「第一回情報公開度ランキング」調査結果
全国市民オンブズマン連絡会議
01 調査日、調査方法等の概要
02 点検項目等
03 調査結果
04 調査結果のあらまし
05 情報隠し”お国自慢”
06 むすび
07 いくつかのグループ分け

1. 調査日、調査方法等の概要
 当連絡会議では、自治体の情報公開制度が使いやすくなっているか、市民が知りたい情報はどの程度開示されているかをチェックするため、全国一斉に情報公開請求を行いました。実施日は96年10月15日で、都道府県、政令市に対し公開請求を行ったものです。請求を行った対象部署は、都道府県については土木部管理課、政令市については人事部総務課です。請求した資料は、92年から96年までの5年間の懇談会費と出張旅費の経理関係書類です(但し、資料請求は、懇談会費については各年の3月分、出張旅費については各年の1月分だけ)。

 96年10月15日に一斉請求を行った都道府県数は37ですが、その前後に接して行った数を含めると42となります。それ以外の5県については、情報公開担当の窓口に問い合わせを行い、過去の調査資料等を参考として調査・判定を行いました。


2. 点検項目等
 「懇談会費」については懇談開催の場所や出席者名が開示されているか、「出張旅費」については、出張者名・出張目的の記載や復命書が開示されているかなど数項目について点検し、各項目の開示度を点数化しました。

 採点項目と配点は別表6の通りですが、上記の項目については開示度をプラスの得点で表すほか、「情報隠し」「手数料徴収」「情報公開条例の未制定」などの事情がある時は、減点を行うこととし、どこの自治体が情報公開に対して積極的であるか、消極的であるかを、市民・利用者の側から採点したものです。いわば、各自治体の情報開示度の「通信簿」です。

 採点は統一した基準と判断で行う必要があるので、仙台市民オンブズマンに集中して作業を行いましたが、中間の集約結果を各地の市民オンブズマンに戻し、意見を求めて修正・調整等を行いました。


3. 調査結果
今回の判定に際して対象となった資料は、主として95年度分(96年1月と3月分)のものです。

1) 95年度都道府県の情報公開ランキングは【別表1】の通りです。
2) 同じく、「懇談会費」並びに「出張旅費」の情報公開度ランキングは【別表2】、「懇談会費」だけのもの、「出張旅費」だけのものは、それぞれ【別表3】【別表4】の通りです。
3) 総合ランキングの判定の基礎となった採点の詳細結果は「別表5」の通りです。
4) その各調査項目の配点、採点基準は「別表6」の通りです。

4. 調査結果のあらまし
1) 総合点の最上位は宮城、最下位は山形でした。72点と11点でした。平均点は42.3点でした。限られた調査項目ですが、自治体の情報開示度は極めて低いといわざるをえません。以下に若干の分析を付します。

2) 総合点で上位の5つの自治体は、後記(1)の通り宮城、沖縄、徳島、岡山、岩手(60点以上)でしたが、情報開示の透明度でみると、宮城、岡山、高知、北海道の順です。宮城と岡山は情報の開示度では満点()、高知が懇談等の相手方の氏名は開示しないが所属等は開示されており、復命書の記載は不十分ですが他と比較すると開示状況はよい方になります。沖縄、徳島、岩手は、情報の開示度は高いとはいえないのですが、総合点でこれらを上位に押し上げたのはコピー代が20円ないし15円で他より低額であったからです。

岡山はこれまで情報公開条例が制定されていず、かつ「食糧費」は全面非開示でした。昨年10月1日の条例施行で今回はじめて「食糧費」が開示されました。請求資料は条例施行後のものですから(過去分については「任意開示」)、今回のものは「参考値」とされるべきでしょう。

3) 懇談会(官官接待等)等で、接待側・被接待側、会場名のすべてを開示しないのは後記(3)の29県です。まだ、多くが料亭などの接待会場さえ明らかにしておりません。これらの県では、懇談を行ったこととその出席者の人数、そして金額等しか判明しません。透明度は著しく低い。山形県などは「開催日」まで開示しません。ここまで隠すというのは、おそらく明らかにできないそれなりの理由があるのでしょう。

4) 出張旅費関係についてみると、出張者の名前さえ明らかにしないというのは、後記(4)の16の県です。この16の県は、懇談関係でも、出席者、会場を開示していません。つまり、公務で出張している自庁職員の名前さえ明らかにしない自治体は、他の項目でも著しく透明度が低いということです。県幹部の情報公開制度や民主主義に対する理解・素養が欠けている県だということでしょう。

このグループ(16の県)は、透明度の最も低いグループを構成しており、千葉をのぞくと、いずれも最下位から14番目までを独占し、少し点の高い群馬でも下から17番目です。山形、静岡、佐賀、山梨が総合点で最悪グループをつくり一段と点が低い(10点台)のですが、これは、山形が条例未制定のため、静岡が手数料徴収のため、佐賀と山梨が窓口対応の悪さ(前者は「窓口での受付拒否」、後者は「審査会の答申無視」など)のために減点となっているからで、情報の開示度という点では、これらの県にはさほどの差がありません。千葉が開示度が低いのに中位グループに浮上したのはコピー代が10円で、他県よりかなり安かったからです。九州地区の開示度の低さが目立ちます。


