第5回全国(都道府県・政令指定都市)
情報公開度ランキング

全国市民オンブズマン連絡会議

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《 目次 》
1.はじめに
2.評価の対象等
3.調査結果について
4.まとめ

第5回全国情報公開度ランキング採点基準
情報公開度ランキング過去4回の総合順位

都道府県
都道府県総合ランキング(表1)
知事交際費(表2)
政務調査費(表3)
警察出張旅費(表4)
予算概算要求(表5)

都道府県開示度ランキング(表6)

政令指定都市
政令指定都市総合ランキング(表7)
市長交際費(表8)
政務調査費(表9)
予算概算要求(表10)
開示度計(表11)


任意参加都市(表12)

第5回全国情報公開度ランキング
2001年3月
全国市民オンブズマン連絡会議
1,はじめに
 第5回情報公開度ランキングを発表します。今回のランキング調査は47都道府県、12政令市と、地元の各市民オンブズマングループが任意調査した23の市の情報公開度を評価しました。今回の調査は特に、自治体で情報の開示が遅れている、議会の政務調査費、警察の公費支出、行政の政策形成過程の各情報についての公開度の調査を重視し、昨年までと評価項目、配点を変更して実施した点に特徴があります。
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2.評価の対象等
【評価項目・採点基準等】
 公開度調査は例年通り、文書開示度に関する項目と、制度運用状況に関する項目とで行いました。開示度の調査対象情報は、@首長交際費の相手方情報の公開度、A議員、会派への政務調査費に関する情報の公開度、B県警総務課職員の出張に関する情報の公開度(都道府県のみ)、C自治体の各部(課)の2001年度予算の概算要求に関する情報の公開度の4項目としました。制度運用の対象項目は、@コピー代、A請求から開示までの日数の2項目で、都道府県については合計150ポイントを満点とし、それ以外の自治体に関しては県警情報のポイントを除いた120ポイントを満点として、それぞれ100点満点に換算して得点を決定しました。また、昨年までと同様、閲覧手数料を徴収する自治体については順位をつけず、失格扱いとしました。
 以上のとおり、今回は昨年と評価項目や採点基準を大きく変更しました。議員、会派への政務調査費の支出に関する情報については、98年、99年に議会の閉鎖度ランキング調査で調査したことがありますが、情報公開度ランキングの調査項目としたのは今年が最初です。警察情報については、昨年は信号機の設置に関する情報を対象としましたが、今回は県警総務課職員の出張情報を調査しました。政策形成過程の情報として、自治体各部(課)の2001年度予算の概算要求に関する情報の公開度は今回はじめての調査です。首長交際費については、昨年同様、交際の相手方の情報の開示度のみを評価の対象としました。したがって、交際費支出の相手方についての情報が開示されない場合には、0点の評価となります。
 制度運用状況についての評価項目は昨年と同様ですが、コピー代ポイントについては「(40-コピー代)÷2)」の数式で算定し、20点を満点として総得点にしめる比重を若干下げつつ、都道府県で最も少額の一枚10円の多くの自治体と最も高額(一枚40円)の広島県の運用の差が点数に反映されるように配点しました。
【調査日時、方法】
 一部の自治体を除き、昨年(2000年)の11月17日に全国市民オンブズマン連絡会議に所属する各地のグループが自治体宛に情報の公開請求を実施し、開示された資料について開示度を判定しました。なお、今年は、評価項目がこれまでと異なるものが多いことから、各自治体宛にこれらを評価項目とした理由を説明した文書を発送しました。ただし、2001年度予算の概算要求書については、11月17日の公開請求または開示決定の段階で作成していない自治体もあったことから、かかる自治体については、今年(2001年)1月、概算要求書案が議会に提出される前に改めて公開請求をし、その結果に基づいて評価をしました。
 一次評価をした段階で、昨年同様、一次評価結果を各自治体に送付し、一次評価に対する自治体の意見を聴取したうえで、最終的な評価をしました。
 各項目の採点基準の詳細は別紙の採点基準表をごらんください。
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3.調査結果について
【全体の傾向】
 情報公開度を極力高めようと努力している地方自治体と旧来どおりの閉鎖性を維持すると決意している地方自治体とが,ますます両極分解しています。宮城県は今年も総合第1位です。しかし,部門別に見ると,(予算概算要求書)では愛媛県・長野県・大阪府・北海道・高知県・兵庫県・岐阜県・香川県が宮城県より高い得点になっており,宮城県の総合第1位が今後も続くかは不確定です。
 岩手県が第8位から第3位に上がり,愛媛県も第10位から第3位に上がりました。北海道・三重県・高知県は昨年同様,高順位を維持しています。岩手県と愛媛県が今後も高順位を維持して行くのか,新潟県のような変化(第6位→第34位)をするのかが注目されます。
 大躍進を遂げたのが長野県です。田中康夫知事になった途端,第41位から一気に第3位へ急上昇しました。今後が楽しみです。また、長野と同様、知事がかわった熊本県が25位から18位、栃木県が35位から20位と、新知事となったところの公開度が上がるという傾向は顕著です。
 反対に、新潟県を筆頭として、去年のベスト10自治体のランクダウンも目立ちます。去年5位の愛知県が17位、去年9位の京都府が27位にそれぞれランクを下げています。今年は文書開示度の調査項目が変わったことに原因するでしょうが、これらの自治体は食糧費や旅費、交際費の公開には努力したとはいえ、情報公開制度そのものに対する理解や努力を欠いていると言わざるを得ません。
 最下位は広島県で、富山県、宮崎県、佐賀県が下から二番目のグループを構成しています。富山県・宮崎県は1999年の第三回調査以降、常に40位以下で低迷しています。文書開示度が0点の地方自治体は,石川県・静岡県・佐賀県・宮崎県・富山県・広島県の6県です。

