政務調査費 アンケート集計結果
2007年9月15日
全国市民オンブズマン連絡会議
1. はじめに
 全国市民オンブズマン連絡会議では、2002年に開催した第9回の全国大会で政務調査費に関する領収証などの公開状況を取り上げて以降、毎年、政務調査費の支出に関する資料の公開状況を調査し、2005年からは政務調査費を情報公開度ランキングの評価対象情報としてきました。
 この5年間、政務調査費の透明化をすすめる自治体の数は漸増してきたとは言えますが、全国的にみると、政務調査費の公開度は低調で、私たちが毎年調査している情報公開度ランキングでは、政務調査費情報の非公開が自治体の情報公開度の大きな低下要因となっています。*
 このように、政務調査費の透明化が遅れる状況にあって、昨年から今年にかけて、二つの特筆すべき事件がありました。一つは同時多発的に全国各地で政務調査費の不正、違法支出を疑わせる事実が次々に明らかになり、また、各地の裁判所で政務調査費の返還を命じる判決が相次いだことです。判決については、2006年9月21日に2004年10月の札幌高裁判決を確定させる最高裁決定がなされたことを皮切りに、07年2月の札幌高裁判決、同年3月の名古屋地裁判決、同年4月の仙台高裁判決と仙台地裁判決、同年5月の青森地裁判決と、住民側の主張を認めて会派に政務調査費の一部の返還を命じる判決が続いています。また、政務調査費の不正支出が明らかになったことで会派の議員が全員辞職した東京都目黒区の問題や、政務調査費を使った出張中に集団で観光旅行に出かけていたことが発覚し、政務調査費条例を廃止してしまった愛知県半田市議会の対応なども議論を呼びました。そして、今年6月に大阪府の監査委員が大阪府議会の多数の議員に総額3億を超える政務調査費の返還を勧告したことは、政務調査費の透明性のみならず、必要性を含めた支出基準を見直すことを、大阪府のみならず、全国的に求めるきっかけとなっています。
 もうひとつの事件は、選挙です。今年春には統一地方選が、7月には参議院議員選挙が行われました。いくつかの自治体の議員選挙では、政務調査費の透明化が争点となり、一円以上の領収証を公開することを公約とした議員が、会派を問わず立候補しました。統一地方選後、政務調査費の領収証の公開をすすめる判断をした議会もみられます。そして、この政治(家)と金の問題は政務調査費の問題だけでなく、7月の参議院選でも争点となり、政治資金規正法の領収証の公開基準を見直す動きが出ています。政務調査費の領収証公開の議論では常に政治資金規正法の領収証の公開基準が参照されてきたことからみれば、もはや使途を不透明にしたまま、政務調査費の支出を続けることは許されない政治状況にあると言って良いでしょう。
 このような政務調査費を巡る動きをみるとき、政務調査費の支出の適切さや透明性を求めることは、何も私たち市民オンブズだけの独自の見解ではなく、多くの市民が共通に求める課題と言えるでしょう。そして、このような世論に対し、政務調査費条例を制定し、政務調査費を支出している議員はどのような認識でいるかを調査することは、政務調査費の支出の適法性や透明化を求める私たち活動にも有益な資料となるだけでなく、地方議会が世論をどの程度反映する存在となっているかを知る資料として有益なものと言えると思います。このような観点から、私たちはこのアンケートを実施しました。
* ちなみに、今回の情報公開度ランキングの発表後、広島市長から、首長部局の情報公開度と議会など他の実施機関の情報公開度とを総合評価するありかたを次回以降見直して欲しい、という要望が寄せられている。

2. 調査のあらまし

(1) アンケート調査の対象議員
47都道府県、17政令市、35中核市、それに地元のオンブズが独自に取り組んだ10の市の全109自治体の、本年6月末日の時点で議員の職にある全議員合計5754名。

(2) アンケートの調査方法
各自治体の市民オンブズを通じて、本年6月末日までに全議員個人宛にアンケート用紙を発送し、本年8月10日までに返送された回答を集計。

(3) 調査項目
問1〜問6までの質問に対し、各質問に用意した3つの選択枝から回答してもらうことにしました。各質問と選択肢は以下の通りです。
問1.現在支給されている政務調査費の交付額について、どう思われますか
 a)多い  b)妥当  c)少ない
問2.政務調査費の支給対象について、どのようにすべきとお考えですか
 a)会派に支給  b)会派と議員個人それぞれに支給 c)議員個人に支給
問3.政務調査費支出の領収書を公開することについてはどのようにお考えですか
 a)全面公開  b)      円以上公開  c)非公開
問4.政務調査費をもちいた活動の報告書を公開することについてはどのようにお考えですか
   (作成していない場合には作成して公開することの是非をお答えください)
 a)賛成である  b)反対である  c)その他
問5.政務調査費による視察の報告書を公開することについてはどのようにお考えですか
   (作成していない場合には作成して公開することの是非をお答えください)
 a)賛成である  b)反対である  c)その他

