中央省庁会計監査体制ランキング(2004年)
2004年9月



− 目次 −
1. はじめに

2. 調査の方法

3.評価方法と基準

4.ランキングの結果と講評
1位 厚生労働省、2位 財務省、3位 環境省
最下位 外務省、警察庁
失格 内閣官房、内閣府

5.総評 監査の実効性は不十分

6.おわりに

提言

別表1 中央省庁会計監査開示文書一覧

別表2 中央省庁会計監査体制ランキング評価表(2004年)

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中央省庁会計監査体制ランキング(2004年)
1.はじめに
 官庁における組織的とも思える裏金つくりや業者との癒着による不正行為、経費の無駄遣いの記事が後を絶たない。財政再建が叫ばれ、国民の負担が強化される中にあっても相変わらずである。国の予算が適正かつ経済的・効率的・効果的に執行されるべきことは当然のことであり、その実行状況を検査するために憲法上の機関として会計検査院が設置されている。また各省庁はその組織令(政令)で会計監査をすることが規定されている。当センターはこの組織令による会計監査制度が有効に働いて効果をあげているかについて、情報公開制度を通じて評価することにして、結果を省庁別にランキングし問題点を明確にすることとした。
 この評価にあたって会計検査院が平成13年度決算検査報告書において、「第4章 特定検査対象に関する検査状況 第16 国の機関が内部監査として実施する会計監査の状況について」報告した文書(以下会計検査院報告書)を参考にした。会計検査院は各省庁の監査体制についての調査を行ったが省庁ごとの評価は発表していない。当センターは独自の方法で各省庁の監査の実効性を個別に評価するものである。
参考:省庁における会計監査について
 根拠法令 各省組織令(政令)例:総務省組織令第3条9 総務省の所掌に係る経費及び収入の予算、決算および会計ならびに会計の監査に関すること。
 監査組織 多くの省庁は監査規程を作成、監査責任者を会計課長とし、会計課内に監査室あるいは監査係を設け主管させている。監査の実務は監査担当者のほか会計課員が行っている。
 監査の目的 各省庁監査規程で定める。予算の適正執行・会計事務の適正執行など
 実地監査 主として出先機関の会計部署に行っており、会計事務の指導を兼ねている
 監査報告 実地監査報告書は会計課長に報告されている。年次報告書もほぼ同様。
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2.調査の方法
(1)本年4月に下記の文書を15省庁に開示請求した。
大臣官房会計課が担当する会計監査について
@ 目的、対象、方法、報告等について定めた監査規程
A マニュアル、チェックリスト
大臣官房会計課が平成15年度に実施した会計監査について
@ 方針、重点項目、対象の選定などを記載した監査計画書
A 実地監査報告書及び年次監査報告書
B 監査の結果、是正や改善を指示した文書
請求した省庁
内閣官房、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛庁、警察庁、会計検査院
(2)実地監査報告書は殆どの省庁で大量になるので、一部を抽出して複写を請求し評価に利用した。
(3)資料の入手状況(別表1)
 厚生労働省からは7種の請求文書をすべて入手できたが、内閣官房と内閣府からは「全文書不存在」の回答で、まったく入手できなかった。そして外務省は「監査計画」だけしか開示しなかった。その他11省庁は開示の程度にばらつきがあった。その開示状況は別表1「中央省庁会計監査開示文書一覧」記載のとおりである。
(4)「監査」の定義と記録について
 「監査」とは、「監察的見地から、事務または事業の執行または財産の状況の正否を調べ、事実を正確に把握し、その事実に基づき評価、判断を加えること」である。すなわち書類を表面的に見て瑕疵があるかないかを確認するに止まらず、その一部を抉り精査してその背景に不正や不経済、非効率などの問題点がないかを問うものでなければならない。監査は監査事項、方法、その結果及び指摘、注意、指導を行ったものは記録に留められ活用されるべきである。それゆえに記録のないものは監査したとはいえない。
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3.評価方法と基準