【首長交際費】
〔調査の意図〕
 都道府県知事・議会議長や市町村長・議会議長は長年にわたって「広範な裁量権」の名のもとに公費である交際費を個人のポケットマネーのように使って来ました。しかもその使途は,首長・議長という地位に必然的に伴うものに止まらず,自分と個人的・政治的に繋がりの深い人に対して支出されることが稀ではありませんでした。それは首長・議長の肩書を付加価値とした事前選挙活動を日常的に公費でおこなっていたという側面を持ちました。当然のことながら,客観的な支出基準を作り,これを公にし,この基準に従って支出するなどということはできません。あろうことか,2つの最高裁判決(栃木県知事交際費非公開処分取消訴訟(最一判94年1月27日)と大阪府知事交際費非公開処分取消訴訟(同日))が相手方氏名の非公開を公認し,首長・議長交際費の情報公開の流れを妨げて来ました。情報公開を拒む地方自治体にとっては心強い助っ人でした。
 ところが,食糧費に関する情報公開の実務運用と情報公開訴訟の原告側の圧倒的勝訴が最高裁の作ってくれた流れを実質的に変えてしまいました。「交際費」「食糧費」と名目は違っても,非公開が問題になるのは主に相手方氏名です。「交際費」についてほぼ全面非公開を認めた最高裁判決に対して,「食糧費」では全面公開をする地方自治体が増え,なかにはホームページに公表する地方自治体まで現れました。食糧費についての裁判所の判断も、地裁・高裁の判決では圧倒的に原告側の請求が認められています。それらの事件の多くは往生際の悪い知事によって上告中ですが,食糧費の支出は全都道府県で激減しました。
 そうこうしている間に,交際費についてもついに全面公開を認める地裁判決(奈良地判2000年12月20日)が出るようになりました。交際費についても裁判所の流れは全面公開の方向です。交際費について相手方氏名を公開するようになった都県では交際費支出も激減しています。
〔採点基準と採点結果について〕
 今回は,交際費の情報公開で地方自治体が最後まで躊躇している@「病気見舞いの相手方氏名」の全面公開をしていることをもって最高点(30点)としました。病気見舞いについては公費を支出しないことにした場合も30点としました。北海道・宮城県・岩手県・岡山県・鳥取県・熊本県・沖縄県の7道県が30点でした。オープン参加の函館市(北海道)・和歌山市(和歌山県)・大野城市(福岡県)も30点でした。ちなみに,オープン参加の熊本市は熊本県と対照的に0点でした。
 A場合によっては非公開にすることがあるという自治体については、実務の運用が公開原則となるか,非公開原則となるか予断を許さない点があることから、@と同じ評価はできないということで25点としました。青森県・東京都・三重県・高知県・山口県の5都県が25点でした。
 病気見舞いについては,裁判例でも意見が分かれています。しかし,首長・議長として公的にお見舞いをすべき場合は,相手方は地方自治体に公的な関わりを深く持ってきていた人であり,お見舞いの支出をする前にすでにお見舞いの対象になる人が入院中だとか自宅療養中だとか報道されていたり,事実上広く知られていたりしているので,非公知性は低いのが通常でしょうし,当該会計文書には相手方の病名や病状などのプライバシーが書かれているわけではありません。全面公開されるべきです。
 他方,いまだに相手方は個人も団体もすべて非公開(0点)という態度を続けている県が14もあります。茨城県・千葉県・山梨県・静岡県・富山県・石川県・奈良県・香川県・徳島県・広島県・福岡県・佐賀県・宮崎県・鹿児島県です。なお、石川県はわずか1件、相手方を公開していましたが、ここからは原則公開という公開基準を読み取ることができません。たまたま1件公開しても良いものが含まれていたということでは情報公開に積極的姿勢があるとは評価できないので,0点を維持することにしました。
 政令指定都市では北九州市が0点です。大阪市は3点、京都市・千葉市・広島市・福岡市は5点で,千葉市・広島市・福岡市については、千葉県・広島県・福岡県と類似の傾向が見られます。
 オープン参加の佐賀市は佐賀県と対照的に20点でした。