いずれも政務調査費についての基本的な質問と考えるもので、問1と問2は現状の政務調査費の制度に関するもの、問3〜問6は政務調査費の支出の透明性に関するものとなっています。

(4) 集計方法
(ア) 回答率
回答率は回答数を本年6月末日時点での議員数で割った数としました。
会派名での回答については、質問項目に対する回答の有無によって以下の取扱をしました。
a、 会派名での回答内容が個々の質問項目に対する回答となっている場合は、6月末日現在の会派の所属人数分の回答があったとして回答数に算入。
b、 会派名での回答が個々の質問項目に回答する内容のものではない場合については、回答数に算入しない。
(イ) 個々の質問に対する有効回答数・選択率の算定
 個々の質問に対して、回答のない場合や一つの質問に対して複数の回答(たとえば、a,b双方に○を付している場合)を選択していた場合については、回答内容が論理的に矛盾することとなるため、個々の質問に対する回答の集計の段階で無効回答としました。その結果、それぞれの質問毎に回答率の分母となる有効回答数が異なる結果となっています。
(ウ) 回答の掲載について
 本調査は重要な地方自治の政治課題に関する個々の議員の見解をお尋ねするものであることから、有効回答と認められなかった回答も含め、お答え頂いた個々の議員については、質問に対する全回答を掲載しました。なお、アンケート回答用紙には備考欄はないものの、余白にご自身の見解を記載して回答された議員については、備考欄に記載された内容をできる限り原文通り記載しました。
 ご回答をお寄せ頂いた議員の氏名は、匿名での掲載を希望された議員を除き、私たち有権者が個々の議員のこの問題に対する姿勢を知るために必要かつ重要な情報であると考え、記載しました。なお今後、本アンケートの結果の記事からご自身のお名前の削除を求められる議員に対しては、全国市民オンブズマン連絡会議のweb上での本アンケート結果の記事から、お申し出のあった方の氏名情報を削除しますので、後記の全国市民オンブズマン連絡会議事務局にその旨お申し出下さい。

3. 回答率
(1) 平均回答率は53パーセント
 都道府県、政令市、中核市、任意選択都市の全議員総数5754名中3054名から回答がありました。回答率は53パーセントとなります。
 詳細にみると、都道府県全体では約47パーセント、政令市全体では約57パーセント、中核市全体では約61パーセントと、一般的に人口、予算規模の小さい自治体の議員の回答率が高い、という傾向が見られます。
 また、政務調査費の支出に関する文書の公開という観点からみても、中核市では半数以上の自治体が何らかの形で領収証を公開する制度を持っています。
 これまでの私たちの調査では、政務調査費の支給額の小さい自治体ほど、政務調査費の支出の透明度が高い、という傾向がみられましたが、この回答率からも同様の傾向を見ることができます。また、かかる自治体の議員は、政務調査費について高い透明性を維持しているという自覚があるからこそ、政務調査費に関する説明も抵抗なくなしうる、とも言えるでしょう。