(1) 監査のサークルとそれに対応する評価項目を以下のように設定した。
監査のサークル 評価項目下線は開示請求文書名)
監査体制の確立 組織の独立性・監査規程の充実度・監査目的の明示
(1) 実施計画の作成 監査計画書の充実度
・重点的監査対象項目の設定 重点項目の設定の有無
・監査項目チェックリストの準備 チェックリストの充実度
(2) 監査の実施 実地監査対象部門の範囲
(3) 結果報告 実地監査報告書年次監査報告書の充実度
(4) 指摘・是正事項フォローアップ 改善指示書監査指摘・指導事項周知文書の充実度
(2)評価項目と観点は下記の通り。配点は100点満点とし、各項目ごとに配賦した。
 評価にあたっては文書の不存在・不開示では評価が不能であり、いずれも0点とした。
詳細の配点は別表2を参照下さい。
a. 監査体制(15点)
組織の独立性 監査の客観性を確保し、公正・公平に監査するために会計実行部門とは独立した少なくとも課レベルの組織によること
監査規程の充実度 省訓令レベルで監査の目的、実施方法、是正指示等が規定されていること
監査の目的 会計事務の範囲にとどまらず、予算の執行についても適法性はもとより、経済性、効率性、効果の観点から監査し、事業・事務の改善に寄与することなどが明示されていること
b. 監査計画(20点)
重点項目の設定 監査が前例を踏襲し形式的に行われるのではなく、毎年重点項目を定めて行われていること。とりわけ「契約」については、談合や業者との癒着など問題になることも多いので重点項目に含めていること
チェックリスト/マニュアルの充実度 多くの項目をもれなく検証するためには不可欠。よく整備されていること
c. 実地監査(30点) 現場に赴き実地確認をして監査していること
監査対象部門 予算の執行にかかわるすべての部局、機関を対象にしていること
実地監査報告書 実地監査の結果をまとめ、指摘事項、注意事項、指導事項などをわかりやすく整理してあること
d. 監査報告書(15点) 年次または定期的に監査の結果をまとめ、是正あるいは仕組みの見直し、注意などの報告書が作成されていること
e. フォロー(20点) 監査の結果が有効に活用されていること
改善指示書 指摘を受けた部門に期日を切って改善指示書の提出を求めていること
周知徹底文書 各部門には監査で明らかになった問題点を知らせ、見直しと改善を促す文書を出していること
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4.ランキングの結果と講評
 1位は厚生労働省、2位財務省、3位環境省。最下位は外務省・警察庁、失格は内閣官房、内閣府。
ランキング 省庁名 合計
100点満点
1 厚生労働省 85
2 財務省 80
3 環境省 75
4 防衛庁 70
5 経済産業省 65
5 文部科学省 65
7 農林水産省 63
8 総務省 60
9 会計検査院 35
10 法務省 33
11 国土交通省 28
12 外務省 18
12 警察庁 18
失格 内閣官房 0
失格 内閣府 0
1位 厚生労働省(85点)
 同省は、請求した7種の文書がすべて存在し、いずれも開示した。監査規程、監査計画、チェックリストによって、同省がどのように監査をやるのかが理解できるし、実地監査報告書、年次監査報告書、改善指示書からどのような監査をやり、どのような指摘を行ったか、また改善指示を行ったことがわかる。さらに監査結果を省内に周知徹底させている事実によって、監査のサークルが回されていることが確認できる。これが高得点となった理由である。監査報告書も事例を挙げ具体的に問題点を指摘しており、契約に関する事項についても入札の公正の確保を特に強く指摘している。
 例えば具体的な建物設備工事で、1千万円を超える工事等では低入札価格調査基準額を定めるべきであるのにこれを明記せずに入札を執行した事実を指摘して改善を求めている。調査した限りでは、監査の指摘はいずれも具体的で要を得た記述が認められた。
 しかしながら最近発覚した社会保険庁における業者との癒着や広島労働局における裏金作りなどの不正が見逃されている。監査システムの充実が不正防止に効果を発揮することを期待する。
2位 財務省(80点)
 改善指示事項がないため改善指示書を除く6文書が開示された。実地監査報告書には総評に続いて注意事項、指導事項がまとめられ見やすくなっており、末尾に「監査結果の評点」が項目単位に評点、5段階の評定ランク、評定者の氏名が明示されている。また各部局出先機関に対し監査指導事項が送付され、改善に資するよう徹底されている。