【政務調査費】
〔調査の意図〕
 従来,地方議会の会派に交付されていた政務調査費には法的な根拠がありませんでした。今年4月に施行される新地方自治法の改正で,条例で規定すれば政務調査費を支出してよいという法的根拠が与えられました。これを契機に,条例さえ作れば政務調査費を貰えるという安易な動きが地方議会に出るのではないかという懸念があります。政務調査費が必要なものだとしても,その使途が公費支出に相応しいものかどうかが分からなければ,知事交際費や食糧費と同じ問題が起こります。公費支出である以上,基本的に公開されるべきです。会計文書なので首長の責任において管理し,公開が決定されるべきですから,議会が情報公開の実施機関になっていなくても,結論を左右するものではないはずです。
〔採点基準と採点結果〕
 議長に対して領収証が提出されていて,これが公開された場合を30点としました。30点を獲得した都道府県はありませんでした。政令指定都市にもありませんでした。宮城県からは「議会の政務調査費は全国横並びで差がつかない。」という指摘を受けましたが,オープン参加の藤岡市(群馬県)・船橋市(千葉県)・町田市(東京都)・日田市(大分県)は30点でした。市にできるのに都道府県ではできないのでしょうか。領収証の情報公開を求めることは実務上不可能なことではないはずです。「領収証は各会派が管理するものであって議長が管理するものではない」という弁解を耳にすることがありますが,議長は各会派の支出が適正であるか否かをチェックしなければならないのですから,領収証を議長あてに提出させるのは当然です。そうしないと議長への報告は形骸化してしまいます。各会派には控えとして領収証の写しが残れば十分です。
 都道府県議会のレベルでは,10点の宮城県・秋田県・埼玉県・長野県・三重県・滋賀県・愛媛県・鹿児島県・沖縄県が最高点でした。0点が23府県もありました。0点の内訳中,「請求却下」と答えた山形県・富山県・山口県、「開示・非開示の決定はできません」と答えたのが茨城県、「不受理」と答えた自治体が静岡県・和歌山県・徳島県・長崎県、「不存在」と答えた自治体が栃木県・群馬県・福井県・岐阜県・島根県・岡山県・広島県・佐賀県・熊本県・大分県・宮崎県でした(大阪府は知事部局で物理的に保存している文書についてのみ決定を出す、という方法をとっていますが、これも議会が物理的に保存している文書について実質的に「不存在」としていると言って良いでしょう。)。 
 しかし、請求者が条例に基づいて情報公開請求手続をしている以上,「請求却下」「開示・非開示の決定はできません」「不受理」は許されません。富山県以外は不服申立ができる旨の説明もしていませんでした。また、受理した上で「不存在」と答えるのも問題です。議会局で管理している会計文書は地方自治法149条2号・5号などの解釈として法的には首長が管理していると解すべきだという裁判例(鳥取地裁判決99年2月9日・高松高裁判決同年9月28日・仙台高裁2000年3月17日・広島高裁松江支部同年8月30日)が続出していることからしても,地方自治体としてはこの裁判例に即した解釈運用をすべきで、実施機関は「不存在」ではなく,公開(または非公開箇所が非公開事由に該当することを理由とする一部非公開)決定をすべきです。