(2) 回答率0パーセントの大阪市議会議員をどうみるか
 回答率の低い自治体では、0パーセントの大阪市議会が目を引きます。ついで3.8パーセントの堺市議会と、この2市は政令指定市中のワースト1,2というのみならず、今回調査した全109自治体のなかでもワースト1,2となりました。
 確かに私たちは市民団体ですから、アンケートに回答するか否かは議員の個人の判断によります。しかし、今回のアンケートの質問項目は政務調査費についてのごく基本的な見解を尋ねるものであり、回答に時間を要するものではありません。統一地方選前に報道機関などが行ったアンケートの質問内容と一致するようなものも含まれています。したがって、これらの異常な低回答率の原因は、政務調査費については議員が個人で意見を述べないこととした、という自己抑制の表れか、アンケートを実施した私たちには一切回答しない、という姿勢の表れとみるか、いずれかに求めなければ、合理的な説明は困難です。後者に関して言えば、政務調査費の返還を求めた住民訴訟で住民側が勝訴した自治体での回答率は低い傾向が一部には見られます(仙台市23.3パーセント、名古屋市25.3パーセント)。訴訟の相手方の質問には答えたくない、ということでしょうか。ご自身の考えと異なる者には一切回答しない、という政治姿勢は、公職にある者の姿勢としてあまりにも偏ぱです。しかし、それでも回答率ゼロ、ということにはならないはずです。そうなると、低回答率の原因は前者、つまり、議員自身が政務調査費についての発言を意識的に抑制したという疑いを原因として挙げざるを得ません。大阪市や堺市、さらには都道府県で長崎県(6.5パーセント)、岐阜県(8.7パーセント)、大阪府(8.9パーセント)といった10パーセントに満たないほどの低回答率の自治体の議会では、政務調査費の話題が議員個人にとってアンタッチャブルとなっている、すなわち、これらの議会では、議員が個人で政務調査費についての意見を言うことを禁止する取り決めが会派間で存在したり、或いは個人で意見を述べづらい雰囲気が議会の中にあることを示すのではないでしょうか。しかし、政務調査費という、地方議会の争点となっているテーマについて議員が議会外で自由に意見を述べられない、というような状態があるとすれば、議会制民主主義の否定と言わなければなりません。選挙では有権者は議員個人に投票しているのですから、議員が自分の意見を述べることを放棄した時点で、有権者に対する裏切りになるばかりでなく、そのような議会では、自由な議論も到底期待できないからです。
 これらの自治体では議会や議員がどのような仕事をしているか、市民による継続的な厳しいチェックが必要です。

4. 問1 政務調査費の適切な交付額について
(1) 調査の趣旨
 政務調査費の目的外支出を理由とする住民訴訟が多発していることは前に述べたとおりです。これらの問題の背景には、政務調査費の支給額が実際の政務調査活動に要する金額よりも多額であるために、目的外支出を行ってしまうのではないか、との疑いが拭えません。もともと、政務調査費の交付額は条例によって自治体毎に定められています。今回アンケート調査をした109自治体で最高額を支給しているのは、月額1人当たり60万円を支給している東京都と大阪市で、都道府県の最低は鳥取県・徳島県・沖縄県の月額1人あたり25万円です。さらに開きがあるのは中核市で、多くの中核市では年間支給額が都道府県の10分の一程度の支給額でしかないところもあります。私たちの感覚からみれば、一人あたり月額60万円もの金を自治体の調査研究に使え、と言われても、使い切れないと思うのではないでしょうか。また、いくら予算規模が違うといっても、同じ都道府県でありながら、議員が東京都や大阪府の調査に要する費用が都道府県最低額の鳥取県・徳島県・沖縄県の2.4倍も必要だ、ということが実際的か疑問もあります。このような問題意識から、当の議員が政務調査費の額の多寡にどのような意識を持っているかを調査することで、政務調査費の適切な金額というものがあり得るか否かを検討する資料とするため、本質問をしました。 

(2) 妥当な金額だ、という回答が都道府県、政令市で約8割
 都道府県では82パーセント、政令市では76パーセントの議員が妥当と答えました。中核市ではやや数字は少なくなりますが、それでも73パーセントが妥当だ、と答えました。
 都道府県では11パーセント、政令市では12パーセント、中核市では11パーセントの議員が多い、と答えています。反対に少ない、と答えた議員は都道府県では7パーセント、政令市では12パーセント、中核市では17パーセントとなっています。
 金額の少ないカテゴリーに属する中核市の議員に「少ない」という回答が多いものの、7割から8割の議員は現状の政務調査費で十分だ、と答えていることになります。