3位 環境省(75点)
 改善指示書を除く6文書が開示された。小規模の省庁ではあるが全部局にわたって実地監査している。また指摘、指導事項について全省の担当者会議において周知徹底を図っていることも適切なフォローと認められる。
4位 防衛庁(70点)
 改善指示書、周知文書を除いて5文書が開示された。防衛庁の評点が比較的よいのは、監査組織が全省庁で唯一、会計部門から独立している政策評価監査課であること、また監査対象機関が全庁、全部局に及んでいることである。事務次官名で通達された監査重点項目にも契約事項を取り上げ、契約本部をはじめ陸海空自衛隊の現場において実地監査している。しかし報告書での指導事項の記載は抽象的であり、わかりにくい。機密との関係もあろうが、できるだけ具体的に記載し、何を改善すべきか明確にするべきであろう。本年4月より監査組織が格下げになり、政策評価監査官が担当するようになった。従来どおり独立性を堅持し、客観的で公正な監査を貫かれるように期待する。
5位 経済産業省(65点)
 監査規程、監査計画、監査報告書および改善指示書を開示。監査要領(マニュアル・チェックリスト)および実地監査報告書については情報公開法5条5号および6号を理由に不開示とした。年次監査報告書の記載にあたって「特別に意見する」「改善を要するものとして指摘する」「注意を要する」「掲記を要する」など問題点のレベルが良くわかるようになっている。たび重ねての指摘事項について厳しく改善を迫っているのは他の省庁にはない迫力である。タクシーの利用管理に関して利用券の発行日外利用には不正使用のおそれがあると指摘している。
 監査要領と実地監査報告書の不開示の理由はチェックポイントが知られることにより正確な事実の把握を困難にするおそれや監査人と監査対象者との自由な意見交換が阻害されるおそれなどがあるとの理由だが、法が想定しているのは「外部団体や事業者に対する検査や監査」であり、官庁内部に対する監査に適用しての不開示は不当である。
5位 文部科学省(65点)
 5文書が開示された。年次監査報告書は規程にないということで不存在。周知文書は作成されていない。大学に対する監査では研究補助金や外部資金の管理運用状況について重点的に行われ、注意・指導事項が記載されている。監査担当者が指摘事項についての改善措置や実績までもフォローする責任を負っているのもよい。指摘事項に対比して改善状況または部局の意見が記載されているのはわかりやすいが、改善すべき側の責任部門・者の記名がなく、すべて監査側の担当者名で記載されている。改善実施についての責任を明確にするためにも記名するべきであろう。
 給与や旅費に関する項目に限られるが、本省各部局に対する実地監査も実施されている。
7位 農林水産省(63点)
 改善指示書を除く6文書が開示された。実地監査はチェックリストに基づいて行われ、監査報告書には指導および注意事項を記載する欄はあるが、指摘事項については記載するようになっていない。初めから指摘事項はないことにしている。閲覧した範囲では記載されているのは軽微な指導、注意事項のみであり、形式的な事務調査レベルにとどまっている。また実地監査は出先機関に限られており、本省については会計課にも実施されていない。出先機関における注意、指導事項については関係部局を通じて周知徹底が図られている。
8位 総務省(60点)
 フォローアップ文書を除く5文書が開示された。監査計画には基本方針、重点監査項目の選定など適切に表現されている。調達の適正化による費用削減に加えて、経費の削減の取り組みも評価しようとしているのは、他の省庁の模範となるものである。出先機関での実地監査ではいくつかの指導事項も見られる。
 残念なのは実地監査が出先機関に限られ、本省各部局に及んでいない。監査組織は自立度の低い監査係であり、監査要綱も会計課長通達で、監査報告書が会計課の内部文書にとどまっている。
 年次監査報告書に書面監査を行い指摘事項があったことが記載されている唯一の省庁である。
 総務省は行政改革推進の担当省でもあり、内部監査の充実も改革推進の重要施策になるので、監査体制の一層の充実を期待したい。
9位 会計検査院(35点)