【警察出張旅費】
〔調査の意図〕
 請求の対象文書は「総務課」に限定しました。いまだに強固な閉鎖的秘密体質の警察組織に対して社会常識的な情報公開請求をしても,すべての都道府県が0点という悲惨な結果になるだろうと考え,とりあえず第一段階として個別の犯罪捜査に関与しない総務課だけに絞りました。総務課の出張旅費であれば,犯罪捜査への支障ということはないはずなので,ほぼ全面公開の処分をする地方自治体が現れてもおかしくないだろうと考えたわけです。
〔採点基準と採点結果〕
 対象を県警総務課の出張にかぎったことで,出張者名はすべて公開されてよいはずだと考え,全部公開を15点としました。また,復命の内容にも個別の犯罪捜査に関する記載はないはずなので,全部公開を15点としました。
 結果は予想どおり悲惨なものでした。出張者氏名については課長などの役職者のみを公開したのは6県,宮城県・神奈川県・愛知県・鳥取県・香川県・高知県(以上5点獲得)があるだけで,他の都道府県は0点でした。復命書では2点を獲得した宮城県以外はすべて0点でした。公費支出のチェックについて知事の警察への遠慮ぶりはあまりにも極端です。
 もっとも復命書については,宮城県を除いて,そもそも知事部局側に提出されない運用になっているようです。しかし,当該支出が適正であったか否かを検討するに際して復命書の内容を検討する必要が生じることもあるはずです。知事の予算執行権限の実質化という観点からしても会計文書の添付資料という位置づけがなされるべきです。
 なお,富山県・京都府が「請求却下」,徳島県・長崎県・鹿児島県が「不受理」としているのは行政手続として誤りです。このように答えられると,請求者に処分の違法性を争うことができないかのような錯覚を与えます。存在しないことが理由であれば,他の都道府県と同様に,「不存在」を理由とする非公開処分をすべきです。
 埼玉県・静岡県・和歌山県・徳島県・佐賀県・長崎県・鹿児島県の通知書には不服申立に関する教示がなされていないことも問題です。