5) 東京の情報開示度は中位なのに、総合点で最下位グループに属しています。これは接待1件の情報公開請求ごとに200円もの「手数料」を徴収し、かつコピー代が高いこと、さらに請求から公開までの期間が2ケ月以上もかかっているなど、市民の情報公開請求に対して高いハードルを設けているからです。首都東京で公開制度をこのように使いにくいものにしているのは極めて残念なことです。

5. 情報隠し”お国自慢”
1) 積極的な情報隠しや条例の歪曲などがある場合には、マイナス点を付すことにしましたが、各地の情報隠し”お国自慢”の内容をご紹介します。

秋田では、市民からの情報公開請求に対して、都合の悪い情報を隠すため多数回にわたり文書を改竄して開示しました。これは明らかに犯罪です。マイナス10点では少ないくらいですが最大限なので。

滋賀では、「業務の円滑を阻害する」として非開示にした県の処分を裁判所が取消して開示を命ずる(96、5)と、今度は「プライバシー保護」を理由に新たな非開示処分(96、6)を行いました。司法の無視だけではありません。こうした姿勢が許されるなら次から次へ非開示のカードを切ることができ、公開制度は無に帰してしまいます。

高知では、市民からの請求に対して、改竄した文書を提出した濃厚な疑惑があります。また、情報公開審査会の答申に従わないのです。

佐賀では、議会関係の文書になると、窓口では「文書の不存在」を強調し、申請自体を受け付けようとしないのです。また、請求を細分化させ、多数の請求書を作らせるので受付に2時間30分かかりました。こんなに面倒なら請求をやめようと考えるのが普通です。窓口はこれを狙っているのでしょう。以上のケースは、マイナス10点としました。


2) これほどひどいものではないのですが、次のような事例もあります。

請求にかかる文書を隠匿しただけでなく、文書保存期間中であるにもかかわらず文書を破棄した(北海道)。公文書の保存期間が5年と決められているのに、「出席者名簿」は付属文書と勝手に決めて随時捨ててしまう(鹿児島)。現に鹿児島オンブズマンが、今回10月に請求したら同年3月の懇談会の出席者名簿は既に廃棄されていた。

今回の調査を意識してか、普段は非開示としている文書を今回だけは開示した。その後同じ文書を公開請求したら、やはり非開示でした(福島)。思わず苦笑をしてしまいましたが、こんなことで私たちはだまされません。また、情報公開審査会の開示相当の意見に従わず、非開示処分とした例もあります(埼玉)。行政は自分のつくったルールにも従わないのです。

条例施行前の文書について、条例には「任意開示」となっていて開示の道が開かれているのに、事実上は開示をしない例があちこちにでています(石川・岐阜・奈良・岡山)。これも条例の趣旨を曲げているのです。その間に文書の書式を変更したり、破棄したりする可能性を否定できません。

文書保管期間を意図的に短くした上、1日でも期間を経過すると「廃棄文書」として開示を拒む(大阪)。1日すぎて文書を破棄しているはずがないのに「廃棄文書」になるのです。極めて狡猾です。公文書であるにもかかわらず、私文書だといって開示請求に応じないというのもあります(香川)。


3) 以上のケースはマイナス7点としました。情報公開審査会の答申に従うと知事が意思表明したのに、審査会が示した公開基準に従わず非開示とした(山梨)例などもこれらに準ずるといえるでしょう(マイナス5点)。知事がうそつきなのか、あるいは職員を動かす能力がないのか。どちらなのでしょうか。

6. むすび
 私たちは、自治体職員がいかに情報公開を恐れ、いやがっているかの一端を知りました。それだけ、市民に知られては困る臭いものが庁舎の奥にあるのではないでしょうか。そう思わずにはいられません。

 北海道、秋田、宮城、群馬、東京、三重、福岡、鹿児島では相次いで巨額のカラ接待やカラ出張の事実が摘発されました。私たちの統一行動日である昨年10月15日には、福岡をのぞいて、これらの不正経理が明らかになっていました。しかし、宮城をのぞくとこれらの都県では依然として情報公開への新たな改善がみられませんでした。住民に謝罪をし反省をして使い込み金の弁済までしたのにです。東京などで96年4月以降については、官官接待の原則廃止や全面公開などの改善はあるものの、過去分については非開示のままとなっています。つまり、「臭いものにふた」のままの改善なのです。汚れた部分を覆い隠したままの、言葉だけでの謝罪や反省では、失った住民の信頼を取り戻すことは無理でしょう。

 情報公開法が制定されようという昨今です。行政情報は住民のものであること、情報隠し・情報の不開示の裏には必ず腐敗と腐臭があることを知事も幹部職員も認識してもらいたいものです。早速、庁内を改められ、せめて宮城県程度の改善を早急に行ってもらいたいものです。


いくつかのグループ分け
【1】 上位5(60点以上)
宮城72  沖縄70  徳島66  岡山63  岩手62
【2】 最下位とその中間たち(40点未満)
山形11  静岡13  佐賀16  山梨17  愛知23  岐阜23  大分23  熊本24  栃木25  福岡25  長崎25  宮崎25  山口27  鹿児島32  東京34  香川36  秋田37  群馬37(18都県)
【3】 懇談の双方の出席者、会場を開示しない
青森、岩手、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、富山、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、和歌山、広島、山口、香川、愛媛、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島。(29県)
【4】 出張者の氏名を開示しない
山形、栃木、群馬、千葉、山梨、岐阜、静岡、愛知、山口、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島。(16県)
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