の本来の目的いかんにかかわらず、必要に応じて私ども連絡を取らせていただき、必要な便宜供与を行わせていただく」(甲7号証 飯村官房長)というようなものであったのである。在外公館員と国会議員との間の会合・会食の実態がこのようなものであれば、在外公館が国会議員を道具に使って外務省の外交目的を達するなどというものとは、およそ無縁のものというべきである。

(2)飯村官房長の先の答弁は、「外務省の報償費につきましては、まことに恐縮でございますけれども、具体的な使途を公表しないということでございますのでご説明を差し控えさせていただきたいと存じますけれども、国会議員の皆様方が海外に私的な目的でお出かけの際には、私ども在外公館においては原則として便宜供与は行っていないわけでございます。」(甲10号証 10頁)とはじまるのである。したがって、飯村官房長の答弁する「渡航の本来の目的いかんにかかわらず、必要に応じて私ども連絡を取らせていただき、必要な便宜供与を行わせていただく」という便宜供与が、報償費で賄われていることは一点の疑いもない。

そしてさらに、控訴人は、上記のような被控訴人の主張については、まったく認否も反論もしていない。したがって、こうした事実については「明らかに争わない」ということになろう。


3 外務省の統計でも国会議員に対しては多くの便宜供与会食が行われている

(1)「平成11年便宜供与件数統計表」から

毎年、在外公館で会食の伴った国会議員に対する便宜供与が多数行われていたことは、外務省が過去毎年公表していた「○○年便宜供与件数統計表」の統計実績から明らかである。例えば、「平成11年便宜供与件数統計表」(甲12号証)から国会議員関係の便宜供与の数を拾い出すと、便宜供与で取り扱った「議員件数」は1655件、国会議員の「取扱総人数」は2881人、「国会議員延人数」は8716人となっている。1年間に行われた「食事回数」は1万4303回となっているが、国会議員に対して行われた回数は明らかにされていない。しかし、在外公館員が必ず対応する食事(会食)の提供は、在外公館側としても手間も時間もかかる最も面倒な仕事であるから、邦人の誰にでも提供されているサービスとは考えられず、国会議員に対して提供されたものが高い比率を占めると考えるのが合理的である。

(2)符合する外務大臣の国会答弁

  この「便宜供与件数統計表」の記録をこのように理解することは、河野外務大臣や飯村官房長の国会答弁内容にも極めてよく整合する。海外渡航した国会議員に対して便宜供与が行われる機会が非常に多いことが推認できる。

そして、平成14年以降は、外務省から「議員外交支援の実績」(甲第10号証)という統計表が公表されているが、それによれば、平成14年の支援件数は延べ人数で「9908人」であったとされる。このように国会議員への便宜供与の提供は活発に行われているのである。こうした事実からしても、在外公館における国会議員への食事等の提供のほとんどは便宜供与であると推認できる。控訴人は、「国会議員と我が国在外公館の職員との間の会合には、公にしても構わないものもあるが、外交工作・外交交渉の相手方に知られないように公にしないことを前提として行われる場合があることは厳然たる事実である。」というが、後者の「外交工作・外交交渉の相手方に知られないように公にしないことを前提として行われる場合」などは、およそ千に一つ、万に一つの話であろう。仮にそうした活動が少なくない数に上るというのであれば、それを具体的に主張すればよいのに、「行われる場合がある」とするだけである。

(3)控訴人の主張も便宜供与を認めるものである

  控訴人は、一方で、「公にすることを前提とする便宜供与の活動であった場合にまで報償費から支出したことは、平成13年度以前も、平成14年度以降もない。」としている(同3頁)。この主張あるいは斎木証言は、常識的に見れば河野外務大臣や飯村官房長の国会答弁を否定するものと見えるが、そうではなく、むしろ外務官僚らの一流の非常識な論理で、国会答弁との整合を図った狡猾な答弁なのである。即ち、本件訴訟の被告関係者らは、「公にしない活動」に報償費を使用してきたと主張してきた。それは転じて、「報償費で賄う活動」は「公にしない活動だ」ということになっている。そうした訴訟関係者の論理からすれば、在外公館員と国会議員との会合・会食という業務は、その実情や実態とは無関係に「公にしない活動」だということになる。河野外務大臣らが国会答弁してきた国会議員に対する便宜供与は、本件訴訟関係者の論理では、「公にしない活動」であるから、彼等の論理からすれば、「公にすることを前提とする便宜供与の活動であった場合にまで報償費から支出したことは、平成13年度以前も、平成14年度以降もない。」ということになる。彼等なりの屁理屈としては筋が通っているのである。控訴人の主張は、平成13年以前の国会議員に対する会食の提供が便宜供与であることを争わず、ただそれは「公にしない活動」であるという一点に固執しての答弁なのである。

