2006年9月28日
情報公開市民センター
外務省報償費控訴審 東京高裁第1回口頭弁論の概要
 
1.地裁の報償費開示命令判決に外務省が控訴
 東京地裁が2月28日に下した、報償費支出決裁文書の開示を命じる判決に対して、敗訴した外務省は3月13日に控訴した。
 情報公開市民センターは、判決が1069件の文書のうち、いわゆる5類型(日本画、酒類購入、大規模レセプション、車借上げなど)の52件は開示拡大であって不開示維持の部分が残されたものの、外務省が不開示とした5類型以外の1017件については全面開示命令であることから、実質完全勝訴と理解して控訴しなかった。
 東京高裁の第1回の口頭弁論に先立ち、外務省は5月1日に控訴理由書を提出し、それを受けて市民センターは6月6日に答弁書を提出した。

2.外務省の控訴理由の概要
 外務省の控訴理由書のポイントは次のようなものである。
 「公にしないことを前提とする外交活動」については、事前に計画を策定し個別の使途を明らかにした上で積算することができない性格を有する。他の費目で支払う場合、機動性・保秘性を維持できないから、報償費を使用するほかない。
 この支出に関する文書が公開された場合には、
 @ 情報提供者や協力者の立場への悪影響、
 A 他の情報提供者、協力者一般への悪影響、
 B 情報収集及び外交工作事務一般への萎縮などの弊害・支障が生じるおそれがある。
 5類型以外の報償費はすべて「公にしないことを前提とする外交活動」に支出され、支出文書には法5条3号、6号に該当する不開示情報が記載されている。
 これらの理由は一審での主張の範囲を出るものではない。新たな主張として、文書のサンプル5例について記載された会合・情報提供の相手が任国の団体関係者であるなどの説明を行った。

3.センターの答弁書のポイント
・「公にしないことを前提にした外交活動」は定義もされていないし実態もない。
・「機動性・保秘性のためには報償費を使用するしかない」とするが、これまでに明らかになっており、かつ報償費と同じような役割を果たしている在外公館における交際費や交流諸費(会合の飲食費など)の支出決裁手続と、5類型(報償費)や控訴理由書の5つのサンプルに見られる支出決裁手続とを対照してみても、必要とされる書類や手続に何の変わりもなく、手順も同じである
・5つの在外公館における「飲食供応便宜供与の支出証拠」という請求を行ったが、外務省は、「飲食供応便宜供与」のために支出された「報償費」の存在自体はあるものとして、これを不開示としてきた。同じ「飲食供応便宜供与の支出証拠」でも、「交際費」と「交流諸費」についてはほとんどの情報を開示してきた。このことは報償費の中から一定件数の「飲食供応便宜供与」の支出がなされていることを推認させるものである。
・情報公開審査会は2005年8月25日、平成12年2月にアメリカ大使館を訪問したある国会議員に対して大使主催昼食会、公使主催昼食会等が開催された事実を指摘し、その関係事実が記載されている墨塗り部分の開示を答申した。この文書の開示により、国会議員に対する飲食の伴った便宜供与開催の具体的な事実がはじめて明らかになる。その設宴費用は、センターが既に入手している同時期のアメリカ大使館の交際費での支出にも、交流諸費での支出にも表れていない。センターの理解では、報償費からの支出以外にはあり得ないところである。

4.口頭弁論の概要
 東京高裁の第1回口頭弁論は6月8日に行われた。
外務省:
 控訴理由書で主張は終わりであるが、センターの答弁書・反論に対して必要があれば主張をする。
センター:
 提出した答弁書は一部についての反論であるので、後日詳細反論を提出する。
裁判長
 不開示理由があることについては、具体的に説明されないと裁判所は分からない。外務省はサンプルを示して説明しているが、開示して支障があるということが分からない。1件ずつについての具体的主張を行うのか、これ以上の主張をしないのか、控訴審における主張立証の方針を明確にしてもらいたい。
センター:
 報償費からの支出があると考えられる国会議員に対する便宜供与について、昨年8月に情報公開審査会の開示を命ずる答申がなされているのに、未だ開示されていない。早急に開示されなければ文書提出命令申立を検討する。

5.次回期日
 第2回口頭弁論の期日は9月26日午後3時と決定した。

(鈴木祥宣記)