【予算概算要求書】
〔調査の意図〕
 現在の地方自治体の大赤字は議会が十分にチェック機能を果たしていなかったことが一因だったと考えられます。莫大な支出を伴う大型の公共事業が決定される前の段階で,重要な情報が公開されるならば,住民は議員を通じて議会決定に影響を与え,無駄な公共事業を阻止したり修正したりできるはずです。議員の専門性が必ずしも高くないこと,議員個人として専門家の政策スタッフを多数かかえているわけではないこと,議会事務局の職員数も少なく議員のために十分に議会準備ができないことなどを考えると,予算議会前に概算要求書が資料とともに全面的に公開されるか、さらには条例による公開請求を待つまでもなく公表されるならば,各分野に詳しい住民が内容を検討し,議員に説明し,議員がこれを議会で問題提起することができることになります。このような観点から、今回は議会提出前の予算の概算要求書が公開されるかどうかを評価の対象としました。
〔採点基準と採点結果〕
 議員に提示される概算要求書と関連資料,積算根拠はすべて住民に公開されるべきです。概算要求書の記載内容が具体的で当該事業の目的・事業概要・効果が理解でき,かつ詳細な添付資料がついて全面公開された場合を20点,積算根拠が全面公開された場合を10点として,合計で満点が30点となります。
 長野県と大阪府と愛媛県だけが30点でした。これらの文書・資料を見ると,当該事業を必要とする理由とこれを裏づける詳細な資料、そのための予算の積算根拠が詳細に出ています。今回公開されたなかでは公開度は抜きん出ていました。他の都道府県はぜひ参考にしてください。情報公開度の高いことで有名な宮城県(20点)や,事務事業評価システムの創始者的地位にある三重県(20点)以上の公開度でした。
 概算要求書が簡単にしか記載されていなかったり,資料がごく簡単なものしかなかったりして,実質的な検討ができないようなものについては,減点することにしました。これに関して、長崎県から全面公開しているのに満点にならないのはおかしいという意見が寄せられましたが、長崎県が満点を獲得していないのは上記の理由です。
 宮城県からは「添付資料はもともとないが、資料をわかりやすくまとめた『主要事務事業資料』をつけている。また、金額についても一部が非公開であるにしても、積算根拠を示しているから、総額しかわからない場合と同じ配点になっているのはおかしい。もっと配点の刻みを細かくしてはどうか。」という意見が寄せられました。概算要求書がその記載内容だけで判りやすく書いてあることは重要ですが,これを裏づける添付資料も提供されるべきだと考えます。
 また,公開された文書のほとんどが全面公開であっても一部の文書について非公開がある場合には,この非公開された文書を基準としました。鳥取県は95件中93件が全面公開で2件が一部非公開でした。本来全面公開されるべきだというのが私たちの考え方ですから,たとえ少ない件数であっても「都合の悪くないものは見せるが,悪いものは見せない」というものがあれば,高い評価はできません。また、今回の調査で三重県は非開示としたものはありませんでしたが、三重県では、開示・非開示の判断は,事業内容や請求時期によって決める、ということだったので,情報が全面的に公開される、という前提での配点はしませんでした。
 0点は24府県。福島県・埼玉県・神奈川県・新潟県・富山県・石川県・福井県・静岡県・愛知県・滋賀県・京都府・奈良県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・福岡県・佐賀県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県でした。
 一方、政令指定都市の公開度は悲惨でした。12市中8市,仙台市・川崎市・神戸市・横浜市・京都市・大阪市・福岡市・北九州市が0点でした。残る4市も20点の広島市を頂点に,札幌市・名古屋市・千葉市が15点獲得できただけでした。
 オープン参加では,静岡市・高知市・佐賀市が合計25点と健闘していました。

【制度運用】
〔調査の意図〕
 情報公開制度を利用する上で,@請求から決定までの期間が短いこと,A費用が安いこと、が重要です。見たいときに請求するのが情報公開請求です。決定までの期間が長いことはそれだけで請求者の利用意欲を減退させます。また,文書のコピー代が高いと一般の市民が気楽に利用するという制度ではなくなってしまいます。対象文書の枚数が多いときにコピー代1枚の差が大きな負担となってはっきり現れます。
〔採点基準と採点結果〕
 今回@は首長交際費に関する情報公開請求を基準にしました。30日以内であれば10点,31日以上49日以内であれば5点としました。これは首長交際費の情報公開請求に全都道府県がだいぶ慣れたようで請求から30日以内に決定を出しました。政令指定都市でもほとんどが30日以内に決定を出しました。北九州市だけが31日以上経過して決定を出しました。
 コピー代は,当初,30円以上は一律0点とすることを考えましたが,請求者にとって1枚30円の負担と,1枚40円(広島県)や35円(福岡県)の負担とでは,とくに大量コピーの請求のハードルは全く異なります。この二県はコピー代を安くするべきです。今回は、この金額の差が得点に反映するようにしました。数式は「(40−(1枚のコピー代))÷2」です。例えば,1枚10円であれば「(40−10)÷2=15点」,1枚40円であれば「(40−40)÷2=0点」となります。
 因みに、全国の傾向では、コピー代は1枚10円とする地方自治体が16に増えました。岩手県・秋田県・宮城県・福島県・千葉県・神奈川県・石川県・福井県・長野県・静岡県・岐阜県・愛知県・三重県・大阪府・愛媛県・大分県です。

【失格について】
 閲覧手数料を徴収する自治体は昨年同様、失格としました。しかし、都道府県で閲覧手数料を徴収する自治体は東京都だけとなりました。都道府県条例について言えば、コピー代の低額化をあわせ、情報公開制度は利用しやすい方向に展開しています。
 一方、政令市では横浜市が閲覧手数料を廃止しました。しかし、千葉市、北九州市ではいまだに閲覧手数料を徴収しています。