(3) 政務調査費の支給額を決める要因
 実際に政務調査活動をしている場合には、その活動内容との関係で、支給額の多寡に対する回答が決まってくることになることはもちろんですが、政務調査活動に支出することなく、それ以外の目的での違法、不当な支出をしている場合でも、当の支出を続ける議員や会派にとっては「たくさん支給されるに越したことはない。」との印象をもつことになります。そうすると、この回答については、議員や会派がどのような政務調査活動を行ったかを検証しないことには、実際に調査研究に必要な金額として政務調査費が支出されているのか、実質的には議員の「第二給与」となっているのかを判断することは一般的には困難でしょう。
 しかし、それでも、82パーセントが支給額を「妥当」と回答している都道府県で、政務調査費の金額の幅が2.4倍もありながら、本当に議員一人あたり月額5〜60万円もの政務調査費の支給額が「妥当な」政務調査費の金額と言えるか、は疑問が残ります。これに対しては、東京都や大阪市などの議員からは、人口や予算規模が大きく、自治体の事業内容も複雑だから調査費用が多くかかるのだ、という反論がありそうです。しかし、だからこそこれらの自治体では議員数も他の自治体よりも多く選出されており、議員一人あたりの調査に要する負担は他の自治体とそれほど大きな開きはない筈だ、ともいえるのではないでしょうか。
 いずれにしても、政務調査費は2000年の地方自治法の改正で法令上の根拠をもつ補助金として、「調査研究に資するため」の経費として交付が認められたもので、議員活動一般に対する補助金でも、議員の給与の一部でもありません。政務調査費の支出額の妥当性については、会派や議員がどのような政務調査活動を行い、これに対してどれだけの経費をかけたか、という政務調査費支出の透明性が明らかにされることが先決です。

5. 問2 政務調査費の支給対象
(1) 質問の趣旨
 多くの自治体では政務調査費を会派に支給することとしていますが、政務調査費を会派に支給するか、議員個人に支給するか、両方に支給するかは議会の条例によって自治体毎に異なる扱いとなっています。
 会派に政務調査費を支給する、という制度は地方自治法に政務調査費が法定化される以前からの自治体の補助金、交付金としての「調査研究費」以来の取扱いによるものですが、最近、会派で政務調査費をプールして一種の裏金化することなどが訴訟で問題とされたり、実際に政務調査活動をしていない議員分の政務調査費までも支出処理されていたりするなど、会派支給の制度を背景とした、政務調査費の不透明な使途が問題となっています。また、しっかりした政務調査活動を行う会派も存在する一方で、政務調査活動を全く行っていない議員の姿勢も見えにくくする、という問題も指摘されます。
 こういった問題に対する当の議員の見解を尋ねることが今回の質問の趣旨です。

(2) 都道府県、政令市では議員個人支給が少数派
 都道府県では会派支給を是とする者が40パーセント、会派と議員個人を是とする者が42パーセントで拮抗しています。反対に個人支給が良いと答えた者は18パーセントと少数派に止まっています。政令市では会派支給が60パーセント、両方が31パーセントを占め、個人支給と答えた者は9パーセントに止まっています。
 中核市ではこの傾向は少し変わります。会派支給を是とする者は61パーセントに上りますが、個人支給を是とする者も24パーセントに達し、回答率の2位となります。

(3) 議員個人の責任を明確にするために個人支給とするか、議会における会派の政策遂行権限を重視するか
 この回答は議会における会派の役割をどのように考えるかによって回答に差が出てくることになります。議会における会派の権限を重視する立場では、会派としての政務調査活動を重視すべき、という観点から、会派支給を是とするこなります。しかし、会派が政務調査活動を十分にしていないにもかかわらず、会派への政務調査費の支給を続けることは、会派の構成員である議員個人の責任を曖昧にし、政務調査費の透明性に逆行する結果になります。
 最終的にどちらが良いか、については、会派によってどのような政務調査活動がなされたかを資料として、今後も会派支給の制度を続けることを是とするか、議員個人の政治的姿勢や責任を明確化するために政務調査費の支給を議員個人とするべきかを検討していく必要があります。
 この問題に対しては埼玉県議会公明党議員団からは、「会派の県政調査活動を議員個人へ委任して行った場合も、条例の使途基準に照らして適切に使われているかを、会派内でチェックしています。個人支給よりも、会派支給の方がダブルチェックできます」とのコメントが寄せられましたが、領収証や詳細な報告書を公開して、市民や有権者などの、外部の者が政務調査費の使途をチェックすることで足ります。このような制度を設けていないとすれば、まず、政務調査費の使途や成果を透明化する制度を設けるべきです。また、少なくとも政務調査費の目的外支出のチェックという観点から見る限り、会派支給より個人支給の方がより責任が明確になるはずです。

6. 問3 領収証の公開
(1) 全面公開とすべきだ、という議員は都道府県で55パーセント、政令市で67パーセント、中核市で90パーセントに上る。
 幾ら以上の領収証を公開すべきか、を質問しました。中核市の議員は90パーセントが全ての領収証の公開をすべきだ、と答えました。反対に非公開とすべきだ、との回答は中核市では0.7パーセント、政令市では4パーセント、都道府県では5パーセントとなりましたが、明らかに少数派です。
 一定金額以上の領収証を公開すべきだ、という議員の数は、都道府県では40パーセント、政令市では29パーセント、中核市では9パーセントに止まります。
 都道府県、政令市とも、95パーセントの議員が領収証を公開すべきだ、と答えていることになります。