 監査規程、監査計画、チェックリスト、実地監査報告書の4文書が開示された。監査報告書は研修所に対する実地監査報告書のみであり、指摘事項はない。年次監査報告書も作成されていない。監査規程は会計課長による「実施要領」である。本院各部局に対する実地監査もない。「小さい組織ながら精一杯のことをやっており、また本院については日常的に審査しており監査の必要がない」との説明もあったが、会計検査院報告書に示唆している「望ましい会計監査」とはあまりにも乖離がある。各省庁との規模、性格の違いはあるとしても、あるべき内部監査体制の構築について自らも努力することを期待したい。
10位 法務省(33点)
 開示されたのは監査計画書と実地監査報告書のみである。監査規程は未制定である。計画書は監査先と日程のみである。実地監査は総じて実証的な調査が行われており、契約等では具体的な案件ごとに聞き取って書き込むようになっており、法務省らしい几帳面さが現れている。いくつかの適切な指導事項も見受けられる。しかしながらすべてここでとまっている。実地監査を踏まえ、共通する問題点についてのまとめもなく、年次監査報告書の作成もない。指摘事項を各部署に周知させ、改善を指示する文書もない。監査規程の制定、本省部局監査の実施、年次報告書の作成、改善指示等を明確にして監査システムを構築することを期待する。
11位 国土交通省(28点)
 開示されたのは監査規程(会計規則に会計課長の監査権限が規定されている)、監査計画書と出先機関に対する実地監査報告書のみである。基本計画では監査の目的として「所管予算の適正かつ効率的な執行を図る…」と記載されているが、公共工事の総本山であるにもかかわらず調達契約事項が重点項目に取り上げられていない。実地監査はチェックシートで行われているが、契約に関する項目は他省に比べても事務的なものであり、指摘、指導事項の記載はない。チェックシートに「○」とか「△」の記号を付した書面がそのまま監査報告書とされている。例えば関東整備局での監査では「随意契約の処理は正しいか」というチェック項目について、書類監査を行ったことが示されているが、その「監査結果評定」の欄には、単に「○」としか表記されていない。担当者は監査結果の評定は「合格」という意味なのであろうが、具体的な状況は全くわからない。記述式で示す欄も存在しているが、そのほとんどは空白である。その上、「総評」もなく指導事項もまとめられていない。1年間に72箇所もの実地監査が行われているが、結果をまとめた年次報告書も作成されず、指導事項の普及文書も作成されていない。旧運輸省は会計課監査室が、旧建設省は会計課公共事業予算執行管理室が監査しており、チェックシートこそ共用しているものの、監査担当者の交流もほとんどなく、省として一体となって監査しているとは見えない。本省各部局はもとより会計課に対する実地監査も行われていない。膨大な予算を担当し、特に透明性の高い予算の執行が求められる省としては、新たな体制を構築し、実のある監査を早急に実施するよう強く望む。
12位 外務省(18点)
 開示されたのは「会計監査の実施に係る基本方針」、「出納室への内部監査実施結果報告」「会計監査項目チェックポイント」の3文書である。しかしながら、基本方針では「実施要領」が、報告書では「監査方法、総評、監査評価」が、チェックポイントでは「本文」が情報公開法第5条6号を理由に不開示であり、監査の内容を評価することができない。実地監査の結果指摘事項もあったようで、6ヶ月後のフォローも指示しているなど、監査のサークルを回す仕掛けはできているように思われる。従来、会計監査は行われていなかった模様で、外務省改革の一環でようやく実施することになった。外務省改革は国民の要求であり、内部監査の実施もその施策の1つであるならば、情報開示を行い国民の信頼を高めるべきである。
12位 警察庁(18点)
 開示されたのは監査規程(会計細則の一部)、監査計画書と実地監査報告書のみであり、監査項目チェックリスト、年次監査報告書、改善指示文書等は不存在である。計画書には監査先と日程のみ記載され、重点項目の設定などはない。実地監査は各県警本部に対して実施されており、報告書はA4既定用紙1枚限りである。そこには旅費、財産物品、契約、補助金、歳入、捜査費などの項目について監査結果がAとかBとかCとかの記号で記載されているのみである。この記号は監査官の評価を示しているのであろうが、その判定の基準を示す資料は開示されていない。このような開示状況であるから、どのような事項をどのように監査し、どんな指摘をしたのか全く判らない。
 特に問題となっている捜査費については書類審査と対面監査が行われていることはわかるが内容はわからない。対面監査は質問に対して回答者が歯切れよく返答するかどうかで評価されている模様である。
