情報公開法に基づく公文書公開請求手続きのあらまし
 霞ヶ関の中央省庁が抱える情報は、宝の山だという人がいます。それは、国の過去、現在の政策を明らかにした資料やお役人の仕事ぶりを示す資料であったり、世界中から集められた情報だからです。そして、その霞ヶ関のお役人は、一人当たり、自分の背丈ほどの文書等をもっているといわれます。情報を探し当てるだけでも大変です。しかし、すこし苦労をしても、私たちの知らない社会の情報が、次々と現れることでしょう。情報公開法に基づく請求は、誰でも出来ます。ぜひ挑戦してみてください。以下には、通常予想される事例を想定して、手続きのながれをご説明します。
1 文書を探すー取扱いの省庁が分からないとき
 都道府県の県庁所在地には、総務省の情報公開の「情報総合案内所」ができます。そこでは、行政機関がもつ情報(文書、写真、フィルム、デイスクその他。以下単に「文書等」と言います)の「行政文書ファイル管理簿」を閲覧することができます。印刷物ではなく、コンピュター化された情報です。しかし、ここで分かるのは、「ファイル名」までです。一つひとつの文書等の名称は確認できず、文書等の内容を点検したりすることはできません。
 この管理簿には、そのファイルを管理する行政機関・部署等が明記されていますので、その行政機関の長宛に書面(備付けの用紙あり)で、開示請求を行います。
 この総務省の「行政文書ファイル管理簿」や各省庁所管の文書ファイル管理簿に対しては、一般家庭のインターネットからもアクセスができます。
2 文書を管理している役所に「行政文書開示請求書」を提出する
 各省庁の一定の機関にも相談窓口がつくられるはずです。請求者の居住地にその行政機関の出先などがあれば、そこでも問合せや相談ができます。
 請求をしたい文書がわかったら、その文書等を「行政文書開示請求書」で特定して(正確には「特定するに足りる事項」を記載)、管理している行政機関の長宛に、この請求書を提出します(郵送は可だが、FAX、電子メールは不可)。請求書には、通常、閲覧やコピーについての希望、その実施日などの希望も書き添えます。
3 開示請求、閲覧・コピー等の費用について
 開示請求1件ごとに、300円の「開示請求手数料」がかかります。開示請求書に収入印紙を貼ります。
 文書等の開示(閲覧・コピー)を受ける段階になると、先に納付した開示請求手数料とは別に、文書等の種類によって異なる「開示実施手数料」がかかります。ちなみに、A4版100枚以下の文書の閲覧とコピー受領の場合には、100円の閲覧手数料と1枚20円×枚数の費用の納付が必要です(開示の実施手数料は、電磁情報、デイスク、スライドなど種類によって異なる)。この総額が300円以下の場合には、無料となります。
 「1件」の数え方は、原則として「ファイル」1冊ごとに、1件とするようです。
4 行政庁は、原則として開示をしなければならない
 開示請求を受けた行政機関の長は、請求を受けた文書等が存在する場合は、原則として開示に応じなければならず、請求から30日以内に、開示、非開示の回答をする定めです(例外的に、文書等の存否の回答をせず、非開示の決定をすることができます。例、森喜郎氏の前歴調書の請求に対して)。開示を拒むことができるのは、次のような情報です。また、その文書等の一部に、非開示にするべき箇所がある場合には、部分開示となります。
【非開示にできる情報】
@ 個人が識別される情報。ただし、公益上の理由がある場合、公務員の職務遂行上の情報などは開示が原則。
A 法人等に関する情報―公にしないとの条件で任意に提供された情報など。
B 国の安全等に関する情報―外交や防衛などで国の安全が害される恐れのあるもの。
C 公共の安全等に関する情報―捜査など公共の安全等に支障を及ぼす恐れのあるもの。
D 審議・検討等に関する情報―率直な意見の交換等が不当に損われる恐れのあるもの。
E 事務・事業に関する情報―試験、契約、調査その他の事務の適正な遂行に支障を及ぼす恐れのあるもの。
5 開示は、閲覧もしくはコピーの交付で行う
 開示決定があると、請求した文書等の閲覧やコピー請求ができます。予めコピー請求しておいて、郵送して貰うこともできる。閲覧のあとでのコピー請求でもよい。ただし、文書等を実際に管理する部局が、請求者の居住地にないと、閲覧するには文書等を管理する部局まで出向かないとできない(霞ヶ関で保管する文書は、閲覧するには東京まで出向くことになる)。閲覧の方法は、文書等の種類によって様々です。開示実施手数料については、前述の通り。
6 「非開示」と通知されたときの不服申立、裁判等
 行政機関の長が「非開示」あるいは「一部開示」、「文書不存在」などの通知をしてきた場合には、請求者は、その処分をした行政機関の長に対して不服申立をするか、あるいは地方裁判所に対して非開示決定の取消訴訟を提起することができます。
 不服申立を受けた行政機関の長は、裁決・決定をするについて、内閣府に設けられた情報公開審査会に諮問し、その意見を聞いた上で、これを行うことになります。審査会での審査では、申立人は意見を述べたり、意見書を提出することができます。
 訴訟の提起は、不服審査を経た上でも経ないでも、できます。申立のできる裁判所は、東京地裁のほか、札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の地方裁判所です。