【政令市の低迷について】
 今回は政令市の低迷が目立ちます。因みに、政令市の総合点を、都道府県の総合点から警察の得点を除いた値(政令市と同一の評価項目とする)と比較すると、政令市1位の札幌市でも、都道府県ランキング10位の大阪府と同じランクになるのがせいぜいです。同様に、2位の名古屋市は60ポイントで11位の沖縄県と同じ、3位の広島市は神奈川県、熊本県、香川県、岡山県と同じ50ポイントで、都道府県順位13位?18位にしかなりません。
 また、閲覧手数料の項でも指摘しましたが、都道府県で閲覧手数料を徴収する自治体が東京都のみとなったことと比べて、千葉市、北九州市がいまだに閲覧手数料を徴収している点に情報公開制度への取り組みの後進性が現れています。
 政令市の首長さんは情報公開制度の改善に十分に取り組んでいないと言わざるを得ません。
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4.まとめ
 今回はこれまでと調査対象情報を大幅に変更しましたが、先に指摘したように、これまでランキング上位の常連は今回の調査でも上位に、下位の常連は下位に固定する傾向が明らかになってきました。因みに、下位5県の過去4回の成績は、以下の通りです。
最下位(46位):広島県(19位→31位→21位→34位)
43位:富山県(26位→33位→40位→44位(最下位))
43位:宮崎県(37位→35位→41位→42位)
43位:佐賀県(45位→24位→25位→38位)
42位:福岡県(36位→26位→22位→38位)
 この5県はもともと情報の開示度の高い自治体ではなかったのですが、いずれも昨年、順位を落としていることで共通しています。昨年は調査の対象から食糧費や旅費についての文書をはずしましたから、そのことが順位低迷の一つの原因となっていると言って良いでしょう。しかし、食糧費や旅費が対象となっていた3回目までの調査結果を見ても、これら5県は良い成績を残してはいません。この5県は情報公開制度の必要性や重要性を十分に認識することなく、官官接待やカラ出張の批判に対し、対症療法的に情報公開制度の表面的な見直しでお茶を濁してきたとしか言えません。これら5県と、【全体の傾向】の箇所でも指摘した、文書開示度が0点の石川県・静岡県を加えた7県の知事さんは情報公開制度に対して極めて不熱心か、敵対的です。同じ住民自治の原則のもと生活していながら、上位の自治体と比べて、これら7県とでは、行政の意思決定に参加する途が狭められているのです。
 一方、今回の調査で成績上位となった自治体の情報の開示度も、十分とは言えません。とりわけ、警察の情報や政務調査費についての情報は全滅に近いという結果が出ました。警察と議会の情報の公開が自治体の情報公開制度中、もっとも遅れている分野です。
 本調査項目は原則として来年以降も継続調査します。自治体の首長さんと議長さんには本報告書を十分に検討していただき、来年はもっと良い成績をおさめられるよう、期待したいと思います。
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以上

第5回全国情報公開度ランキング採点基準




30





30点 相手方の個人名まで全面公開 病気見舞いの個人名まですべて開示
25点 一部の個人のみ非公開 病気見舞いは一部非開示
20点 非個人の公開+個人名のほとんどが公開 病気見舞いは全面非公開
15点 非個人の公開+個人名の一部の公開 個人は相手により開示、一部非開示
10点 非個人の公開+個人名の非公開 法人・団体名のみ開示
5点 非個人の一部の公開 法人・団体名も一部非開示
0点 全面非公開






調

30
使


30点 全面開示 領収証まで開示
20点 一部の公開(帳簿) 出納帳まで開示
10点 一部の公開(小項目) 小項目までまたは大項目にすべて説明つき
5点 一部の公開(大項目) 大項目のみ(一部のみ説明を含む)
1点 一部の公開(会派名) 会派名のみ
0点 全面非公開(不受理、不存在、非公開を含む)











30
出張者の
氏名公開
15点 公開
5点 課長など、役職者のみ公開
0点 非公開
復命書の
公開状況
15点 出張の内容(最低限日程・議題のみならず結果も)理解が可能で、資料がほぼもれなく開示
10点 復命書の記載等は上記(15点)と同じだが、開示請求では資料が開示されないもの
8点 目的・日程・会議議題がわかり資料もほぼ開示されるが、議論の結果が全くわからないもの
6点 復命書の記載等は上記(8点)と同じだが、開示請求では資料が開示されないもの
4点 復命書がないかあっても抽象的・概括的な記載のみ、添付資料はほぼもれなく開示
2点 復命書の記載等は上記(4点)と同じだが、開示請求では資料が開示されないもの
0点 全面非開示