(4)控訴人の2分法は別件訴訟で排斥されている

  ところで、外務省側が展開している前記の屁理屈は、「公にする公にしないの2分法」を前提とするものであるが、別件訴訟の高裁判決は、この2分法を完膚なきまでに批判している。即ち、「公にする公にしないの2分法は、判断基準が明らかではなく、また、判断権者が誰であるのかも不明であるから、客観的基準になり得ず、仮にこれに従うこととすれば、それは行政機関の判断を追認する結果にならざるを得なくなり、さらに、上記の在外公館交流諸費の支出及びその支出証拠書類の開示の結果と報償費の支出との対比や行政機関が会合の経費等を支出する際の予算科目の規律等からすると、報償費の支出状況が控訴人主張のとおりであるとはにわかに認めがたく、加えて、不開示決定の適否は、情報公開法5条所定の不開示情報の存否によって判断すべきであることからすると、控訴人の上記主張は採用することができない。」(同39頁)と、控訴人の主張を否定、排斥しているところである。したがって、かかる2分法を前提にした控訴人の主張は成り立つはずもない。

  それだけでなく、別件訴訟では、「在外公館員と邦人政府関係者との会合」の秘匿性自体が否定されているのである。


第4 「在外公館員と邦人政府関係者との会合」の秘匿性は高裁判決で否定されている

1 在外公館員と国会議員との会合の秘匿性に関する控訴人の主張

  控訴人は、「国会議員と我が国在外公館の職員との間の会合には、公にしても構わないものもあるが、外交工作・外交交渉の相手方に知られないように公にしないことを前提として行われる場合があることは厳然たる事実である。」などと主張していることは、前にみたとおりである。そして、控訴理由書では、「国会議員を介して行う外交工作、外交交渉が存在し、その準備のために在外公館職員との間で秘密裏に行われる会合がある」(同4頁〜)との主張を縷々行っていることも前にみたとおりである。

  齋木尚子氏が証人として出廷した別件の情報公開請求訴訟においても、「在外公館員と国会議員との会合・会食」情報の秘匿性や、さらに広く「在外公館員と邦人政府関係者との会合・会食」等の情報の秘匿性が争われた。

  控訴人は、上記の訴訟の控訴審においても、本件訴訟に於けると同様の主張を展開して、それらの会合の支出決裁文書等には不開示該当性があるとして争ったのである。しかし、別件訴訟の高裁判決は、「在外公館員と我が国関係者との会合」に係る情報については、それらを秘匿すべき理由はないとして、外務省の主張を排斥しているのである。同高裁判決の判示における外務省側の主張と、これを排斥した判断部分は次のとおりである。


2 外務大臣の主張を排斥した東京高裁判決の判示

(1)前記の東京高裁は、以下のように判示している(同判決50頁)。

「控訴人は、他の公開された情報と照合することにより、在外公館員と我が国関係者との会合が明らかになると、当該関係者が在外公館のだれと、どこで準備又は検討を行っているかが明らかになり、そうした個々の準備等の傾向を分析することにより、この種の活動に関する情報を収集することが可能となり、じ後、この種の活動を円滑に遂行することが困難になる事態が懸念され、また、国会議員の訪問の機会にこのような準備を行っていることをもって、訪問国が、当該国会議員の発言を我が国政府のさしがねで行ったものと誤解し、不快に感じる懸念も生じるなどと主張する。