(2) 領収証を非公開とする理由はない
 領収証を公開すべきだ、という意見が明らかに多数派となっています。そして、領収証の公開は政治活動の自由を害するか、というこれまでの見解には合理性がないことも、このことから明らかと言って良いでしょう。
 こうなると、領収証の公開を定めていない議会が領収証の公開に踏み切るのも時間の問題と言えます。今後の推移に注目すべきでしょう。

(3) 領収証を公開する制度についても注目する必要がある
 ただ、領収証の公開といっても、肝心の情報が墨塗りで非公開とされ、その非公開の判断に対して市民が異議申立や取消の訴訟を提起できないという状態では、実質的には情報の公開とは言えません。具体的には、領収証等の文書が情報公開条例上、実施機関が保有する「公文書」にあたらなければ、非公開を裁判で争うことは無理なのです。
 今回のアンケートとあわせ、自治体の政務調査費の関連情報の公開状況の調査もしましたが、会派が議長に領収証や領収証の写しを交付することの根拠が条例ではなく、規定や要綱で定めるに止まる自治体もあります。この場合、規定や要綱を改定すれば、情報公開条例によって公開される領収証等の種類や内容をいくらでも変更できることになります。このような制度では政務調査費の公開としては不十分です。早急に政務調査費条例で議長への提出を義務づけるべきです。

7. 問4 活動報告書の公開(作成)
(1) 質問の趣旨
 領収証の公開だけではそれらがどのような政務調査活動に用いられたかがわかりません。政務調査費の透明化とは、会派や議員がどれだけ政務調査活動を行ったかを知ることで議会の政策遂行機能を充実させることに大きな意味があるのですから、活動報告書の公開は領収証の公開以上に重要なテーマと言えます。かかる問題意識を議員がお持ちかどうかを調査するため、この質問をしました。

(2) 都道府県では48パーセント、政令市では56パーセント、中核市では69パーセントが賛成
 反対に公開に反対するのは、都道府県で11パーセント、政令市で9.5パーセント、中核市では3.7パーセントに止まりました。
 公開賛成が多数派と言って良いと思いますが、その他に○をつけた議員が都道府県で41パーセント、政令市で35パーセント、中核市で28パーセントとなりました。
 都道府県議員については、活動報告書の公開に反対ではないが、賛成とまで言えないという状況が見られます。これについては、活動報告書の公開が政務調査活動を明らかにするものであることから、公開によって政治活動の自由を害するのではないか、という危惧感の現れとも思われます。しかしながら、中核市を中心として、活動報告書の公開をすすめている自治体が現に存在すること、その他へ回答した者が政令市では35パーセントに止まることも事実です。また、実際に情報公開によって政治活動の自由が害されたり個人のプライバシーが侵害されるという場合には、情報公開条例によって非公開とすることも許される筈です。
 こうしてみると、活動報告書を少なくとも情報公開条例の「公文書」とすることに反対する理由はないことは明らかな筈です。

8. 問5 視察報告書の公開(作成)
(1) 質問の趣旨
 政務調査費を用いた視察も盛んになされています。活動報告書同様、政務調査費の使途を透明化するためには、視察先でどのような事項を調査したかを記載した報告書を作成し、これが公開されることが必要です。このような観点からの質問です。

(2) 都道府県の59パーセント、政令市の67パーセント、中核市の94パーセントが公開に賛成
 問4と同様、政務調査費を用いた調査研究活動を示す資料の一つである視察報告書の公開について、多数が公開に賛成、と答えました。公開に反対と答えた者は都道府県で5パーセント、政令市で6.5パーセント、中核市で1パーセントに止まりました。

(3) 活動報告書よりも公開に賛成、との回答が多かったのは、視察報告書については公開によって政治活動の自由が害されるおそれがない、と考えた結果とも思われます。
 しかし、仮にそのようなおそれがあるとしても、情報公開条例の運用で解決できるものである以上、危惧があてはまらないことは、活動報告書の項で述べた通りです。

9. 問6 会計帳簿の公開
(1) 質問の趣旨
 領収証の公開よりも、会計帳簿が公開される方が市民には遙かに容易に政務調査費の使途を知ることができます。この質問は、いわば議員が開示を受ける市民の側に立って情報の透明性をお考えかどうかを質問するものと言えます。