30
概要 20点 詳しい説明プラス添付資料
15点 必要性について、目的、事業概要、効果が理解できる及び添付資料があっても本紙が抽象的
10点 概括的、抽象的な内容しかわからない
5点 説明がないか、あっても非公開(新規事業については事業名のみ)
0点 全面非開示
金額 10点 積算根拠まで開示
5点 結論の金額のみ
0点 金額不明(全面非開示及び一部非開示を含む)
予算概算要求については、新規事業を採点対象とする





30
コピー代 20点 (40円?コピー代)/2 コピー代はA4版を基準とする
請求から開示までの期間(首長交際費を対象とする)
10点 30日以内
5点 31日?49日
0点 50日以上

閲覧
手数料
都道府県 東京
政令都市 千葉、北九州
合計 150点 (政令都市および一般参加は120点)
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情報公開度ランキング過去4回の総合順位
第1回 第2回 第3回 第4回
1 宮城
2 沖縄
3 徳島
4 岡山
5 岩手
6 千葉
6 鳥取
8 奈良
8 島根
10 新潟
10 石川
12 福井
12 愛媛
14 北海道
14 茨城
16 大阪
16 和歌山
18 神奈川
19 広島
20 福島
20 高知
22 埼玉
22 兵庫
24 滋賀
25 三重
26 青森
26 富山
28 長野
28 京都
30 秋田
31 群馬
32 香川
33 東京
34 鹿児島
35 山口
36 福岡
37 長崎
37 宮崎
39 栃木
40 熊本
41 岐阜
41 愛知
41 大分
44 山梨
45 佐賀
46 静岡
47 山形
1 北海道
2 沖縄
3 青森
4 宮城
5 岩手
6 高知
7 神奈川
8 新潟
8 徳島
10 和歌山
11 京都
12 鹿児島
13 三重
14 大阪
14 香川
16 奈良
17 福島
18 長野
19 石川
20 茨城
21 山梨
22 兵庫
23 滋賀
24 秋田
24 佐賀
26 埼玉
26 福岡
28 山口
29 福井
29 鳥取
31 広島
32 島根
33 富山
34 群馬
35 宮崎
36 千葉
37 熊本
38 岐阜
39 長崎
40 大分
41 栃木
42 愛知
失格 岡山
失格 東京
失格 愛媛
失格 静岡
失格 山形
1 宮城
2 三重
3 北海道
3 山口
5 青森
6 岩手
7 千葉
8 新潟
9 京都
9 高知
11 沖縄
11 大阪
11 福島
14 神奈川
15 和歌山
15 愛媛
17 徳島
18 滋賀
19 鳥取
20 奈良
21 広島
22 石川
22 福岡
24 鹿児島
25 山梨
25 佐賀
27 大分
28 香川
29 秋田
29 茨城
31 埼玉
32 長野
33 長崎
34 岐阜
35 福井
36 山形
37 島根
38 兵庫
39 熊本
40 富山
41 宮崎
42 群馬
43 栃木
44 愛知
失格 岡山
失格 東京
失格 静岡
1 宮城
2 北海道
3 三重
4 高知
5 愛知
6 新潟
7 秋田
8 岩手
9 京都
10 愛媛
11 滋賀
12 大阪
13 沖縄
14 青森
14 石川
14 鳥取
17 神奈川
17 岐阜
19 山口
20 岡山
21 埼玉
22 福島
23 和歌山
23 徳島
25 兵庫
25 長崎
25 熊本
28 群馬
28 鹿児島
30 千葉
31 大分
32 島根
33 香川
34 広島
35 栃木
35 奈良
37 茨城
38 福岡
38 佐賀
40 福井
41 長野
42 宮崎
43 山梨
44 富山
失格 東京
失格 山形
失格 静岡
*第一回ランキング調査では、閲覧手数料を失格とする評価をしていない。
**山形:第二回ランキングの失格は、条例未施行による。また、第四回の失格は、コピー代充当型の閲覧手数料も失格としたため。
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