  しかしながら、我が国関係者が他国を訪問し、その際、在外公館員と訪問国の諸情勢について意見交換等のために会合を持つことは外交事務の遂行上ごく自然なことと考えられ(その会合の経費を予算科目のいずれから支出するかは別の問題である。)、訪問国もそのような会合が自国において開催されることは当然想定しているところであると認められる。このことは、日本を訪問した他国の政府関係者が自国の在日大使館員と会合を持ったとしてもごく当たり前のことであることからも明らかである。」(50頁)。

(2)同高裁判決は、このように判断を示した上、齊木証言、即ち、「他国を訪問した国会議員と会合を持った上で当該国会議員を重要な外交上の道具としてその訪問の機会を活用して外交上の成果を上げたことがあり、これらのことが公になれば当該国会議員の発言等が我が国政府のさしがねによるものであると訪問国が誤解するなどして外交工作が奏功しないようになる。」などとした供述については、「合理的な説明とはいえない」(同50頁)と排斥したのである。

前記高判決の判断は正当であり、この例からすれば、本件における控訴人の主張も当然に排斥されることになる。


第5 「会食の伴った国会議員への便宜供与」は平成13年までは開示されたことはない

1 「平成13年以前に国会議員の便宜供与を開示している」は虚偽である

  控訴人は、被控訴人が「在外公館と訪問国会議員との会食に係る経費の支出関係証拠書類等について、平成13年度分までは不開示であったが、同14年度分からは開示されるようになった。」(答弁書10頁)と主張したことに対しては、「便宜供与として行われていた在外公館の活動の経費の支出を伴った場合、特定の支出科目が存在するわけではなく、実施される便宜供与の内容に応じて適切な科目から支出し、それに係る文書の開示請求がなされれば、平成13年度以前の文書であれ平成14年度以降の文書であれ開示に応じている。これは、平成14年度以降新たに開示に応じる取り扱いに変更されたという事実もなければ、何らかの改善の結果でもない。」(3頁)と反論している。

上記の控訴人の答弁で、「便宜供与として行われていた在外公館の活動の経費の支出」について、「平成13年度以前の文書であれ平成14年度以降の文書であれ開示に応じている。これは、平成14年度以降新たに開示に応じる取り扱いに変更されたという事実もなければ、何らかの改善の結果でもない。」としたことは明らかに嘘の答弁である。


2 控訴人の主張を裏付ける資料は皆無である

(1)被控訴人は、答弁書において、国会議員に対する便宜供与に係る支出決裁文書についての平成14年度以降の開示状況について具体的に主張し(答弁書8〜9頁)、その一例として、「浜田靖一衆議院議員との捕鯨問題等についての意見・情報交換」と題された会合の例を挙げ、会食の場所となったレストランの領収書も証拠(甲第9号証の1,2)として提出した。平成14年度以降は、上述の便宜供与経費の支出は「要人外国訪問支援関連」(庁費)からの支出で、多数の国会議員との会食の支出が開示されているのである。

(2)一方、平成13年度以前においても、在外公館においては、国会議員に対して会食の伴った多数の便宜供与が行われており、その経費は報償費から支弁されていたことは、前述のとおり、河野外務大臣や飯村官房長の国会答弁、そして外務省が毎年作成してきた「便宜供与件数統計表」の記録から明らかであることころ、そうした便宜供与に係る支出決裁文書は、同13年以前は一度も開示が為されたことがないのである。

(3)控訴人は、国会議員との会食支出の事例として、「大島経済産業副大臣一行との愛知万博開催に関する意見交換」を開示してきたというが、同案件は、「国会議員に対する便宜供与」の事例ではなく、行政関連職員との会合(この種の会合に「交際費」を使用したことは違法の疑いがあるが、ここでは問わない)であり、国会議員に対する便宜供与として扱われていないものである。むしろ控訴人が、このような事例しか提出できないということは、控訴人の前述の主張の虚偽性を示すものである。

(4)現実には、平成13年度以前と以後において国会議員との会食の経費の支出科目が変更され、この便宜供与の支出科目が庁費に移し替えられたことにより、開示が大きく改善された事実が存在することを示すものである。

控訴人は、平成13年以前においても、国会議員との「公にしても構わない会合」が存在したと主張するがそれを立証できず、被控訴人の調査でも開示された文書には国会議員との便宜供与たる会合・会食の開示案件は存在していないのである。