(2) 都道府県で38パーセント、政令市で47.3パーセント、中核市で64パーセントが公開に賛成
 領収証の公開と比較して、公開に賛成、と答えた議員は減っています。公開に反対、と答えた議員も都道府県で13パーセント、政令市で15パーセント、中核市で4パーセントとなっており、領収証の公開に反対する者よりも増えています。

(3) 結論を見る限り、どの程度領収証の公開の意義が理解されているか、疑問なしとしません。領収証の公開を認めるのであれば、会計帳簿の公開も当然に認められるべきではないでしょうか。会計帳簿が公開されれば領収証を一枚一枚閲覧謄写する必要もなく、政務調査費の透明性は飛躍的に増大します。
 にもかかわらず、その他と回答した議員が都道府県では49パーセント、政令市で37パーセントも存在するというのは、いかなる理由によるのか、理解に苦しみます。「一連の流れは、決算するとき必要なので、問題ないと思う。」(鳥取県議)とのコメントもあるように、すでに各議員・会派で会計帳簿を作成しているはずです。政務調査費をチェックする市民の立場を考えれば、会計帳簿を公開することは必要不可欠です。実際、政務調査費の領収書を全面公開している長野県議会では、1年間の領収書の束や活動報告書が約2万枚にもおよぶとのことです。会計帳簿をまずチェックし、疑問点などは領収書にあたるというのが基本だと考えます。

10. 今回のアンケートに添えられた意見の一部
今回のアンケートには、自由記載欄がなかったにもかかわらず、たくさんの議員から意見をお寄せいただきました。その多くが既に政務調査費の透明化を実現している中核市の議員のものでした。こうした現場の声を知ると、ますます政務調査費の透明化が重要なものと思えます。以下、いくつかの意見を掲載します。
[透明化が遅れている近隣の自治体に対して]
全国に聞くのも大切であるが、”名古屋市”、”愛知県”の政務調査費や費用弁償をやるべき!!名古屋市民オンブズマンは何をやっているのか??他の市を調べる前に自分の市をしっかりやるべきである!!
愛知県、名古屋市の政務調査費の透明化を追求して下さい。頑張って下さい。
愛知県議会と名古屋市議会の政務調査費について透明性を高めるように期待する!
2〜6については、豊田市議会として全て実施中である。愛知県議会、名古屋市議会のみが使途規準等不明であり、我々としては迷惑している所である。
[政務調査活動について]
額の多い少ない以上に問題なのは調査の結果を市政(など)に還元する仕組み作りとより効果的、具体的に何よりも透明度の向上だと考えます。(旭川市議)
透明化は当たりまえで、調査活動の内容が重要である。活動しない、費用を使わない議員は評価できるのか?(豊田市議)
[回答の拒否について]
自由民主党熊本市議団「今後のアンケートに関してはマスコミ各社に対してのみ回答し、市民及び市民団体の方々へ対しては各議員回答したい旨の気持ちはありますが、物理的に公平に回答することが不可能であると言う事から慎んでご辞退申し上げる次第です。」

11. まとめに代えて
 今回の調査で特筆すべき点は、都道府県、政令市、中核市を問わず、議員の多数は政務調査費の情報の透明化に積極的な意見をもっている、ということです。そして、アンケートの回答率が都道府県で46.8パーセント、政令市で57.5パーセント、中核市で60.5パーセントに上ることを考慮すれば、政務調査費の透明化は具体的な政治課題として、直ちに取り組まざるを得ない状態にあることも明らかです。
 私たちが政務調査費の透明性にこだわり続けるのは、政務調査費の透明性が不正支出を監視するために必要不可欠である、という理由だけでなく、政務調査費を透明化することで、個々の議員の活動を可視化し、積極的に活動する議員を通して議会に新鮮な世論をつねに送り込むことで議会の政策遂行力を高めることにつながる、と考えることによります。
 このアンケートにお答え戴いた議員各位に感謝するとともに、実のある政務調査活動を期待するものです。

以上

本アンケート調査についてのお問い合わせ先
 〒460?0002 名古屋市中区丸の内3丁目6番41号 リブビル6階
   全国市民オンブズマン連絡会議事務局 
   電話052-953-8052,FAX052-953-8050

政務調査費アンケート集計結果〔PDF〕

都道府県・政令市・中核市 政務調査費議員アンケート 回答率と回答集計結果
都道府県 政務調査費議員アンケート 回答率と回答集計結果
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