 警察における組織的な裏金つくりは長年にわたり行われてきた不正であるが、監査において指摘されず、また防止もされていない。今までの監査がいかに形骸化しているかの証拠であろう。
 本年度から警察庁の会計監査体制は一新され、長官が監査責任者となり実施され、結果は国家公安委員会に報告されることになった。長官は自ら指導性を発揮し、悪弊を正す監査を実施されたい。
 また国家公安委員会は警察に対する国民の信頼を回復するためにも警察を管理監督する責務を全うされたい。
失格 内閣官房、内閣府
 両者とも請求したどの文書も作成しておらず、すべて不存在である。すなわち監査を実施していないということである。「すべての書類は慎重に審査しており、日々監査しているのと同じである」との説明もあったが、監査組織が、監察の意識をもって精査し指摘事項を記録していないものは監査ではない。会計検査院の示唆も同様である。両官庁に監査の実体がないことを責任者である総理大臣、官房長官は認識して早急に組織令に定める会計監査を実施するよう指示されたい。
附・外務省在外公館査察制度の評価
 外務省改革の柱の一つとして強化された在外公館に対する査察制度について同様な文書の開示を求めたが、計画書の査察先、日程、査察使氏名と報告書の表紙のみが開示された。査察項目や結果については一切不開示であり、評価することが出来ない。不開示の理由は、外交上の機密や公館の安全情報が含まれているとしている。開示された範囲から察するとかなり精力的な査察が行われ、指摘事項もあり改善指示や周知徹底も図られていることのようである。査察報告書の不開示については情報公開審査会でも上記開示部分を除き承認されたとしている。大問題になった在外公館における乱脈経理の実態がどのように監査され、その結果どのように改革され再発が防止できるようになったのか、を開示することは国民に対する義務ではないか。
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5.総評  監査の実効性は不十分
 最高点を取った厚生労働省で社会保険庁での発注契約をめぐる特定取引先との癒着による随意契約や広島労働局における裏金作りなどが発覚した。また警察庁がきびしく監査しているはずの全国の県警本部では捜査費の不正使用が横行している。農林水産省では出張旅費の横領が刑事事件になっている。いずれも長期にわたって繰り返されている違法行為である。しかし契約や捜査費、出張旅費の受払いについて監査していながら、監査報告書にはこのような事実が把握されたような記載はない。すなわち不正を摘発したり予防したりする機能は発揮されておらず、実効性が十分あるとは認められない。
 以下にその原因を体制、実態から考察する。
(1)監査組織の自立性が低く、監査に厳しさが欠ける。
 各省庁の監査部門は防衛庁を除き会計課の内部組織である。多くは「室」に課長補佐クラス以上の会計監査官を配置し、ある程度の自立性を確保している、としている。自立性がさらに低い会計課の係や専任担当者にとどまっているところもある。会計に精通している職員の数が不足していることや多くの事業所を監査するときに実務部門の職員を動員することができるとか、情報が共有できるとかのメリットが強調されているが、本来監査は客観性が重要であり、馴れ合いにならない厳しさが必要である。監査を受けるべき会計責任者(会計課長)が監査責任部門長でもあるというのは自己矛盾といわざるを得ない。また監査の担当者が会計部門に所属しているので、人間関係を慮って指摘、指導が厳しくなされない様子が実地監査報告書から読み取れる。
 防衛庁は平成16年度より政策評価監査官により実施されることになるが、今後いささかも独立性が揺るがないように期待したい。平成16年度より警察庁の会計監査は長官の責任において行われることになった。この効果がどのようなものになるのか注目したい。
(2)会計監査の目的がばらばらで目的に添った監査が行われていない。
 経済官庁はまず「予算の適正かつ効率的な執行」を監査の目的とするが、もっぱら会計事務の適正、改善に目的を絞り込んでいる省庁も多い。監査に関して会計規則などで会計課長の監査権限だけを規定し、監査の目的、方法、報告のあり方などを定めていない省庁もある。
 そもそも各省組織令で会計監査を規定したとき法の期待する目的は何であったのか、予算の適正執行監査を求めていたのか、会計事務の適法性監査だけであったのか。予算の適正執行については会計検査院の検査に加えて、総務省の行政評価や財務省の予算執行状況調査などもあり、屋上屋を重ねるとの意見も官庁側から聞こえるが、国民の期待は各省が自律的に予算の執行について「監査」を行い、適法性に加えて無駄な支出を省き、効率的な執行と制度・システムの改善を徹底して行うことである。
 監査規程が訓令(大臣告示)か、会計課長通達または通知か、は実体として違いは認められないが、監査は全省全部局に実施するものであるから、訓令によるべきである。
(3)本省監査が行われていない。
 「監査の実施対象部門は全省全部局に及ぶ」と規程に定めていても実地監査は本省会計課と出先機関のみというところが多く、もっぱら出先のみというところもある。各部局や本省会計課を除外する理由は、日常的に案件の審査が徹底しており、またその都度訂正、改善させているので、実地監査は日頃指導監督が行き届かない出先機関のみに行う、というものである。
 事務の監督指導だけならばともかく「監査」をやる以上、全部局に実施することが公平性を確保する上で重要である。また本省こそ予算の大部分を執行しており、とりわけ経費予算では恣意的な運用の実態がある。全職員に仕事のあるところ監査ありを徹底させることが、公正で効率的な仕事の仕方を身につけさせる上で有効である。
(4)指摘事項は極めて少ない。
 各省とも実地監査報告書は作成されている。中にはチェックシートにチェック印をしただけでというお粗末なもの(国土交通省)もあるが、多くは指摘、注意、指導などに区分して監査を受けたほうが理解しやすく、改善に取り組みやすいように書かれている。
 ただし内容はきわめて薄い。指摘事項もごく少なく、問題なし、妥当と認めるなどの表現が多い。監査のレベルが事務処理のミスを注意する程度ならば、その場で訂正しておしまいだから、問題点を指摘できないのは当然であろう。
 契約に関する事項で、同種のものをあえて分割発注し、競争入札によらず随意契約していることを指摘しているだけで、なぜ随意契約にしたのか、業者との馴れ合いはないのか、不正はなかったか、高値買いではなかったかまでつっこんだ監査をした跡は見られない。
(5)監査の結果が生かされていない。
 年次監査報告書が作成されていない、改善指示書が出されていない、改善点の周知文書が出されていないところが多い。実地監査における指摘が少なく、また軽微なものにとどまっていることの当然の結果である。いくつかの省庁で指摘、注意、指導した項目の一覧表を作成して全出先機関に配り参考資料とさせているところがあるが、中身の多くは形式的な事務ミスの防止策である。
 文部科学省では本省各部局に対してカラ出張やカラ手当ての不正防止を目的に、出勤簿と旅行命令簿の照合、休暇簿と出勤簿との照合などがされている。しかし不符合は記載ミスとして処理され、結局は書類上の辻褄あわせをしたのでないかと推測もできる。このような日常事務的なことは民間企業では日々解決する仕組みが使われている。官庁においてはこのようなことも監査の対象にしなければならない、ということに時代錯誤感すら覚える。
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6.おわりに
 中央省庁の会計監査体制の評価は初めてであり、先ず外形的に監査のサークルが回るようになっているかを調べランキングした。国民は官庁による税金の無駄遣いが多いことについて疑問をもっているので、会計監査についてしっかりした体制が確立され、機能していることを期待している。このような視点から見れば、今回の調査では中央省庁が監査システムの構築に十分取り組んでいるとはいえないことが明らかになった。当センターは今後も継続して中央省庁の会計監査体制の監視を行い、実効性を高めるように促してゆく。
 最後に真に国民の期待にこたえる監査体制の構築を願い次の提言を行う。
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提言
1. 会計監査の目的に「予算の適正かつ経済的、効率的、効果的執行」を明示する。
2. 監査組織を会計部門より分離して上位組織に直属させる。
3. 全省全部局を実地監査する。本省のけじめが全省全機関の範となること。
4. 監査体制の構築、監査手法などに民間のノウハウを生かすこと。
5. 監査の結果及び実行した改善施策について国民に公表し、評価を受ける。
以上
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